帰宅・・・そして
「ただいま」
そう言って自分はミレイの所有する森の中の屋敷に戻ってきた。
森の中には食べられるものがたくさんあり、家事スキル〈食物判定〉で細かい情報を知ることができ、〈察知〉のスキルも使って取り過ぎに注意しながら、町で買った〈調剤〉用の本に書かれていた薬草も手に入った。しかしこの世界の薬草は採集方法が難解であり、〈食物判定〉に表示されたとおりの採集方法でないと腐ったり、毒を発生させたり、枯れたりと大変だった。
まあ、〈万変の道具〉で様々な採集道具が用意できてマスクのおかげで毒も耐性獲得のために薄いところ以外ではきちんとつけていたからかなりスムーズではあった。
自分は森の南東方面にある竹藪より筍と竹を採集。竹を地龍の牙の平らな方を棒をつけて簡易版の斧にし、その場で加工。即席だがなかなかいいものができたと思う。
家事スキルの〈裁縫〉の器用さ向上の効果かもしれない。
約30リットル入るように調整し、竹藪内での籠作成中に襲ってきたウサギとリスの革を使って肩にかける部分を作ってつけて、出発した。時間で言うと約30分と言ったところだ。
その籠いっぱいの薬草、山菜を見て僕は今朝のサラダを思い出す。
「今朝のサラダは生ばかりだったから・・・揚げ物でもしてみるか?あ、でも卵なかったし、パン粉もなかったよな。・・・あ、温野菜」
今日の夕飯の献立を決めた僕はとりあえず薬草や山菜を洗浄、天日干しにし、調理を開始した。
※※※
外の駐車場にアヤカとミレイ、そしてミオはいた。
王城までミレイはエアバイクで来ていたため帰りもこれで帰るのだ。
「あーちゃん、一緒に帰るよ?」
そう言ってミレイはアヤカの手を引っ張る。
「ミレイちゃん、わたしも・・・」
ミオはそういうと少し間をおいて、「・・・いいよ」と笑顔で言った。
だが、エアバイクは最大で二人乗りだ。それに高魔力を消費するので二人も乗ればすぐにガス欠になるのはわかっていた。
「・・・クロ、召喚する。ちょっとまってて」
そういうと、ミオは地面に手を置き、魔方陣を展開。
夜空を切り取ったような美しい毛並みの黒天馬を呼び出した。
「クロ、突然ごめんね?」
ブラック・ペガサスは気にするなと言うかのように、鳴いた。
「すごい、これが魔人が成人の儀で契約する契約獣」
「うん、一応神獣」
「神獣!?」
ミレイはとても驚き、アヤカはお母さんの驚きようからレアモンスターなんだなと感じていた。
「ミレイちゃん、驚きすぎ。・・・感情、前より豊かで温かくなった?」
「そう、かな?」
「・・・たぶんお父さんがいないときの冷徹なおかあさんだったんじゃない?お父さんが出張で外泊した時とかにでてた」
アヤカには心当たりがあった。それを言うと、ミレイはその時の自分を思い出したのか苦笑いになる。
「あー、あれね・・・」
「別にいいんじゃない?・・・私、そっちのミレイの方が好き。幸せそうだから」
ミオの言葉にアヤカは軽い衝撃を受けた。
・・・先ほどの約束忘れたの?あなたが勝ったら、おそらくお母さんはおとうさん来る前に戻るのに。もしかしてお母さんに本気を出させるため?話を聞くと、このミオって子のライバルはお母さんみたいだから…。
と、アヤカはいろいろ考えているが、実際は、ただ友達が喜んでいるのがうれしいだけである。
「さ、出発しようか」
ミレイはそういうとエアバイクを発進させ、ブラックペガサスも空へと飛び立つ。
3人が城を出たのはすでに夕日が地平線に隠れだす頃。
町は夕日に照らされて赤く染まる。
どこか疲れ気味の竜人の航空警察(侵入者を今日一名許してしまったらしい)にミレイの顔パスで通過して、森まで来る。
この森の上空を飛ぶのはかなり危ない。
たとえば、この森の野兎は強固な一本角を持っており、気性が荒くその小さな体にに合わない跳躍力を持っており、それを生かした突進攻撃をしてくる。
かのウサギは木にぶつかっても勢いが衰えることはなく、数本程度ぶつかってもそのまま突っ込んでくる。つまり、エアバイク程度簡単に貫くのだ。
ちなみに・・・レンジは森で遭遇したが鉄壁を破れるはずもなくそのまま自分の勢いでつぶれて自動回収された。
あとは普段は普通の熊だが空飛ぶ動物が現れた際に巨大化して食べる鳥喰い熊と呼ばれる者もいる。森で遭遇して戦闘する際は意外と速い身のこなしを注意する以外は特にないが巨大化すると、防御力、体力ともに上がり、厄介な敵となる。腹いっぱいになれば元に戻る。
ちなみに、レンジは高速航空移動中、巨大化の途中の熊にぶつかってしまい即死させた。
そのほかにも鉄砲魚、ソルジャーモンキー、フライアサシンと呼ばれるモモンガがいる。
3人は主にアヤカの戦闘訓練も兼ねつつ森を進み、屋敷へと着いたのは完全に日が落ちてからだった。
屋敷からはいい匂いが漂っており、屋敷の外には山菜や薬草が干してあった。
「これ、魔力草。しかも、毒なし・・・」
ミオが驚いたように言うと、アヤカは茶葉となる薬草を見つけて喜び、ミレイはある一つの薬草を懐にしまおうとして二人に腕をつかまれて止められた。
「お母さん、何してるの?」
「アヤカちゃん、それ媚薬の元になる薬草」
「・・・は、はは」
ミレイは作り笑顔を作るのが限界だった。
その時扉が開き、3人にとってとても大切な人が出てきた。
「うん?ミレイ?あ、アヤカにミオ。来てたんだ。いらっしゃい」
「あれ!?・・・おとうさん!?」
「レンジ!?・・・だからなのね」
騒がしさを聞きつけて出てきたレンジを見てアヤカとミオの二人は驚き、ミレイは今更のように二人を連れてきたことを後悔した。
「ちょっと、おかあさん!お父さんと既にもう同棲してるじゃん!」
「ミレイちゃん、これはどういうこと?」
「・・・えっと、だから一応二人を連れてきたんだよ。ははは」
実際はまた家族で食事することを夢見ていたためだけである。
「おいおい、アヤカ落ち着け。自分は昨日ミレイによって召喚されたんだ。だから僕は今無一文。ミレイにお世話になっているんだよ」
「・・・むう、出たお父さんのお母さん補正」
「やっぱりレンジはミレイの『前世』の旦那さんなのね・・・」
なぜか『前世』を強調するミオ。
それについて聞こうとするとやかんの沸騰する音が聞こえた。
「あ、ごはんで来てるよ。今日は少し作りすぎたかと思ったからちょうどよかったよ。アヤカ、その緑茶の葉っぱ取ってきてね」
レンジはそう言って台所へ戻るのであった。
そのあと、座席を巡り玄関先でじゃんけん大会が行われたのは言うまでもない・・・




