010 凄く強いウサギ達
スモモとキラリが家族になって、翌朝。
体操をした後はキャンプ場の見回りだ。
スモモとキラリも一緒に付いてきた。
一昨日はゴブリン、昨日もゴブリン。
それなら、今日も明日もゴブリンなんだろうな。
前方にゴブリンがウロウロしている。
魔法で手早く片付けるかと構えると、スモモとキラリがダッシュする。
ゴブリンめがけて、一気に距離を詰めた。
危ないからダメだ、と言う間もなく近づく2頭は、十分な間合いに入ると後ろ足で豪快にゴブリンを蹴りつける。
バコンッ! と、力任せにぶっ叩いた轟音が響く。
2頭がいるから、下手に魔法を放つと巻き込んでしまいかねない。
ここは至近距離からの斬撃を繰り出すしか無いかと、俺もゴブリンへ走り寄る。
その間に、2頭は蹴りを繰り出し続け、俺が近寄った時にはもうゴブリンは動かぬボロ雑巾になっていた。
凄い脚力だな。
だけど、危ない事はして欲しくない。
ここは、きちんと躾ないと。
「こら、いきなり飛びかかって行っちゃダメだ!」
強めに言うと、2頭は「え? 叱られちゃうの?」と戸惑いの表情をみせる。
「魔法を打つ準備をしていたから、巻き込む所だったんだぞ」
2頭は「そうだったのか……」とシュンとする。
「とはいえ、よく倒したな。えらいぞ。良い子達だ」
褒めて撫でると、2頭ともテンションが上がって機嫌を取り戻した。
近接戦闘は危ないから、俺と一緒の時は必要無いよと言い聞かせると、2頭ともわかってくれた様だった。
偉いのでもっと撫で褒めた。
見回りの続きをすると、またゴブリンがいた。
早速倒すかと構えると、スモモがちょっと待ってと合図する。
様子見は良いけど、近寄っちゃダメだぞ。
スモモはぐぐっと身を屈めると、一気に上へとジャンプした。
そして、クルっと身を捻りながら1回転をしつつ蹴り足をおくる。
すると、シュパァンッ! と破裂音がし、衝撃波がゴブリンを襲う。
それを受けたゴブリンは吹き飛ばされ、着地するとお腹がぱっくりと割れていた。
即死の様である。
「凄いなスモモ。こんな技を持ってるなんて」
もちろん、ゲームの方ではこんな技を設定したりモーションを組み込んだりはしていなかった。
彼オリジナルの技なのだろう。
むしろ、現実化してしまった事で、オリジナリティが生まれたのだろうか。
褒め撫でようと屈んだら、スモモがぜぇぜぇと呼吸を荒くしていた。
え!? 何か代償がある技だったのか!?
命を削る的な!
そう思って慌てたが、どうやら単純に疲れただけらしい。
一瞬で一気にスタミナを持っていかれる技の様だ。
近接戦闘がダメだと言われたから、遠距離攻撃に出たのか。
そういう意味で言ったわけじゃ無いんだけど……。
疲れながらもドヤ顔をするスモモに、キラリはブーブーと抗議の姿勢だ。
無理するなと言っているらしい。
それを受けてスモモはプイプイと身を寄せる。
はは、スモモはキラリの尻に敷かれているのかな?
しばらくブーブー、プイプイを繰り返していると、熱っぽく体をこすり合わせてスモモがキラリの後ろにつく。
そして、俺が見ているのに気が付いたらハッとした表情で2頭ともピョンと跳ねて距離を取った。
いやいや、続けてくれても構わないんだぞ。
むしろ、邪魔してわるかったかな。
何? 今はニンジン畑が心配だって?
そうだな、ゴブリンに荒らされているかもしれないからな。
いやはや、ペットに気を使われてしまうとは、何ともいえない気持ちだな。
俺と一緒に生活する事が、彼らにとって快適な物になるように、精一杯がんばろう。




