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ふたきつねは異世界で何を想ふ  作者: 茜村人
1章.謎の惑星
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プロローグ 前編

誕生日なので物語書きます。

 混沌とした意識が緩やかに浮上する。

 仕事から疲れ果てそのままベッドへダイブ、意識はすぐに飲み込まれ気が付けば朝だ。

 アラームが鳴るのをずっと待つ。待ちわびているわけではない。寧ろ、今日の仕事を告げる狼煙(アラーム)など鳴って欲しくないのだ。だが、逆に考えれば狼煙が上がるまでは寝れる。そう思い、再度眠りについた――。


 ――おかしい。アラームが鳴らない。

 感覚的な話だが、もう鳴ってもいいはずなんだ。

 気怠げな瞼が中々に開こうとしない。

 優しく鼻を燻る風の匂いに違和感を感じながら、重たい瞼をゆっくりと起こす。

 視界に入ったのは――大きな毛玉であった。


 ん?


 二日酔いのように、未だに覚醒しない頭をぐっと持ち上げ全容を見る。


 ――――それは、真っ白な狐であった。頭から足まで白く、まるで絵を切り取ったような感覚に陥る。よく見ると右耳にリングらしき物をつけている。


 思考が止まっているのが感覚で分かる。


 何も理解出来ない。こんなぬいぐるみを買った記憶も狐を飼った記憶も勿論ない。


 意味が分からず周りを見渡し、顎が外れた。

 鬱蒼と生える草や、毒がありそうななさそうな分からないきのこ、見上げなければ天辺が見えない程の木々。

 そして、後ろにはあまりにも大きな――樹木の壁。


 見上げても果てが見えないそれが、すぐ目の前に存在した。

 横を見ても同じく果てが見えない。きっと歩けばいつかは反対側には行けるだろうが、どれくらいの期間がかかるか、それすら想像出来ない。


 落ちた顎をなんとか拾い上げる。

 視界を落とし、もう一度狐を見る時に不穏なものが見えた。

 目の前の狐とは別の、()()()()()()()()

 それがあるくらいなら、問題は無かった。

 問題なのは、そこは俺の体があるはずの場所だと言う事。嫌な予感が背筋を襲った。

 恐る恐る視線を足から体へと動かす。

 まぁ、体が存在した。無いほうがおかしい。足単体で存在してるとかホラーだ。

 そして、その胴体は、どう考えても俺の首と繋がっている事が感覚として分かる。

 自分の右手――いや右足なのか?――を動かす。

 目の前の狐の足が思っていた通りに、ひょこひょこと動く。

 その行動の意味が分かるたびに、意識が飛び出すように覚醒した。


 現状の予想だが、俺は目の前の狐と同じ体をしている。

 待て、俺は昨日何をしていた。思い出せ。

 いつも通りに仕事して、仕事先から帰ってきて寝て起きたイマココ。

 いやいやいやいやいや、流石にアバウト過ぎた。

 もっと思い出せ……あれ?

 ふと、違和感を覚えた。自分の名前を思い出せない事に気が付いた。


 どれだけ頭を捻っても名前が出てこない。頭の中に霧がかかっている気分だ。


 待て、いや、待ちまくってるけど、更に待って。

 一から順を追っていこう。

 全部が全部思い出せないのではなく、虫食いのように一部が消えていたりする。

 面白いのが、顔は思い出せるのに名前が思い出せない事だろう。

 家族、友人、職場、そのどれもが顔は出てくるのに名前が出ない。地名などは出るあたり人の名前が全て無くなっているようだった。

 それと、仕事場のこともあまり思い出せない事も分かった。自分がどんな仕事をしていたのかぼんやりとしか思い出せない。顔だけは鮮明に思い出せる。他に仕事で思い出せるのはロゴくらいだろうか。あと、研究機関だと言う事はなんとなく分かる。それくらいだった。

 客観的に見ると仕事で人体実験……はないだろう。そんなやばそうな研究をしてた気はしない。

 もっとこう天文分野とかそんな気がする。ロゴも月をイメージしたロゴだし。


 寝起きの頭がパンクしそうになるほど、頭を回すが何も分からない。もはや目覚ましの事など記憶にない。

 うねる様に首を捻ると、何か視線を感じた。

 感じた先に視線を戻すと、顎をぽかーんと開けながら俺を見つめる、もう一匹? の狐と目があった――――あぁ、多分こいつも俺と一緒だわと、直感的に理解出来た。

 何故か安心した。確証は無いが、もう一人も中身人間なのだろう。

 俺も胴体は白い、恐らく顔も白いと思う。この狐は兄弟か?


 ――クゥゥゥン――


 目の前の狐が鳴いた。何言ってるかさっぱりだった。

 あ、これ意思疎通出来ねえじゃん。


「クゥゥゥン」


 真似て鳴いてみた。

 鳴き声が似てる事からして、顔だけ全く違う別種という訳ではなさそうだ。

 だが、向こうも鳴き声の意味が分からないのか、首を捻っている。

 これ詰んだんじゃね?

 ま、まぁいい、いや、よくないが、まぁいい。

 次だ。

 狐を見るに多分子供だろう。

 自分の体も同じくらいだから、自分もそうなんだろう。

 てか、なんでサラッと自分が狐になってる事に納得してるんだろう。

 なんか驚き疲れて、もういいやって諦めの境地なのかも知れない。

 ……とりあえず、周りの確認が先。

 安全を確認してからでも遅くはない。


 辺りを見渡す。当然ながら森である。

 蛇などの敵対しそうなものは見当たらない。多分。

 ただ一つ気になるのは、今俺らが居る場所。

 周りには似つかわしくない。明らかな人工物。

 四角く切り取られた台座に俺ともう一人は鎮座していた。

 そして、その四方に佇む鳥居。

 苔で覆われ、見えるであろう赤は一切見えない。形からして、それが鳥居だと分かる程度だ。

 だが、余りにも不自然な物だった。

 これはあれか? 召喚する為の陣とかじゃねぇだろうな。


 ――クゥゥン!――


 後ろで声が聞こえたと思うと同時に、何かが腹に入り込んできた。


(うおっ⁉︎)


 慌てて振り向くと、狐の顔が俺の腹に埋もれていた。


 ――クゥゥゥン! クゥゥゥン!――


 昂ぶっているような声を発しながら、感触を楽しむように顔を擦り付けている。

 その感触に悪寒を感じ、飛び上がる。


 きょとんと目をパチクリさせる狐にグルルと唸る。ナチュラルに狐ロールが出来ているが、不思議と体の違和感は無かった。

 すると、狐は小さく震え、クゥンと身を丸める。

 怯えたようにこちらを見つめるのを見て、しまった少しやり過ぎたと反省した。


 多分こいつも中身は人だから、野生の狐が威嚇すれば普通に怖いだろうな。

 一度怒ってしまったが、反省したなら良いだろう。謝罪の意味を込めてゆっくりと近付き、未だに怯えている狐の首を軽くつつく。

 びくっと震える。

 中の人の性別が分からない以上、体を触るのは気が引けた。かと言って顔もなぁ、という事で首にしたんだが、馬鹿か俺は、普通に急所つついてどうする。噛まれると思って余計に怖がるだろ。

 その考えに至った時には、既につついてしまっている。


 これはあれだな。舐めるしかねぇな。

 いや、何故舐めるになる。俺の思考は獣の類か。もしかして、狐になったから思考も狐寄りになっているのか?

 ま、まぁ、愛情表現とかで使われているから、悪い意味には取られないだろうと、ペロっと首元を舐める。


 更にびくぅっとするが、何度か舐める。特に不潔感や不服感は無かった。

 ばっちぃって意識もあんまりしなかったし、寧ろ、舐めている方が落ち着いた。感覚も狐に近いのかも知れない。

 何度か舐めていると、向こうもゆっくりとだが体を舐め返して来た。

 よし、意思疎通出来た。

 とりあえず、大丈夫だと思われる背中や首をお互いに舐めながら落ち着くのを待つ。


 てか、もっとちゃんとした意思疎通出来ねぇかな。

 喜怒哀楽の喜怒くらいしか今んとこ疎通出来てないのはいただけない。いや、哀もあったな。

 だけど、もっと言葉を的確に伝える術が欲しいな――――


【個体名:ルディアージより"空想郷(ディストピア)"を経由、擬似スキル申請を確認、"理想郷(ユートピア)"……申請を許可、"黄昏の月(ダスク・ムーン)"……承認、擬似スキル"念話(テレパシー)"を構築……構築完了、適応……適応完了します。擬似スキル"念話(テレパシー)"を取得】


 ――――ん?


【"念話(テレパシー)"を個体名:リルに申請……一時保留。"黄昏の月(ダスク・ムーン)"から強制承認を受諾しました。"念話(テレパシー)"の接続を確認、起動まで3……2……1……】


 ――――んん?


 何これ?


(あの……)


 訳が分からず、思わず心の中で呟いた瞬間、狐と目があった。


(い、いい天気……ですね)


 伝わっているか分からないが、伝わりそうな予感があったので、つい思ってしまった。


 ――キャァァァァァァァァァァァァアア!!


 その声は俺の頭の中だけに思いっきり響いた。

久しぶりの執筆です。

至らぬ点多々あると思いますが、よろしくお願いします。

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