101 お茶を出そう
「お茶をお出ししたいデス」
ガラテアが静々と近寄ってきて言った。
「そうだな、スッキリする系のやつを淹れてくれるか」
「……ハイ」
ガラテアの淹れてくれるお茶は美味い。
沢山のハーブを絶妙にブレンドして、その日の気分や体調に合わせて出してくれる。
今日のお茶も、香りヨシ味ヨシだ。
「お茶をお出ししたいデス」
「うん、美味しいぞ」
……ちょっと違うらしい。
よく話を訊くと、喫茶店みたくお客さんにお茶を提供したいそうだ。
そうなると、事務所は手狭になるよな。
少し改装しようか。
ガラテアが言うには、専門の喫茶店じゃ無いから移動販売で行う様な設備と広さで良いらしい。
それなら、窓際を2坪程広げるか。
そこをティールームにしよう。
そこにガスと水道の流しエリア、ハーブのストックエリア、食器の棚を作る。
ガス屋さんにボンベの増設を頼む。
流しは温泉セメントで作った。
鍾乳石の様に丁寧にならして、乳白色で味のある流しになった。
家具の雰囲気は、北欧風かアメリカンカントリー風か悩む。
「カントリー風が良いデス」
それにマッチする感じでダンジョンオブジェクトを選んだ。
最近気が付いた事だけど、SSを1つ消費すると、結構沢山の家具と交換できる。
いつの間にか、交換できるアイテムが増えていた様だ。
事務所側は壁を作らずオープンに。
窓の側は外に繋がるカウンターにした。
気軽に注文して、お客さんに外でもお茶を楽しんでもらうためだ。
こんな感じで、ティールームが完成。
後は、役所に必要事項を申請する。
以前、妖精の隠れ里サイトが事後申請になった事で小言を言われた。
それがあまり続く様だと、色々後回しにされる事も有るとか無いとか。
なので、今回は建物の改築をきちんと事前申請する。
もう既に、改築が終わっているのに?
それが可能な秘訣が1つある。
その為に、強力な助っ人も呼んだ。
天狐の一族の手の者の建築士さんだ。
「都築です。よろしくお願いします」
都築さんは大きな事務所を抱えるイケオジな建築士さんだが、天狐からの声かけとあって、飛んできてくれた。
そして、さっきまで平伏していた。
「次は座布団使いますか?」
「天狐様の御前でその様な不敬は……。お気持ちだけ頂戴します」
おでこと上等なスーツの膝に土埃が……。
さて、ティールームを都築さんに見てもらう。
そして、そこを図面に起こしてもらう。
そうしたら、一旦コアのサポートで事務所内を改築前の状態に。
図面を添えて申請すれば、便宜上は事前申請だ。
「さっそく、受理させてきます!」
図面が書き上がるやいなや、都築さんは飛び出してゆき、3時間ほどで帰ってきた。
何か不備でもあったんだろうか?
「問題ありません」
往復の時間ほどしか経ってない気がするが、大丈夫らしい。
……これなら事後申請でも良かったんじゃなかろうか?
「いえ、私を介さないとこうは行きませんので、次の機会にも、是非」
その後、もう一度コピペの要領でティールームを再設置すれば、建物の方はオーケーだ。
その後は、食品衛生責任者という資格が必要になる。
これがあれば、他にも色々と飲食物を提供できるようになるので、取ってきた。
講習会が頻繁に行われているので、比較的楽だったと思う。
そして、保健所に申請すれば、晴れてティールームがオープンだ。
▽▼▽
「なあ、ガラテア。このメニューのおススメってどんなのを出すんだ」
「その時によりマス」
「それじゃあ、今のおススメを淹れてくれ」
「ハイ……マスターどうゾ」
「うん、ありがとう」
おススメのお茶は緑茶に似て渋かった。
「先程お饅頭を食べていまシタ」
ああ、うん。
お客さんからの差し入れで、温泉饅頭をもらって食べたんだ。
食べ過ぎちゃうと太るから怖いね~なんて話してた。
「『今度は熱いお茶が怖い』デス」
落語のオチか。
って、いつの間にそんなの知ったんだ?
ガラテアを見ると、してやったりと口元に笑みを浮かべていた。




