22.終焉の始まり
まずは前話の訂正を。
21話のランドルとの会話のシーンを修正しました。
内容に変化はなく、主人公側のセリフを敬語寄りにしました。
ですので、今回もその続きになっております。ご注意ください。
次に主人公と後輩のステータスの追加漏れを修正しました。
"捕獲"を覚えていたのすっかり忘れていました。(他にも追加漏れしてるかも)
1章も残すところ1話となりました。
これからも何卒よろしくお願いします。
『無理ですね』
端的に答える。
無駄に伸ばしたり期待を持たれたりされたら困るのはこっちだ。
「そうですか、では――――あなたはこれからどうするのでしょうか? 差し支えなければ教えていただきたいのですが」
周囲の人間が武器に手をかける。
その矛先は間違いなくこちらに向いている。そこには殺気が込められている用に思える。
どう言う事だ。
『もしかしてですけど、私達が、トロールの軍団に混ざる可能性を考えているんじゃないですか?』
あぁなるほど。
それなら確かに辻褄は合う。
『どこに向かうかは言えないですが、少なくともトロールと共闘はしませんし、人間と敵対するつもりはありません』
「……良かった」
ランドルが深いため息を一つ零す。そして、そのままこちらを見つめ直し言葉を続ける。
「なら、一つ頼みがあるのだが」
あっ、これいやな予感する奴だ。
「どうか、共に街を守ってくれないだろうか。この先にある街は人間にとってとても重要な街なんだ。あそこが壊されると災厄の日まで到底もたない。最悪の場合人類が滅んでしまう。だから、どうかお願いできないだろうか、頼む……」
深刻な顔で頭を下げる。
……災厄の日?
率直に言って断りたいのだが、……人類が滅ぶと来た。
そんな世界規模の言葉を言われても正直ピンと来ないんだが、ランドルたちの顔は真剣そのもので、嘘を言ってるようには思えない。
『人類が滅ぶとは?』
「そのままの意味だ。あそこが最終防衛線になっている。そこを破壊されたら人類に未来がない。神もそう言っている」
…………神?
あぁ、そういえばこの世界には四柱の神がいるんだったか。
完全に忘れていた。
その神が言っているのであれば、きっとそうなのだろう、か?
『一つ聞きたいのですが、人間だけでは魔物の大群に勝てないと言う事ですね?』
「あぁ、まだ実物を見ていないから、もしかしたら勝機はあるかもしれないが、この期間だと増援も不可能、情報だけ見れば勝てる見込みはほぼゼロ――――絶望的だ」
『……少し、考えさせてもらえないですか?』
「勿論だ」
どうする?
『そうですね、本当の事を言えば、私の"理想郷"で一部だけなら何とか出来ると思います』
まだ力の一端しか見ていないとは言え、馬鹿みたいな力なのは明らかだ。
制御の意味を込めて一部と言っているのだろうが、それでもかなりの数を減らせるだろう。
それは分かっているが、後輩はこちらの生命線でもあるヒーラーも兼任している。前線に出すのは得策ではない。
『確かになだけど、それでもリスクは大きい』
『ですね。ただ、人類の全滅と言っている以上、人の生活圏に移るならこの機会しかないように思えます。それに、神様と言うのも前の世界では無かった要素ですし、どこまで全能なのかは分かりませんが、もしかしたら今もどこかでこの状況を見ている可能性もあります。出来るだけ力になったほうが良いかも知れません』
『あー、そうか、ある意味ここが最後のチャンスなのかもなのか、そうなると後輩に苦労をかけるが……』
『先輩を守るのが私の役目なので、これくらいドンと来いです』
精一杯明るい声が頭の中に響く、その声には確かに震えが入っていた。
『すまん』
『違います先輩。今は謝罪より感謝です』
『……ありがとな』
『はい!』
俺も今までいくつも戦闘をしてきたのだから、後輩の出番を出来るだけ減らして負担をかけないようにしなければな。
『私は先輩に沢山負担かけますけどね!』
折角綺麗にまとまったのに、要らん事を言うな。
『……分かりました。私達はそちらの味方に付きます』
「おぉ! そうですか、あなたがたがこちらに……ん? あなたがた?」
そのタイミングで後輩が潜伏を解除し、姿を現す。
「なっ!?」
周囲がざわつく。
それもそうだろう。全員の視界に入っているはずなのに、いきなり俺のすぐ後ろに現れたのだ。驚かないはずもない。
『それと、こちらからも一つお願いがあるのですが、よろしいですか?』
「な、なんでしょう?」
多分だが、ランドルは後輩の記憶も戻ったのだろう。顔色が真っ青だ。
『服を二つ頂けませんか、大きさはそちらの子くらいのものを』
身長が近いアニを鼻で指す。
「あ、あぁ、それくらいなら構わないがどうするんだ?」
『着ます』
「……は?」
とりあえず見せた方がいいか。
『今から尻尾が動きますけど、敵対するつもりは無いので攻撃しないでくださいね』
そう言い残して俺は"人化"を使用する。
途端に、尻尾が独りでに動き出し俺を包む。視界が完全に遮られると罵声が聞こえてきた。
「大丈夫だ! こちらが何もしなければ攻撃してこない! 動くな!」
しまった。ランドルだけにしか説明してなかったから、他の人が慌てたようだ。
後で謝らないと。
眩しい程の光が収まり、少しの時間をもって、また尻尾が動き出す。
"人化"が無事に終わったのだろう。
尻尾の隙間から現れたのは、一人の人間。
頭にはピコンと狐耳を動かし、後ろには二本の尻尾がふさふさと動いているが、今は股間を隠すように前にある。
「服を頂けませんか?」
もう一度言う。
何故なら恥ずかしいからだ。
早く服をくれ。
「獣人族……なのか?」
「それより早く服ください」
「あ、あぁ、そうだった。ギル! この人? のサイズの服を用意してくれ!」
「おいランドル! 本当に後で色々説明しろよ!」
ギルと呼ばれたリーダーが後方に声をかけて服を持ってくる。
軽装と言うか、シャツとズボンを二着受け取る。
まだ誰も着ていないのだろう。匂いもそこまでひどくない。
片方を後輩に渡す。
「"土"」
スキルを使用して、子供くらいなら覆えそうな小さな丘を作る。
その丘の向こうへ服を咥えて後輩が向かう。
『"人化"』
流石に俺は男だからいいが、後輩は女だ。
こんな場所で全裸を晒したくは無いだろう。俺も晒したくは無かったがな。
少し経つと人型になった後輩がひょっこりと出てくる。
「改めまして、私が、えっと……」
"鑑定"
ステータス
名称:ルディアージ・ノア
状態:正常
種族:妖狐 二尾
能力:概念スキル"空想郷"
スキル"念話"
擬似スキル"炎"
"水"
"土"
"風"
"索敵"
"望遠鏡"
"翻訳"
"捕獲"
"人化"
限定的擬似スキル"鑑定"
補足:妖狐の幼生体、食べられる。双子。
ステータス
名称:リル・ノア
状態:正常
種族:妖狐
能力:概念スキル"理想郷"
スキル"念話"
擬似スキル"鑑定"
"索敵Ⅱ"
"翻訳"
"特定"
"捕獲"
"人化"
限定的擬似スキル"鑑定"
補足:妖狐の幼生体、食べられる。双子。
「私が、ルディアージです。こっちがこうは……妹のリルです」
「初めまして」
『今絶対"鑑定"で名前確認しましたよね? しましたよね?』
うるさい。
「な、なるほど……、オホン。こちらこそ、先日は本当に助かりました。改めて礼を」
そう言い頭を下げる。
「それで、お二人の助力を頂けると言う事で相違ないだろうか?」
「はい、人類が滅ぼされるのは嫌なので」
「……ありがとう。あなた方ほどのお力を貸していただけるのなら心強い」
「それで、私達も街に入ってもいいのでしょうか?」
「その話もありますが、まずは、みんなに紹介してもいいでしょうか?」
ランドルの後ろを見ると、未だ要領を掴めていない人が多数を占めているようだ。確かにそちらのほうが先決だろう。
「失礼しました。そうですね」
「では、付いてきて下さい」
そう言われ、俺と後輩はランドルの後ろを歩く。
先にリーダーが居る方に向かう。
その中には先ほどの、怒鳴っていた男もいる。その男は腕を組みこちらを睨み付けている。
先にいるのは四人。
「まずは、この人がこの討伐隊のリーダー、ギルバート」
「とりあえず、よろしく頼む」
先ほどまでランドルと一緒に先頭を走っていたのがギルバート。
金色の髪に遠目から見ても分かるほどの凛々しい顔立ち、あのエルフと凄く酷似しているが、耳は尖っていない。それに、あの嫌悪感は感じない。
「はぁ、一応言うが、俺はエルフではないからな」
少し腹の虫が悪そうに答える。別に聞いたつもりも心の声が漏れたわけでもないが、感づかれてしまったらしい。
「いえ、綺麗な顔をしているなと思いまして」
「それなら良いが」
「そして、こいつがルーラ」
「よ、よろしく……お願いします……」
身長は俺達よりも少し高いくらいだろうか、杖を持っている事からマイアと同種なのだと推測される。
顔が少し俯いていて、うまく顔が見えない。
それに声も小さくて人見知りなのだろうか。
「で、こっちの大男がゲラルト」
そう言われたのはムスッとした顔でこちらを睨み付けている男だ。
身長は190はあるだろう。隆起した筋肉が存在感を増幅させている。
「だああああああああ! やはり認められるか! 何故こんな魔物と一緒に戦わねばならんのだ!」
その男が叫んだ。
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