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ふたきつねは異世界で何を想ふ  作者: 茜村人
1章.謎の惑星
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間話1.後輩ちゃんの冒険?

完全に体調を崩しました。

皆様も風邪にはお気をつけください。

 野宿と呼べるのか、外で寝る事にようやく慣れ始めた朝。

 私はゆっくりと身を起こし伸びを一つ。


 目の前でまだ眠る真っ白い狐、もとい先輩は起きる気配がまだしない。

 あの猪以来、慎重に慎重を期して行動した為、危険な目には合ってはいません。

 この世界に来てから、ずっと気を張ってくれています。私も気を使ってない訳ではないけど、先輩のそれは私を優に超える。

 寝れる時は寝ていて欲しい。

 これが知らない人なら自然にこう思えるか怪しいですが、人間時代の先輩で当時から凄く面倒を見てくれた人です。よく二人で何かしていた記憶があるので二人チームだったのかもしれません。

 私が先輩の前だから自然体で居れるように、先輩も私の前だから無理しているのだと思います。そう言う人だとぼんやりした記憶が言っています。

 私たちの居た部署は所長含め五人、名前は思い出せないので見た目で言うなら、所長、ポニー先輩、先輩、私、オッドアイ君の順番で配属されてきました。所長とポニー先輩がいつも一緒で、私はよく先輩と一緒の記憶があります。オッドアイ君は所長とポニー先輩によくいじられてました。ただ記憶自体が穴埋めのように所々無くなっているので現状判断での話になりますが、先輩もこんな感じなので真実とそこまで差異は無いと思います。


 樹洞から顔を出し、外の様子を見ます。

 どうやら太陽――太陽かは不明――も私と一緒に顔を出したようで、体感的には4時過ぎと言った所でしょうか。


 それにしても、いつ見ても不気味な空模様だと思います。

 いくつもの亀裂が走り、蜘蛛の巣のようにこの星を覆っている。

 大きな樹――神代之老樹と言うそうです――から離れれば離れるほど、周りの木々が小さくなっていき、最初の頃は見難かった空も今では見やすくなっています。

 この異様な景色がこちらの世界では普通なのでしょうか、スキルとか言う魔法のような現象がある以上、私達の知らない要素が存在するのかも知れません。


(あっ、忘れてた)


 慌てて顔を引っ込めて自分の状態を確認する。


 ステータス

 名称:リル・ノア

 状態:潜伏

 種族:妖狐

 能力:概念スキル"理想郷(ユートピア)"

    スキル"念話(テレパシー)"

    擬似スキル"鑑定(シーター)"

         "索敵(サーチ)"

         "翻訳(トランシス)"

    限定的擬似スキル"鑑定(シーター)"

 補足:妖狐の幼生体、食べられる。双子。


 狐には違いないけど、私達は妖狐らしいです。今のところ妖狐の妖の部分が不明瞭で、私から見ればただの真っ白な狐です。

 潜伏が続いている事を確認し、ふぅと息を吐き出し安心する。

 これが私の生命線です。

 私は非力なんです。こんな事を言える状況では無いと分かっているけど、それでもあの狼や猪が出た時、体が動かなくなった。

 怖かった。

 恐ろしかった。

 顔を伏せてただそれが去るのを待つしかなかった。先輩に甘えてる状態なのは私が一番理解しています。

 だけど……、だからこそ、私は。


 私の先輩診断が、あと二時間は起きてこないと告げています。


 静かにゆっくりと樹洞から抜け出す。


("索敵(サーチ)")


 いくら潜伏で見つからないとは言え、あの猪のようなのが居る可能性は十分あります。

 近くに大型生物の輪郭がない事を確認し、鼻を効かせる。

 狐になってから色んな発見があります。その中でも嗅覚でしょうか、匂いを嗅ぎ分ける事が簡単に出来ます。


 今日の朝ごはんはスライム。昨日取ってきたものです。

 ここ数日で一番食べている食材。

 ゼリーと言うよりは寒天の方が食感は似ていて、生暖かいから味次第ではなんとも言えない物もあるけど、今回は紫色、それも不透明度が比較的高いタイプ。

 毒があるのかと先輩と身構えたけど、"鑑定(シーター)"の情報では毒があるとか出てないから、食べられるだろうと判断し昨日一匹食べました。

 そう、そのスライムは二匹引っ付いてたんです。

 昨日一匹食べて今日の朝ごはんにもう一匹です。

 味は薄いトマトのような味でした。大きさもそこまで大きくなかったので、大きさによって味が良くなる説はまだあり得ます。

 そんな訳で、私はあるものを探しに行きます。


 道中にいくつか見たので多分付近にも生えているはず――――


 ☆  ☆  ☆


 ――――と意気込んで捜索を始めたものの、既に1時間ほど時間が経っているでしょうか、一向に見つかる気配がしません。匂いはあるのに場所が分かりません。


 あと1時間ほどすれば先輩が起きてしまいます。

 仕込む時間も考慮するとあと半刻くらいしか猶予がありません。

 早く見つけないと――


【個体名:リルより擬似スキル申請を確認、"黄昏の月(ダスク・ムーン)"……承認、擬似スキル"特定(シービック)"を構築……構築完了、適応……適応完了します。擬似スキル"特定(シービック)"を取得】


 あっ。と思ったときには既に私のステータスには"特定(シービック)"が追加されていました。


 やってしまいました……。

 天の声に上限があることを考慮して覚えるのは出来るだけ控えるようにしてたのに、まさか汲み取られるとは……。

 水とか火とかは覚えたくても"理想郷(ユートピア)"に統合されてるのに、後で先輩に怒られそうです。


 怒られるか呆れられる事は確定しているので、開き直っていきましょう。


("特定(シービック)")


 おぉ、探したい物の方向が感覚で伝わってきます。

 色んな方向からしてますが、とりあえず感覚が強い方に歩いていくと更に感覚が強くなっていきます。

 これは距離と比例しているようです。


 なるほど、均等に生えていたから匂いがそこら中にあって分からなかったのですね。


 ようやく見つけたそれを、丁寧に地面から剥がします。

 決して口に入れてはなりません。

 剥がせたら背中に乗せてお持ち帰りです。


 音を立てないようにゆっくりと樹洞に入ります。先輩の目覚めを邪魔してはいけません。

 大丈夫です。寝てます。


 それを確認したらゆっくりと先輩が食べる側――いつも私が奥側で食べてる――のスライムを爪で穴を開けるのです。

 初めての試みですが、案外前足でもいけるものですね。

 そこに取ってきたものを入れます。後は……。


("理想郷(ユートピア)"!)


 するとスライムの傷口がゆっくり蓋が閉まるように統合していきます。

 これは昨日分かったのですが、私の"理想郷(ユートピア)"の治癒? 能力は死んだ状態でも無機物にすら効果があるようなのです。

 ただしスライムを生き返らせる事は出来なかったので、死者を蘇らせる事は出来ないと考えた方がいいと思います。


『……んん』


 先輩の声が頭に響きます。

 基本ずっと"念話(テレパシー)"をつけているので、こんな声も聞こえます。

 "念話(テレパシー)"は繋ぐ時に相手の許可を要求されるので、切った状態で夜に何かあった場合、先輩が自力で起きない限り助けを呼べないからです。

 最初は恥ずかしかったけど、先輩だからいいかなーってなりました。あとは慣れてきたってのもあります。


『おはようございます』

『んー、おはよう』

『朝ごはんの時間ですよ! 今日は既に用意されてます!』

『そうか……って、そりゃ昨日俺が獲ったからな』

『お腹すいたのでトマトを早く食べましょう』

『そういやトマトっぽい味だったか』


 欠伸をしながら伸びをする先輩をさりげなく誘導し席に着きます。


『なんか後輩から凄い(よこしま)な感じが流れてくるんだけど……』

『ほえ? 先輩どうかしました?』

『ってもう食べてるし……』


 私は何も知りません。薄いトマトおいしいです!


『じゃあ俺も……』


 食べてるフリをしながら先輩がスライムに噛り付くのを見守ります。


 一口。


『……まっずぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうう!!!』

『ドッキリ大成功です!』

『うげえぇぇぇぇぇぇぇ、何入れたぁぁぁ!!』


 先輩が奇想天外な顔をしながら聞いてきたので、お返しに満面の笑みで答えます。


『先輩が初日に食べたむちゃくちゃまずい紫色のきのこをスライムにぶち込んどきました! 毒はありませんので安心してください!』

『うぉぉぉまぁぁぁえぇぇぇぇぇ!!』

『きゃっ、先輩顔が般若みたいですよ☆ あいたっ! 痛いです先輩!』


 キャピっとウィンクを一つプレゼントしたら、代わりにげん骨が返ってきました。


『あんなの食えるわけないだろぉ! "(ウォーター)"!』


 先輩の前に水が現れたと思うと、先輩はうがいを始めました。


『あ、わたしもお水ください。朝からそれ探すのに走り回って喉カラカラです!』

『そんな事に労力使うなぁぁぁぁ!!』


 そんな事を言いながら私の分までお水出してくれる先輩はやっぱり先輩だと思います。

 だから――私は先輩が先輩でいられるように、この世界で頑張ろうと思います。


 あと"特定(シービック)"の件も怒られました。

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