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悩む勇者

足取りが重い俺は真っ直ぐ魔王の城には向かわず、城下町近くの森へと向かう。

腰かけるにちょうどいい切りかぶを見つけて座り込む。


周りには魔物が何匹かいたが、俺には一切近づいてこない。

それもそのはず、俺はレベル99。一方この森にいる魔物はレベル1~2程度。高くてもレベル4ぐらいの雑魚しかいない。

以前は俺が通る度に攻撃を仕掛けてきたが、容赦なく襲ってくる敵を瞬殺していたら、いつの間にか俺を襲わなくなった。

いやむしろ俺の姿を見ると怯えるぐらいだ。


魔物たちの怯える視線を気にもせず、俺は今後の事を考える。


「はぁ~……、どうしよっかな……。国王には今度こそ倒すなんて言ったけどさ、多分また俺死ぬだろうな……。だって好きな相手を殺すなんて出来るわけないよな。でもまた死んで帰ったらどんな顔して国王に会えばいいんだ⁉ ただでさえもう98回死んでるのに、これ以上死んで戻ったら、次は間違いなく国王たちに殺されるぞ……」


 こんな自問自答を何回、いや何十回と繰り返している俺。

 

自慢じゃないが俺は魔王討伐に出発してからかなり早い段階で魔王の元まで行っている。

 レベルにしたら多分46ぐらい。

 仲間を数名連れて魔王討伐に行くのが過去の勇者たちの定番だったらしいが、俺は一人で戦っている。

 そんな俺がパーティーを組んでいる過去の勇者達よりも早く、そして低いレベル(パーティーで戦う勇者御一行の平均レベルは65らしい)で魔王の元まで行っているのだ。

これはかなり誇れるらしい。


 しかも魔王の元に行くまで死んだ回数なんておそらく10回もいっていない。(過去の勇者たちは平均44回死んでいるらしい)


 まさに順調にレベルを上げ、そして魔王の元に着いたのだ。

 このまま順調に魔王を倒して世界に平和を取り戻せると思っていた。


 しかし‼


 魔王が可愛すぎて惚れちゃったもんだから倒せるわけがない!

そこから俺の死にまくりの人生が始まった……。

 

 最初は国王も心配してくれたさ。

 

「魔王強いもんね~。でも焦らずゆっくり倒せば良いよ♪ それに君まだレベル50行ってないじゃん! もっと強くなんないと魔王は厳しいよ! せめて60はないとね! 無理せず頑張って! あはっ」


 って俺が落ち込まないように気も使ってくれた。でも魔王に挑戦して、

 20回死に……、

 30回死に…………、

 40回を超えた時点で、


「ち、ちょっと君死に過ぎじゃない⁉ ゆっくりとは言ったけど、もういい加減魔王倒しても良くない⁉ もうレベルも70越えてるんだから出来るでしょ!」


 最初は優しかった国王も目に見えてイライラ度が増していった。


 そして俺が50回死んだ頃には、


「また死んだんだね。ちょっといい加減にしてよね! 君生き返らせるのもタダじゃないのよ! 税金使ってるのよ! そこら辺考えて死んでよね! まったく」


 もう完全に怒っていた。

 俺が死ぬ度に何度叱られた事か。そしてその度に俺は、「次は倒します!」と言いながらもまた死ぬを繰り返す。


 そして生き返る度にこの状況をいかに解決するべきか自問自答する俺。

 そんな無限ループをずっとしているのだ。


 だがもう本当に何とかしなければいけない!

 98回でも多いのに99回も死んだら、魔王側じゃなく人間側に俺は殺されるだろう。

 そしたらもう生き返らせてくれないだろう……。

 もうどうして良いか分からない。

 いっそうこのまま逃げようか……。

 いや、ここは恋を捨てて魔王を倒すべきか……。


 レベル99だが頭は弱い俺。魔法も一つも使えないほど頭が弱い俺。

よってどんなに考えても答えなんて見つからない……。

 

…………もうどれくらい森で一人考えているだろう。

 気がつけば周りは薄暗くなっていた。


「このままここに居ても仕方ない。とりあえず魔王の城に向かうか」


 重い腰を上げた時だった。


「おっ! こんなところで何してるんです? 勇者様」


 森の奥から声が聞こえた。


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