104 ゴーレムの力で良くこね良く絞る
レイナスが帰って来たが、魔人帝国トラキスの人達も付いてきた。
ここは、俺が力を見せつけないと収集がつかないようだ。
仕方が無いので、徹底的にしてやろうと思う。
俺はこの場に、クリスタルゴーレム達を転移させた。
彼らの力は俺の力。
そして、彼らの手にかかれば、ひとたまりも無く擦り潰されてグチャグチャにされてしまう。
更に、高温の油を大量に用意した。
大人が数人は入れる位の大鍋を、200℃の温熱レンガで囲っている。
その中に満たされた油は、芯まで熱を伝えるだろう。
これを見て、異世界人達は言葉を失っている。
流石に、レイナスも「そこまでしなくて良いのに」って表情をしているが、俺はやる時はやる男なのだ。
ゴーレム達の剛腕がうなれば、ミンチよりもひどい状況が発生した。
ここで取り出したる蒸かした里芋が、ゴーレム達の手により、見るも無残にグチャグチャになったのだ。
手の上で弄ばれる様にして丸められたそれらには、更に片栗粉や他の具材も混ぜられ、挙句の果てには、小さく分けて小判型に。
無慈悲にもフライ衣をまぶされ、高温の油の中へと投入される。
油の量が多いので、大量にタネを入れても温度変化が少ない。
カラっと揚がる秘訣だ。
更にこの油は、ウチで栽培したべに花の種から絞った物だ。
ゴーレムの体重と怪力をいかんなく発揮して大量に生産した、良質の揚げ油になっている。
さあ、カラっと揚がった里芋コロッケに、シャキッとレタスを添えて、皆さん召し上がるんだ!
サクっと衣を口に含むと、中からねっとり里芋がねろんと飛び出て、まったりとした美味しさだ。
おおっと、立ったままでは食べずらいな。
テーブルとイスも用意しよう。
ダンジョンオブジェクトを設置し、これで大丈夫。
頼もしい仲間たち、柔軟に調整可能な住環境、そして美味しい食事。
これらが俺の力だ!
「やっぱり、ウチの料理は美味しいわ。1個食べたら、次は2個食べたくなるわね」
レイナスは美味しいそうに食べてくれる。
嬉しい。
ゴーレムがどんどん揚げてくれるから、じゃんじゃん食べてくれ。
対して、異世界の人達は手を付けて良いものかどうか、躊躇している。
どうした?
遠慮しないで、どうぞ。
皆がけん制し合う中で、ばあやの人が先陣を切って手をつけた。
「レイナス様がお召し上がられているのです。いただきましょう――っはふぅっ!」
「「おばあ様! 毒ですか!?」」
トラキスの集団から若い女の子が2人出てきて、ばあやの人に駆け寄る。
喋る言葉がハモっている。
凄いな。
「いいえ、違いますよ。熱かったので、口の中が……」
ああ、火傷しちゃったのか。
だったら、回復薬をどうぞ。
掛けるだけで効果があるから。
ばあやの人はこれも躊躇するが、レイナスが命令し、身体にふりかける。
すると、驚きの表情で、俺を見てきた。
そうそう、ズキズキとかジクジクとした痛みがスゥっと消えるのは驚くよね。
口の火傷が治ると、ばあやの人は無言でパクパクと里芋コロッケを食べ進める。
そして、さめざめと涙を流すも、その口は止まらない。
「「お、おばあ様? どうなさいました?」」
「貴女達も食べれば分かる事です。さあ、他の皆さんもですよ!」
ばあやの人の掛け声で、トラキスの人達はコロッケを食べ始めてくれた。
皆、一口かじると眼を見開くも、手と口は止まらない。
無言でむぐむぐしている。
「ねえ、ばあや。マスターのゴーレム達は、これだけ統率された行動ができるのよ。側付きとして集められた者達は、これ以上の仕事ができるのかしら?」
レイナスがそう言うと、一心不乱にコロッケを食べていた人達はハッとして、悔しそうな表情をした。
「……次は、調理の技術に長けた者を集めます」
「そういう意味じゃ無いのだけれど、今回は引き下がるって事ね。そうしてちょうだい」
「はっ! 必ず」
「だから、そういう意味じゃ無いわよ」
若干すれ違いがあるみたいだけれど、解決したみたいだ。
ウチのダンジョンが、安全かつ美味しい食事を提供できる環境だと理解してくれた様なので、これで彼等もレイナスを安心して送り出してくれる事だろう。




