001 キャンプ場にゴブリンが現れた
流れ星に願いを込めた。
「ウチのキャンプ場に、お客さんがもっと来てくれます様に」
だから、だろうか?
目の前に変な物が居る。
肌が緑色で小学生程度の身長。
その割に筋肉質で野性味が強い。
手に粗末な棍棒を持っていて、グゴグゴと声を発する2足歩行。
腰に、粗末なボロを巻いている。
いわゆるゴブリンってやつが居る。
棍棒で地面を叩いて下生えをならしたり、草を齧っては味見したりしているから、幻覚の類じゃなさそうだ。
現代の日本にゴブリンが居るなんて、非常にマズい。
ゴブリンと云ったら、狡猾で獰猛で女を攫ったら性欲旺盛にゴブリンしちゃうと聞く。
薄い本が熱くなってしまう。
ウチは女性グループでも安心してご利用いただけるキャンプ場を心がけているのに、ゴブリンが居たら大問題だ。
ゴブリン問題は、早めに対処しなければならない。
こんな事なら、鉈か斧でも持ってくればよかった。
いやいや、待て待て、いきなり物騒な事を考えてはダメだ。
相手はひょっとしたらゴブリンっぽいだけで温厚な人かもしれない。
たまたまウチに迷い込んだ、お客さんかもしれない。
「おはようございます! 迷って来てしまったんですか?」
なるべくにこやか元気に挨拶をしてみる。
「グギャ?」
ゴブリンっぽい人は、俺に気が付くと走り寄って来た。
そして棍棒を振りかぶり、フルスイング。
やっぱり悪いタイプのゴブリンだった。
こういう時は、下手に距離を取ろうとするとダメだと聞いた事があるので、反対に距離を詰める。
俺は咄嗟に前転をして、棍棒を掻い潜った。
その背後では、棍棒を打ち付けられた地面が盛大に土煙を上げている。
当たったら、死ぬやつだ、コレ。
は、反撃をしないと。
俺の手持ちは、スマホとウレタンスポンジで作ったふにゃふにゃの棒だけ。
こんなのでゴブリンに勝てると思えない。
ああっ! クソがっ!
せめてもの目くらましになればと、ウレタン棒を力いっぱい投げつけてやる。
シュッ!
棒が手から離れる寸前に鳴る、強く風を切る音。
ッパ!
そして、あっけない破裂音がする。
何事だ?
前をみると、ゴブリンの首が体から離れて、ゴトリと落ちた。
そして、手元の棒が剣の様に変化している。
これで切ったのか?
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