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6話 花園さんは生徒会の良心である


 岸波さん、姫乃さんの地雷を踏んでしまいましたね…。


 平静を装った顔に平坦な口調、でも付き合いの長い私にはハッキリとわかります。

 姫乃さんがマジ怒りモードです。

 心なしか姫乃さんがら『ゴゴゴゴゴッ――!』という怒りの効果音が聞こえて来るような気がします。

 

 ―――ゴゴゴゴゴゴゴッ―――!


 あれ?

 というか、何故かやけにハッキリとリアルな音が聞こえますね。

 

 チラリと姫乃さんの様子を横目で窺う。

 ……って、よく見たら右手で音楽プレイヤーみたいなものを握ってる!?

 

 もしかしてその音って自分で出してるんですか!? 何故そんなことを!?

 っていうか、意外と余裕あるじゃないですか、姫乃さん!!


 心の中でツッコミを爆発させる。

 普段から姫乃さんは少し変わったところがある気がしないでもないが、こればっかりは長い付き合いでもなれない。

 ほら、一年生たちが少し引いちゃってますよ!


 しかし、そんな私の心の声は姫乃さんに届くはずもない。

 そもまま姫乃さんはフンと鼻を鳴らし、ピッと音を止めると立ち上がる。


「その不届き者には誅罰が必要ですわね!」


 そう、声高々に宣言した。

 気付いて姫乃さん、一年生があなたの奇行にビックリしてます!

 それに、さっき会長に「うるさい!」と怒られたばかりですよ…

 

「いや、振られたんなら別にいいんじゃないのか?」

 

 しかし、会長は再び声を荒げて怒るかと思いましたが、今度はうんざりした顔のままではあるものの机に座ったまま落ち着いて問いかけました。

 大人です、会長!


「よくありません! そもそも四天王という言い方も私は認めたことはありませんわ、一途様以外は少しばかり顔の整った変質者じゃありませんか!」


「いや、西堀も十分顔の整った変質者だと思うんだが…」


「おだまりなさいませ、会長」


 姫乃さんの一喝。

 会長は「ああ、そうね」ともう無駄と悟ったのか、再びパソコンに目を向ける。

 会長もなんやかんやで姫乃さんと一年の付き合いになるので扱い方は心得ているようです。


「花園、それの処理は任せた。俺は疲れちった」


「ええっ!?」


 何故か姫乃さんのことを私に丸投げする会長。

 しかし、それとは別に私もさっきの姫乃さんの発言には納得のいかないところがありますよ。


「姫乃さん、同学年の学友を変質者だなんて言うものじゃありませんよ。みなさん優しくて良い方々です。特に北風さんはいつも私なんかに対しても気兼ねなく話しかけてくれたり色々とお世話を焼いてくれたりするんです」


「それはあの男が花園さんにゾッコンだからですわ!」


「??? …またまた~、あんなにかっこ良くて勉強も運動もできて優しい男の子が私みたいな今でも小学生に間違われるちんちくりんのことを好きになる訳ないじゃないですか。姫乃さんも冗談が下手ですね~」


 うう…、自分で言っていてなんだか凹んでしまいます。

 なんで他の学友の皆さんは身長が伸びたり、お…おっぱいが大きくなったりしているのに私は小学生のころから成長しないのでしょう…

 

 でも、そんな私の言葉に姫乃さんはハァーっと呆れたようにため息を吐いた。

 ちょっと、その反応はどういう意味ですか、姫乃さん!

 

 会長にも目線を向けるが、何故か会長も同じようにハァーっとため息をついている。

 関係ないですけど会長と姫乃さんって仕草がちょっと似てませんか?


「――まあ、私が言うのも野暮ですわね」


 そう言って姫乃さんが席に着きかけたときコンコンと生徒会室の扉がノックされる。


「入ってかまいませんわよ」


「ナチュラルにお前が返事をすんな、会長の仕事だ」


 姫乃さんの返答に会長が物申す。

 しかしノックした方は慣れているのか、姫乃さんの言葉でドアを開け放つ。


「お邪魔します。お嬢、お迎えに来ましたよ」


 そこに立っていたのは、姫乃さんのお付きの傾城花凛さん。

 身長が高めで足も長い、きれいな黒髪を後ろでポニーテールにした少し釣り眼のかっこいい女性です。

 胸も大きめですし、私と同い年とは思えません! 

 実はひっそり憧れてたりもします。


「ああ、もうそんな時間でしたか。今帰りの支度をしますわ」


 花凛さんが来たということは、終業の時間が近づいていることを示します。

 時計を確認し、机の上を整理する姫乃さん。

 会長や一年生たちも同じく時計を確認し、ゆっくりと後片付けを始め出しました。


 一足早く準備を終えたのは姫乃さん。


「そうですわ、花凛。実は今日一途様に告白した川上なる雌犬について情報を集めてくださいな。やはり、きちんとした形で制裁を加えなくてなりません」


 その話まだ終わってなかったんですか!

 フフフフフフッ、っとまるで小説の悪役の様に笑う姫乃さん。

 というよりその発言は完全に悪役ですよ…

 しかし、花凛さんは涼しい顔をして、


「わかりました。とりあえず私がささっと似顔絵描いて、家の近くの電柱に貼って情報提供呼びかけてみますね」


「ぶっ」


 会長が思わず吹き出す。

 ちょっと会長!


「そこ笑ってるんじゃありません! 花凛もウケてまんざらでもない顔をしているんじゃありませんわ!」


 姫乃さんが叫ぶが、その声の大きさ程怒っているわけではないようで、表情を整えフッと笑うと、


「ではみなさん、また明日。ごきげんよう」


 そう言って生徒会室から姿を消した。

 そんな様子に今日は新たな生徒会の一面を見たのか、一年生が少し呆然としている。


「…えっと、今日は色んなことがあって賑やかでしたね」


 おっかなびっくりといった様子の岸波さんの声。

 それに対して私は、


「うーん、そうですね。まぁ、なんと言うか…とにかく生徒会は今日も元気です」


 これから生徒会室で長い間共に過ごしていくだろう後輩にそう笑いかけた。

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