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ふたきつねは異世界で何を想ふ  作者: 茜村人
1章.謎の惑星
19/25

16.四人組

 橋に着いた時には四人組は既に窮地に立たされていた。

 片腕を力無くだらんと垂らし頭からは血が出ている。

 もう一人は、持っている獲物が短くリーチが足りずに手が出せない。

 後方にいる二人のうち一人は足が曲がっては行けない方向に曲がっており、立つ事も出来ずに弓を打っている。口に咥えた布を噛み砕くほど食いしばっているのは痛み故だろう。

 最後の一人が一番やばい。

 何がやばいって"索敵(サーチ)"の赤い輪郭がとてつもなく薄くなっている。

 もし対"索敵(サーチ)"用のスキルか何かを使っているのなら良いのだが、スライムが死ぬ時の薄い輪郭と酷似している。

 つまりは、死にかけている。


 早く助けなければならない。


 だが、姿を隠したまま倒してしまえば、見えない敵――つまりは俺たちを警戒して碌に処置も出来ない可能性もある。

 つまり分かるな。


『勿論です!』


 流石後輩、物分かりが早くて助かる。

 橋の真ん中に立ち潜伏を解除する

 後輩が大きく息を吸う。それに合わせて俺もスキルを発動し集中する。


 ――クォォォォォォォォォォォォォォォン


 人も、トロールも、全ての視線がこちらに集まる。

 そして、俺はレーザーを解放する。

 流石に三方になんて高度な技術は持っていないから、短剣の方の一体の頭を貫く、少し集中が甘く水が膨れたのか、レーザーが当たった瞬間、鉛に当たったかのようにトロールの顔が吹き飛んでしまった。


 残りは二体。


『先輩、来ました!』


 後輩の言葉通り、二体のうち一体がこちらに向かってきている。

 もう一体は男が斬りかかった事で、そちらを応戦している。


『"(ファイア)"』


 時間なんてかけてる場合ではない。

 また制御が甘くて目の前に現れた火の玉に、予想以上の熱を感じながら放出する。

 トロールは慌てて避けようとするが、この距離で避ける事なんて足の遅いトロールには不可能だった。

 そのまま火に呑まれ、表面を黒く焦がす。

 プスプスと煙が上がる中、黒く焦げた部分がボロボロとこぼれたと思ったら、中から半分ほど皮膚が回復したトロールが現れた。これが超回復という奴なのだろうか、ただ、皮膚がまだ無い部分も多く完全には回復が間に合ってはいない。


 ならこのまま燃やし尽くせばいい。


 もう一度火の玉を放つ、回復に専念しているのか、避ける素ぶりすらせぬままトロールはもう一度火に呑まれる。

 先程よりも火力を――単に火の玉をデカくしただけだが――上げている。これがだめならもう一度更に大きくしてやる。


 トロールは苦しむように断末魔を上げながら、その場に倒れこむ。


 後輩から"鑑定(シーター)"で死んだとの報告を聞いて、標的をもう一体に移す。


 トロールは男と交戦しているが、先程の短剣の男も加わって一気に劣勢になっている。

 それでも超回復がある為、中々決定打にまでは至らない。


 流石に他の人にも当たる為、火は使えない。ならば水だろうが――いくら動きが遅いとはいえ、トロールも戦っている、やはりというか頭を一箇所に留めていない為に狙えない。

 かと言って、胴体を狙うと、誤って男にも当たる可能性があるので心臓も狙えない。なら。


『さっきのいけるか?』

『え、本当に火の海にするんですか?』

『違う。俺を助けた時のやつだ』


 あの時、亜種は灰になるまで燃え尽きたのに、両手で握られていた俺には一切熱を感じなかった。

 もしかしたら、"理想郷(ユートピア)"には対象だけを燃やし尽くすスキルがあるのかもしれない。


『あー、えーっと、あのですね。あれって……どうやって撃つんでしょう?』

『おい』

『だって、何振り構ってられなかったんですもん。とりあえず先輩を助けたい一心だったので、もう一度出来るかって聞かれたら、ミスって火の海にするかもですけど、いけます! って答えます』


 うわー……。


 何やら後ろで言い訳じみた"念話(テレパシー)"が送られてくるが、無理なら無理で別の手段を考えないといけない。


 火、水、と言われたら他には――。


【個体名:ルディアージより"空想郷(ディストピア)"を経由、擬似スキル申請を確認、"理想郷(ユートピア)"……申請を許可、"黄昏の月(ダスク・ムーン)"……承認、擬似スキル"(ウィンド)"を構築……構築完了、適応……適応完了します。擬似スキル"(ウィンド)"を取得】


【個体名:ルディアージより"空想郷(ディストピア)"を経由、擬似スキル申請を確認、"理想郷(ユートピア)"……申請を許可、"黄昏の月(ダスク・ムーン)"……承認、擬似スキル"(ストーン)"を構築……構築完了、適応……適応完了します。擬似スキル"(ストーン)"を取得】


 ほんと、ありがとうございます。


『"(ストーン)"』


 新しく覚えたスキルを唱える。

 若干後輩がいじけてる気がするけど、今は無視だ。そっちに構っている余裕もない。

 スキルの発動を感じながら、どんなものかを鮮明にイメージする。

 すると、唐突にトロールの真下の地面から剣山のように尖った土が盛り上がり――そのまま串刺しのように脳天まで貫いた。


 うわっえぐっ。


 先ほどまで暴れまわっていたトロールは、ピクリとも動かなくなる。


 男達も何が起きたのか理解出来ずに、立ち止まっている。


 ――クォォォォォォォォォォォォン


 なんか後ろで後輩が鳴いた。


 それに気付いてか、男達は慌てて此方に向き直し、獲物を構える。


『先輩、なに"あっちゃー、そうじゃん俺らも魔物じゃん"って思ってるんですか、まさか気付かなかったとか言いませんよね』

『素直に答えるなら、最初は覚えてたけど、途中から完全に忘れてた。今完全に姿現してるよなぁ俺たち』

『ばっちり見えてると思いますね』

『これ多分もっかい潜伏したら、この四人組は俺達の事忘れるよな?』

『多分忘れると思いますね』


 それはそれで勿体ない。

 助けたのは人間だからってのは勿論あるが、実際はもっと打診的なものから来ている。

 要は恩を売ってどうにか融通を図ってほしい。その一点なのだ。

 どうにかして和解する術は無いものだろうか、と言うか――


「ランドル! マイアが!」


 後ろの方で弓を構えていた少女が叫ぶ。

 見れば隣に居た女が前のめりに倒れている。


 輪郭がほぼ消えかけている。あれは本当にやばい。

 後輩!


『正直今使っていいのか分かりませんが、先輩の判断に従います! "理想郷(ユートピア)"!』


 橋から女の居る距離まで50M程だろうか、それでも後輩が放ったそれは効果を発揮した。


「なんだっ!?」

「マイア! ねぇマイアってば!」


 唐突に光が女を包み込む。

 その光は直視出来ない程眩しく、思わず目を瞑ってしまう。

 数秒間それは続き、光はゆっくりと輝きを失う。


 そこには倒れたままの女の姿が。


「マイア!」

「……ん、んん。あれ、私、生きてる……?」

「マイア! 無事かっ!?」

「え、ええ、……何故かしら、座る事も出来なくなってたのに、それに魔力も回復してるわ」


 輪郭もはっきりとしている。

 一先ず安心だろう。助かった。


『終わったらお肉、又はいちご味のスライムを所望します』

『はいはい』


 いちご味のスライムは戻らないと無理だと思うが、お肉なら何とかなるだろう。

 流石にトロールの肉を食べる気にはならんな、こう何と言うか共食いしている気分になる。今は狐だけど。


『ってかまだ俺達の方は解決してないよな』

『そうですね、一人は様子を見に行きましたけど、まだもう一人が完全に警戒態勢ですもんね』


 どうやら俺達が何もしないのを見て、片手でロングソードを使ってたやつが後衛の二人の方に向かった。

 短剣は後ろが気になってるのだろうが、こちらの警戒をしている。


『私たち襲われたりしないですよね?』

『どうだろうな、まだわからん。と言うかお前はやけに落ち着いてるな』

『まぁ、いざって時は先輩が助けてくれると思ってるので何とかなるかなぁ、と』


 それは楽観過ぎやしませんかい。


『私にとっての先輩はそう言う意味なんで』

『どう言う意味だよ、先輩って書いてスーパーマンって読んでないだろうな』

『んー、ちょっと違いますけど、似たようなものですね』

『よし、先輩やめるか』

『まっ!? 待ってください! 先輩はずっと私の先輩のままで居てください! 後生です!』

『と、ここまで漫才があったわけだが、向こうに動きは無しか』

『え、漫才だったんですか』

『どうも向こうもそこまで警戒していないようだったからな、軽い冗談だ』

『良かった……、本当によかった』

『この前の俺が死に掛けた時くらいに心の篭った良かったをありがとよ』

『でも、襲ってきたらどうします?』

『どうって言われてもなぁ……』


 流石に人間を殺したくはないし、殺すつもりもないし、殺す度胸もない。もし襲われたら尻尾巻いて逃げるしかない。

 もしくは大人しく潜伏で俺達の存在ごと忘れてもらう。

 "空想郷(ディストピア)"による潜伏が記憶にまで至るかの実験は、まだ他人で試していないので丁度いい実験にもなる。


 と、後方で少しだけだが光が漏れた。

 少女の足、男の腕に薄っすらと光が巻き付いていくのが見えた。

 そして、それが終わると、ぴょんと大振りに少女が立ち上がる。いや、跳ね上がる。


 男の方も、だらけていた腕がしっかりと動いている。

 ざっと見たところ、魔法と言っていたから杖を持っている女性が魔法使い。

 弓を構えているのはアーチャー?

 剣を携えているのは剣士ってところだろう。

 魔物と呼ばれる存在が居るんだ。そう言う人が居てもおかしくは無いのだろう。


 後方に居た三人がこちらへと歩いてくる。

 既に剣は抜かれているし、弓に矢は添えてある。

 杖の人はその後ろから来ている。


『これ、やばくないですか?』


 ちょっと危ない雰囲気が出ている。

 どうする。いや、まずは意思疎通だ。


【"念話(テレパシー)"を個体名:ランドルに申請……接続を確認、起動まで3……2……1……】


『初めまして』


「な、なんだ。頭に声が……ッ!?」

「どうしたの!」


 突如として聞こえた声に、ロングソードの男が戸惑いの声を上げる。

 それに釣られるように他のメンバーも動揺している。


『聞こえますか、私は今、あなたの脳内に直接語りかけています』

『ぶっ』


 おいこら、笑うな後輩。

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