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ふたきつねは異世界で何を想ふ  作者: 茜村人
1章.謎の惑星
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18.小さな分岐点

今年一年ありがとうございました。と言うにはまだまだ期間が短いですが、来年は言えるように予行練習しとこうと思います。

当作品を読んで頂き、ありがとうございます。

まだ新米ですが今年一年お疲れ様でした。来年も更新していく所存なので、どうかよろしくお願いします!

良いお年を!

 何がどうなっているのかは知らないが、確実な事が一つある。

 俺は今、壮絶な勘違いをされている。


「どうか、お教え願えないでしょうか!」


 もはやその言葉に疑いはなく、ランドルは問う。


 龍神と言うのに心当たりは無い。いや、龍は見たことあるけど、もしもあれが龍神様だと言うなら俺達は一度殺されかけている。そうでなくても、龍種に殺されかけた事実は消えない。

 どちらかと言えば敵対関係の方が近い気がするのだが、……違うな、敵対とまでは言わないか。

 あんなのと敵対したら、命が何個あっても足りない。

 もし、"空想郷(ディストピア)"が通じず、服従を求められたら応じざるを得ない。

 とは言え、俺達がその龍神様とやらに近しい者とかは到底言えない。


「……やはり何も答えてくれないのですか」


 あ、待って、これ訂正しないといけないやつだ。


『ちがっ――』


 ――ウオォォォォォォオオッ!!


 と声を荒げながら、俺達とランドル達の間に一本の矢が刺さる。


 どうやら、後ろの奴らの射程距離に入ったようだ。


『逃げるぞ!』

『はい!』

「待っ――」

『"空想郷(ディストピア)"』


 状況を確認している時間はない。

 何故ならまた矢が放たれているからだ。

 ランドル達の様子も確認したいが、今は離脱を優先する。

 橋を渡らずに引き返す。その際にランドル達の会話に耳を傾ける。


「俺達、この軍勢に勝った、のか?」

「え、えぇ、そうだったような、あれ? 違うような」

「あ、でも応援も駆けつけてくれたし、一先ずは安心だよね!」


 そこまでが、離れていくギリギリまでに聞き取れた会話だった。


 ☆  ☆  ☆


『追って、来ませんね』


 崖を北へと駆け上がり、結構な距離を走った。

 先ほどのとは違う橋も、視界に捉えている。今のところ気になる気配は無い。

 後輩はきょろきょろと辺りを見ている。


『流石に大丈夫だろう』

『そうですね、これからどうします?』

『後輩はどうしたい?』

『先輩にお任せします!』


 清々しい程の丸投げである。

 信用されているのか、考えるのを放棄しているのか……。


『信用に決まってるじゃないですか! なななななに言ってるんですか』

『はぁ、それでも良いけど決めあぐねてるから出来れば意見をくれ。人が居たって事はこの先に街があるのは確定でいいだろうし、後輩はどうしたい?』


 方針としては既に決まっていたはずだが、いざそれを目の前にすると戸惑いは生じる。


『じゃあ、一度何か食べて、そのあと寝てから考えましょう。先輩が先ほどのトロールの考察も忘れてるなんて、疲れてる証拠です』


 言われてから気づいた。

 そうだ、街よりもそっちのほうが大切だ。

 後輩のスキルの事も気になる。それを後輩に教えられるとは、精神が焦っているのか。


『……そう言えばそうだな、よし! 寝るか』

『食べてから寝ましょう!』


 勿論な事だが、狩りは――


『期待してます!』


 キラキラと輝かんばかりの眩い瞳が、俺を捉える。


 しょうがない。さっきは助けられたしな。


 周囲にはトロールのような大型の生き物の姿は無く、小型、もしくは中型の生き物しか居ない。


 まぁ今のところは変異種でない限り潜伏を見破られていないから、そこまで警戒しなくてもいい気はするが、警戒して損はない。


 トロールと戦闘を行い、死にかけたとは思えないほど体は元気だ。

 何故か精神的にも落ち着いている。はずだが、後輩の言う通り空腹だな。それに、摩耗してる事には変わりない。


 それから、鹿のような生き物を狩った。

 最初に比べると随分と慣れたように思う。

 気付かれないように――潜伏で気付かれる心配も無いはずだが、念の為――背後からゆっくりと近付き、水圧レーザーで胸を貫く。

 手際が良くなって嬉しいのか嬉しくないのか複雑な気分ではあるが、これも生き抜くための手段だからやっていくしかない。


 解体は中々に時間がかかる。


 狐だから、毛とか気にせず食べればいいはずなんだが、先入観と言うかなんとなく気が引けて出来る限り皮を剥いでいる。

 実際この時間が一番時間が掛かっている。


 あと内臓なども食べた事のあるもの以外は土に埋めるようにしている。


 時間にして二時間程で全体の作業が終わり、火を通して食事にありつく。


『うんみゃぁぁ!』

『そうだな、やっぱり肉は美味しいな』


 ほわぁっと顔を蕩かせて、(かぶ)り付く姿は、頑張った甲斐を感じさせてくれる。ちょっとあほっぽいけど。


『むむっ! 先輩! 今何か悪口言いましたね!』

『いや、対した事は言ってないから気にするな』

『対した悪口じゃないなら許します! うんみゃぁあ!』


 図太いと言うか、何も考えてないんじゃないかと思うときがたまにあるよな。


 腹も満たして日が傾き始めた頃には、二人して早々に横になった。


『初めてではないにしても、やっぱりこの距離は恥ずかしいですね……』


 森のときとは違い、周囲には身を隠せそうなものは無く、ぽつぽつと生えている木の陰で過ごすようにしている。

 "(ストーン)"で塀を作る事も考えたが、それだと周りから見て不自然になって余計に注意を引く可能性があったので断念した。

 季節で言えば夏から秋頃だろうか、過ごしやすい気温だが夜ともなれば話は別だ。風が肌をひと撫でする度に寒さを体感できる。


 それで行き着いたのが密着して寝る事だった。

 人肌もとい狐肌の暖かさが夜風の難をなんとか凌いでくれている。

 二人で丸まるように木の片隅で丸くなる。森のときは少しだけじめじめしては居たが、ここまで寒さを感じては居なかった。


『お、おう。そうだな』

『もしこれが私じゃなかったら、ほんとたこ殴りの刑にあってますよ』

『お、おう』


 と言いつつ、密着して寝るのを提案してきたのは後輩だ。俺も寒かったが、誰が密着して寝ようなんて言えようか、言えるわけない。

 とは言え、見知った仲が余計に意識をさせる。

 ……ん? そう言えばこいつこっちにきてから初手で俺の腹に顔面突っ込んでなかったか?


『せ、先輩?』


 それ以外にも、結構腹に顔突っ込んでなかったかこいつ?


『ちょ、ちょっとたんまです! そんな昔の事は忘れてください! 私にも色々あるんです! ノーカンです!』


 何をどう考えればノーカンになんてなるのだろうか、さっぱり分からんぞ。


『あぁあああぁ! 先輩の意地悪です!』


 そう言って後輩は、腹に顔を突っ込んで寝る体勢に入る。


『はいはい、わるぅござんした』


 俺も目を閉じ意識を閉ざす。

 意識が完全に消えるまでそこまで時間を有さなかった。

 やはり想像以上に精神が摩耗していたみたいだった――――。


 ☆  ☆  ☆


『――では先輩、お願いします』

『いや、お願いしますじゃないから、お前も一緒に考えろよ』

『えー、頭使うのは先輩の役目だと思ってるんですけど!』

『実働も俺じゃねぇか、後輩の役目はどこにあるんだよ』

『私は先輩の癒し担当です!』


 何言ってんだこいつ。


『そんな心底呆れた目を可愛い後輩に向けるなんてひどいです! 私は頑固異議申し立てを開きます!』


 これはダメだ。何言っても聞かないやつだ。


『はいはい、可愛いですよー』

『ところで、トロールについての考察はいいんですか?』

『……もし、後輩が数人いたら、一人くらいは置き去りにしてたかもしれない』

『すみませんでした。私も考えるので許してください』


 本当に綺麗な土下座である。


『まずはトロールについてだが、そっちは後回しだ、先に変異種だな』

『変異種の特徴としては、体色に白が混じる事でしょうか』

『それと大きかったりすることだろうか、ミノタウロスの普通の種類を見てないからなんとも言えないな』

『そうですね、とりあえずは普通の種類より何かしらが変化するのと、先輩の"空想郷(ディストピア)"が見破られる事でしょうか』


 今のところはそんな所か。トロールについては"鑑定(シーター)"をする時間が無かったのが痛い。

 もう少し詳しい情報を得れるチャンスだったのに、惜しいことをした。

 次は必ず見るようにしよう。次だ。


『まだこの世界に来てから半月くらいだが、既に二回変異種に遭遇しているとして、俺の"空想郷(ディストピア)"もそこまで当てに出来ないな』

『そうなると益々(ますます)二人きりでの行動が不利になりますね』

『そうだな、現状、狐として生きる事に慣れる前に死ぬ確立が高いな』

『つまりは……』

『どうにかして街に紛れるしかない。幸いな事に、今まで出会った人間には"空想郷(ディストピア)"の潜伏は効いている。街に入るのは多分大丈夫だろう。人間にも変異種がいたら正直お手上げだがな』


 もし、人間に変異種が居て俺達に襲ってきたら街から逃げなければならない。

 理由は簡単で、人間とは戦える気がしないからだ。強さの問題ではない、もしそいつを殺したりしたら俺の心がもたない。そのことは後輩も分かっているだろう。

 体は妖狐だが、二人とも心は人間なのだ。


『それはもうどうしようも無いですし、今考えても仕方の無い域です』

『やっぱり一番の理想は人間になれる事だよなぁ――』


【個体名:ルディアージより"空想郷(ディストピア)"を経由、擬似スキル申請を確認、"理想郷(ユートピア)"……申請を許可、"黄昏の月(ダスク・ムーン)"……基準を満たした事を確認……承認、擬似スキル"人化(エミーパーズ)"の取得に成功しました】

【固体名:ルディアージの肉体適合率の上昇を確認、進化します】


 それは突如として起きた。

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