お父さんのいない世界と異世界召喚
元の世界のキャラの年齢。→現在
主人公 57歳。→17歳
妻 40歳。(で死亡娘当時10歳)→17歳
娘 27歳。→?
「おとうさんどこ・・・?」
私は震える指でシーツを手繰り寄せる。
今は亡き父の寝ていたベットだ。
昨日、お父さんが死んだ。
私が知ったのは会社へ向かう電車の中だった。
車内電光掲示板で流れているニュースで総理大臣をしているおじさんが襲撃に会い、SPが死亡した件を聞いたとき私は最悪を想像してしまった。
「う、うそ・・・まさか」
しばらくして私は嫌な予感からその日会社を休み、家へと戻る。
私はどこかに祈るように夕食用の食材を・・・それもお父さんお好きな薬膳ハンバーグの具材を買って帰る。
だがその途中、電話が鳴る。お父さんが警護しているおじさんからだった。
私はおじさんからかかってきた電話にすぐ出る。
そして伝えられたのは父が死んだことだった。
「なんでなのよ!」
かなり怒気のはらんだ声は周囲にいる人を驚かす。
そしてさらに衝撃の事実を告げられた。
「しかも死体がないなんて・・・」
その言葉に彼らはここ数年で多くなった戦争関連であることを察し、私がさらに涙を流していることで彼らは彼女を探るのをやめた。
現代において日本でも戦争派遣された肉親が亡くなり私のように街中で声を荒げる人は多いのだ。
「もういい。私は一度家に帰ります」
そうして今に至る。私は涙を流し続け、決意する。
「・・・もういいや」
わたしは脚立に上り、お父さんの部屋に来てから準備していた首吊り用の輪に首を通す。
「仕方ないよね?お父さんのいない世界には用はないし、もし違う世界にいるんだったらそこに転生したいな・・・」
そう言って彼女は脚立をはずした。
苦しい・・・。でも、どこか嬉しくも感じた。
お父さんがどこか手を引いてくれている気がして・・・
そして・・・私は地面にぶつかった。
「・・・死んでない?」
誰かに肩をゆすられている。・・・助かってしまったのだろうか?
「すみませーん。生きてますか?」
・・・うるさい。私は死んだのだ。
「仕方ないですね。光魔法〈サンダーショック〉」
私は身の危険を感じ、その場から飛びのいた。
小さいころにお父さんに違和感なく馬乗りになるため様々な武術や技を学んだ成果だ。
そして私は目を見開く。
そこはお父さんの部屋ではなかった。
どこか広い、RPGの城のような場所だった。
「・・・魔法を避けただと?」
そう言ったのは玉座と思われる数段高い位置にある椅子に座るおっさんの隣にいる髭の立派なおじいさん。その反対側の少し下にいる杖を持った羽をはやした幼女がきっと魔法を撃ったのだろう。
・・・って、そんなのは今どうでもよかった。
「ここはどこ?」
私はそう聞いた。
「ああ、すまなかった勇者よ。ここは君のいた世界から言うと異世界に当たるエデン。私はこの世界のライファ―の種族代表 テトレーン・マクライドという。あなたの名は?」
「高坂 綾香」
アヤカは少し不愉快だという雰囲気を出しながらテトレーンに返事をする。
「コウサカ アヤカ?・・・どこかで似たような名を聞いた気がするが。家名に名前とは異世界では貴族か何かで?」
「いいえ。私の世界で家名は絶対にあるものですから」
「ほう、失礼ながらあなたの名前はどちらなのでしょう?」
「綾香です」
「アヤカ殿だな。わかった。・・・それでアヤカ殿。一つお願い事があります」
アヤカは軽度のオタク(両親がアニヲタのため)でラノベを好んで読む。そのお話の中の展開から行くと・・・
「魔王を倒してくださいとかですか?」
「おお、なんだ知っているのか。それともスキルか?」
「いいえ別に。ただテンプレなもので・・・」
「てんぷれ?・・・まあいい。私たちライファ―はここ3年連続で最優秀選手賞を取り損ねており生命神から異界より優れた身体能力とセンスを持つ者の召喚を許可された。そしてあなたには特別代表選手でライファー側として人魔対抗大運動会に参加して欲しい」
「・・・は?」
急にテンプレから外れた。運動会?どういうこと?
「生命神は信託であなたに大会の最優秀選手の報酬を教えれば必ず参加してくれると言った」
「・・・報酬?」
「ああ。それはどんな願いもかなえるという報酬」
「どんな願いも?」
「そうだ。まあ、正確には物だな。財宝、スキル、能力の底上げ、死者蘇生、試練参加・・・」
王が今までかなえられた願いを上げていくとアヤカが反応する。
「・・・まって。今なんて?」
「え?財宝、スキル、能力の底上げ、死者蘇生、試練参加・・・」
「死者蘇生?」
「うん?なんだ生き返らせたい人がいるのか?」
「・・・なに、悪い?」
「いいや。珍しいと思ってな」
「珍しい?」
「過去の召喚された勇者はちょっと難のある性格をしていたのが多いいからな」
「ふーん。別に私には関係ない」
「そうだな。・・・それで参加してくれるのか?」
「わかった。参加する」
「おお、それはよかった。今日は君はこの世界の事をあまりわかっていないだろうから学んでもらおうと思う。それでこっちの賢者にしようかと思ったのだが」
そう言って王様はそばに控える髭の長いエルフのおじいちゃんを見る。
「やはり彼女がよろしいかと」
「・・・はあ、そうか。それだな、今この場にはいないが奇跡の聖女と呼ばれる賢者に匹敵するほど賢い女に教えてもらおうかと思う。・・・ああそうか、おまえは―――」
そう言って王様は何か思い出したようだったがその瞬間、玉座の間の扉が開き、一人の少女が入ってくる。
「す、すみません。聖女 ミレイただ今参上しました!」
私は振り返る。
そしてその時、気づいてしまった。
「お、かあ・・・さん?」
「はい?」
そこにはお父さんの写真アルバムで見たことがあるお母さんと同じ姿の少女が立っていた。