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ふたきつねは異世界で何を想ふ  作者: 茜村人
1章.謎の惑星
23/25

20.ケモミミっ子最高。

サブタイですが、作者成分100%です。

ご注意ください。

『なるほど、耳と尻尾は残ったままと。古典的な擬人化パターンですね』


 悠々とこちらを観察し、結論をつける。

 その瞳は研究者のそれだが、尻尾の振り方からしてそれだけとは到底思えないし言えない。そもそも研究者とは好奇心の塊だ。

 疑問があればそれを解明するために、全力で取り組み試行錯誤する。

 そのテリトリーに関しては仕事半分遊び半分な人が多い。

 所謂好きだからやっている奴だ。根っこから研究者気質とでも言えよう。

 そう言う意味では、後輩は完全に趣味を仕事にしたタイプだ。

 内容に関してはまだ思い出せないが、その当時の表情を思い返せば楽しそうに仕事をする後輩の顔がありありと浮かぶ。

 そんな奴の目の前に興味成分100%の生物を置いてみろ。


『先輩! 尻尾の付け根が見たいので立ってくれませんか!』


 ご覧の通りだ。


 楽しそうな狐とは正反対に、まだ乾燥すらしていない葉で作られた腰蓑をつけ三角座りで顔を隠すようにしている人間――とは少し異なる――が佇んでいる。


「いっそひと思いに殺してくれ」


 羞恥から込み上げる言葉を、包み隠そうともせず溢す。この歳にもなってこんなにも恥ずかしい経験をするとは思ってもいなかった。


『それにしても本当に先輩の面影が1ミリもないですよね。体も小学生くらいですし、顔立ちだって洋風と言うか、中性と言うか、髪の毛だって真っ白ですし』


 急いで狐の姿に戻ろうとした俺に後輩が、"人間との差異"を見たいと言ってきたのだ。


 その事に訝しい目を送ったが、言っている事は正論だし、今後の為にはなると頭の隅に押し込んでいた記憶を引きずり出して、急いで腰蓑を作ったのだ。

 だが、使うとも思っていない腰蓑の作り方なぞ鮮明に覚えている訳でも無く、結び目が粗く、動くとはらりしてしまうからこの体勢でじっとしている。


 ただ少し時間が経てば、若干の心の余裕が生まれて、好奇心旺盛に見てくる後輩につられ、気になったので水を出して反射した顔を見て――目を見開いた。


 アルビノのように白い髪が風と踊るように揺らめいている。。

 肩に掛からない程度の長さをした髪の上にちょこんと生えているのは狐の耳。

 ここ数日でずっと見慣れたものになったそれが乗っている。意識をするとピコピコと動かすことが出来る耳に嵌っているのは、小さなイヤリング。創生の指輪などと言う物騒な名前をしたアクセサリーが淡く煌いている。


 耳を良く見ると、髪の毛とはまた別の狐の毛に覆われているのが分かる。

 ここで少し疑問に思った。狐耳があるのならば、人間の耳はどうなっているのだろうか。

 気になったからにはみるしかない。

 恐る恐る髪の毛を分けるとそこに――――耳は無かった。

 耳の場所だけのっぺらぼうになったみたいで、違和感がふんだんに芽生えたが、気づいたら体が狐になっているよりはインパクトは少ないから、これもいつか慣れるだろう。


 狐成分はそれだけではない。背中の少し下、お尻の少し上から生えた二本の尻尾。

 今も腰蓑から出て、くるりと前に周り股間付近を覆っている。

 肌も前世に比べるととても白く、男らしいとは言わないが日本人独特の醤油顔だった俺の顔は、どこか外国人のようでいて、男とも女とも取れる中性的な別人へと変貌していた。


 唯一前世要素が残った部分と言えば、今も昔も変わらない真っ黒な瞳の色くらいだろうか。

 身長は140前後、狐のときよりは幾分か高いが、前世(まえ)と比べると随分と低い。


「そろそろいいだろ」


 口を動かして言葉を発する。

 これもテストのうちだ。長いこと鳴き声しかやってこなかったから、ちゃんと喋れるか少し不安だったが、いざ口を開けば日本語がすらすらと出た時は素直に嬉しかった。


『今まとめてるので、もう少し待ってください』


 何周もぐるぐると回る後輩にため息を一つ零し、自分に"鑑定(シーター)"をかける。


 ステータス

  名称:ルディアージ・ノア

  状態:人型+潜伏

  種族:妖狐 二尾

  能力:概念スキル"空想郷(ディストピア)"

     スキル"念話(テレパシー)"

     擬似スキル"(ファイア)"

          "(ウォーター)"

          "(ストーン)"

          "(ウィンド)"

          "索敵(サーチ)"

          "望遠鏡(スコープ)"

          "翻訳(トランシス)"

          "捕獲(テイム)"

          "人化(エミーパーズ)"

     限定的擬似スキル"鑑定(シーター)"

  補足:妖狐の幼生体、食べられる。双子。


 状態が人型になっている。

 これはこれで予想通りではあるが、全裸だと言う事を完全に失念していたな。

 本当に何故失念していたのだ……。死にたい。


 そろそろ立ち直ろう。

 人型以外には特に説明が変わっていない。

 だが、それでも得れた情報は途方も無く大きい。

 実際に喋って言葉が伝わるのかは不明だが、"念話(テレパシー)"と"翻訳(トランシス)"の合わせ技で対話が可能なのは既に分かっているし、フードか何かで耳を隠して、尻尾をどうにかすれば少しだけ怪しいが立派な人に見えるだろう。


 どうどうと街に入る事が出来るかもしれない。それだけで十分な情報源だった。

 あとは街がどのような感じなのかだが、実は街の場所は既に把握している。


 "索敵(サーチ)"と"望遠鏡(スコープ)"で一帯が真っ赤な地域を見つけ出している。内容までは分からないが輪郭は人間のそれなので、そこが街の可能性が高いだろう。

 距離からすればここから一日ほど歩いた場所に位置する。

 ただ問題があるとすれば……


『衣類の調達、ですね』

「だなぁ。流石に入る時に二人仲良く蓑だけとはいかんだろうしなぁ」

『それか、一か八かで潜伏状態で潜り込んで衣類を一着だけ拝借するかですね、それは気は乗りませんが出てきた人から頂くか』


 その手段が思いつく限りでは一番手軽そうではあるんだが、こう良心がなぁ。

 それに街に入るとなると、大勢の中に紛れる事になる。もしその大勢の中に誰か一人でも俺達を見れる奴が居たのであれば、事態は最悪な方向へ向かう。

 それだけは避けたいのだが、背に腹は変えられないのも事実、どうしたものか……。


『でも、希望は見えてきましたし、一度遠目からでも街を見に行きますか?』

「考えても仕方ない……事も無いけど、それもありだな。ところで流石にそろそろ戻ってもいいか」

『あ、一通りは見れたので大丈夫です。先輩も私の人型見ます?』

「それもそう……だ………ほぁ!?」


 あっけらかんに言ってきた言葉に、返事をしかけて事の重大性に気づいた。

 何言ってるんだこいつ馬鹿か、馬鹿だった気もするが馬鹿か? 馬鹿なのか?


『ばかばか言いすぎです! 失礼ですよ!』

「いやいやいや、何言ってるんだ。自ら進んで真っ裸になろうとしてる奴は変質者か変態か馬鹿しか居ないだろ、この三つなら馬鹿が一番マシだろ、これでも配慮してやったんだぞむしろ感謝しろ」

『先輩こそ何言ってるんですか、流石に変身中は後ろ向いて貰いますし、蓑を作ってからに決まってます』

「あぁ……、そうだな、そりゃそうだよな。すまん。俺がおかしかった」


 考えてみれば当たり前の事だな。

 てことで、後輩の分の蓑を半日掛けて編んだのだが、流石に二回目だと一回目よりは良くて、多少動いても見える事はない出来ばえになった。

 そこまでして、日が暮れたので狐に戻り獲物を飼って床に就く。

 狐に戻ったとき、腰蓑を外してなくて面白かった。


 翌日。


「どうですか!」

『どうって言われても、俺と瓜二つだな』

「同感です! 違いは私は女でした!」


 とうとう自分の性別まで忘れたわけではない。俺達は双子なのだ。

 それもここまで類似となると()()()()()()だと思われる。そうなると、性別は一緒のはずなのだ。

 つまりは後輩の体は()()()()()()()()()()()()()()()()

 だが、それも無かったようで一安心だ。極稀に異性の一卵性双生児も生まれる。今回はそのパターンだったのだろう。

 精神と体の不一致は大きなストレスの一つとされている。ただでさえこんな環境でストレスが多い状態にそんな事でストレスを加算されては堪ったもんじゃない。


 現在後輩は、胸と腰を隠している。ただ尻尾は納まりきらずに腰蓑からはみ出ている。若干隙間は生じて危うい。


「先輩のえっちです」

『おっほん。どうだ、久しぶりの声は』

「そうですね、なんか嬉しいですね。ちゃんと私だと改めて実感出来ます」


 やっぱり"念話(テレパシー)"と声だと何かが違うのだ。

 こう電子書籍で本を読むのと紙で本を読むのが違うように、懐かしい気分になれる。それが堪らなく嬉しい。


「折角ですし、先輩も人型になって一緒に喋りましょうよ」

『いや、まずは昨日お前も言ったように、人との差異をこの目で確認したいし、それが終わったらにしてくれ』

「了解です!」


 昨日寝る前に一通り聞いたのだが、やはり主立って違うのは耳と尻尾だろう。

 他は人と変わらないように感じる。

 これは頑張れば隠す事が出来るのだろうか、耳ならまだ何とかなるが、尻尾は何とかの域を超えている。腰に巻きつけてベルトスタイルにするとしても毛が嵩張(かさば)って不自然だし、うーむ……。


「先輩、私思ったんですけど、ここって所謂異世界ですよね?」

『……? そうだな』

「しかもエルフが居るのは確定、って事は獣人とかも居るんじゃ?」

『…………なるほど、一理あるな』


 確かにそうだ。耳が尖った暫定エルフが居るのだ。獣人やドワーフが居る可能性だって十分にある。なら今からやる事は一つだ。


「行ってこの目で確かめましょう!」


 そうして、俺達は街へ向かった。

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