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110 異世界人にコロッケは有効

 イノシシホイホイは順調。

 俺は今までで一番ダンジョンマスターとして輝いていたと思う。

 

 これでスライムも安心だし、イノシシがキャンプ場まで迷い込んで来てお客さんを傷つける様な事も無いだろう。

 

 キャンプ場の管理をし、家族との絆を深めたりと過ごす、ある日。

 コアから来客の知らせが。

 

 今回は警報では無いらしい。

 

 異世界の入り口側に、筋肉美女の鬼娘ラキがやって来ていた。

 

 最近では、水晶のダンジョンは実入りが無いダンジョンとして噂が広まり、探索者は入って来ない。

 魔人帝国の連絡員が双子と情報を交換するのに来る程度で、久しぶりの来客になる。

 

 早速、出迎える。

 

「ラキ、ご無沙汰」

 

「おお、マスター。ご無沙汰していたぞ」


 ラキは天真爛漫な彼女らしく、手をブンブンと振って挨拶する。

 

 そして、その後ろにはしかめっ面の筋肉集団が。

 多くは男性だが、女性も何人か居る。

 コアが警報を出さなかったから、敵意は無いんだろうけど、威圧感が凄い。

 

「それで、ラキ。後ろの人達は?」


「ああ、アタシの家来達だぞ。なんかな、アタシを倒したマスターの顔がみたいって言うから連れて来たんだ。ダメだったかな?」


 ダメって事は無いが、どんどん険しい顔になってきているぞ?

 ラキが俺の腕を掴んで身を寄せたら、彼等に青筋が立ち始めたし。

 あ、コアが警報を出した。

 

「オイオイ! お嬢を倒した奴って言うからどんな益荒男ますらおかと思ったら、貧相なボウヤじゃねぇか!」


「こんな奴がお嬢を倒せる訳がねぇ! 俺が殴って証明してやるぁ!」


 とてもいきり立ち始めた。

 ここ半年は鍛錬をして、きちんと筋肉も付いてきているんだけど、鬼人からしたら貧弱らしい。

 彼らは力こぶが、普通の女の人の胴体程もある。

 あと、日本人の顔は幼く見える様だ。

 

 さて、対話して気持ちを治めてもらいたいけれど、無理なんだろうな。

 異世界人は基本的に弱肉強食みたいだし、その中でも鬼人王国ベニアンは力こそ正義な国柄だという。

 

 魔人帝国トラキスの人達には里芋コロッケを作って力を示したから、鬼人達にもそれで通じるかな?

 

 クリスタルゴーレムを転移させて、じゃがいものコロッケを大量に作ってみた。

 シンプルながらも真っ向勝負をかけてみる。

 

「なんじゃこりゃぁ!? こんなモンで誤魔化されねぇぞ! 美味いけどよぅ!」

 

「これがイモを練った物だって!? きもを練ったのとは随分違うじゃねえかコラ!」


 やはり、野菜を始めとした農作物が圧倒的に不足している彼らには、コロッケは衝撃的だったらしい。

 怒鳴りながらもガツガツ食べている。

 

 こ、このままだと、消費の方が早いな。

 クリスタルゴーレム、増員だ。

 敵は手ごわいが、俺たちは必ず勝つぞ。

 彼等の腹を満腹にしてやるんだ!

 

 千切りキャベツもしっかり添えてやる!

 ちょっとだけ辛みがあって、それでいて甘みがある、どこまでも生で食べられるキャベツだ!


「どうだ、お前達! 強いやつは美味い食べ物を沢山持っている。だからマスターは強い! そういう事だぞ!」


 ラキがコロッケをほおばり頬をぱんぱんに膨らませながら言うこの言葉に、筋肉軍団は納得した様子。

 怒りを治めて、コロッケに集中し始めた。

 

 そんな中、1人の若者が声を上げる。

 

「……お嬢。その理屈は、わかる。頭じゃ、わかる。けどよ、魂でわかる訳にはいかねぇんだよ、お嬢!」


 彼は滝の様な涙を流して言った。

 

――魂でわかる訳にはいかない。


 それが俺の心に響く。

 

――キャンプ場? それって儲かるの?


――山の中って……田舎過ぎてありえなく無い?


――チョコミントって歯磨き粉じゃん


 そうなんだろう、あんた達の中ではそうだったんだろう。

 そういう見方があるのはわかるが、魂でわかる訳にはいかないんだよ!

 

 ……うん、やろう。

 

「家来の人。その心意気が気に入った。たたかおう」


「……っ!? おう! 後悔すんなよ!」


 俺は、鬼人の若者へ純粋な力をぶつける事にした。



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