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三章 43 『アーバンカル総力戦 12』


 「貴様ぁ・・!少しくらい魔力が上がったからと調子にのるなよ!」


 タクミに吹き飛ばされていたエレボスが立ち上がった。


 「別に調子にのってなんてねーよ。お前はここで俺が倒す、ただそれだけなんだよ!」


 「それが調子にのってるというんだよぉ!」


 立ち上がったエレボスはゆっくり歩いて近づいてくるタクミに向かって行った。

 

 「もう今のお前に負ける気はしねぇんだよ!ドラゴンフレイム!」


 タクミは炎龍を造り出す。それは今までと同じ魔法とは思えぬほどのモノだった。炎龍がエレボスを襲う。


 「ぬぅおぉおおお!」


 炎龍に呑み込まれるエレボス。防御魔法をしていたがそれでもタクミの魔力の方が上回っていた。再び炎龍に圧され地面に打ちのめされるエレボス。


 「ぐぉ・・!こんな・・ことが、あってたまるか!貴様なんぞにこの私が!」


 目の前の現実を受けられないエレボス。


 「諦めろエレボス。今のでわかったはずだ。お前じゃ俺に勝てないとな!」


 「ふざけるな!私が負けるはずないのだ!私はこの世界に復讐すると誓ったのだ!こんなところでつまずくわけには行かないのだ!」


 「確かに、お前の過去には同情するよ。俺だって、もしかしたらお前と同じようなことになっていたかもしれなかったんだからな。俺はお前よりほんの少し運が良かっただけかもしれない。だから偉そうなことは言えないけどな・・・お前が不幸な目にあったからと他の人まで不幸にしようなんて考えは絶対に間違ってるんだ!」


 地面に倒れているエレボスの胸ぐらをつかむタクミ。


 「貴様に何がわかる!私がどれだけ虐げられてきたか!」


 「ああ!わかんねーよ!だけどそんなお前ならわかるんじゃねーのかよ!?傷つけられる人の辛さが!痛みが!お前だからこそわかるんじゃねーのかよ!お前が一番傷ついている人に寄り添うことが出来たんじゃねーのかよ!?」


 タクミは真っすぐにエレボスの瞳を見て訴えかけた。ほんの少しエレボスの表情に変化が見えた。


 「・・・うるさい!そんなことは私には関係のないことなのだ!周りの人間がどうなろうが私にはどうでもいいのだ!」


 エレボスはタクミの腕を振り払い立ち上がり、タクミから距離を取った。


 「何を言われようが私の意志は変わらぬ!私はこの世界を絶対に滅ぼすのだ!この世の人間すべてに絶望を与えるのだ!」


 エレボスが両手を上げてその頭上に魔力を集め始めた。


 「意志は変わらないね・・・どうやらいくら言葉で言っても無駄みたいだな。」


 おい、ヘリオス聞いてるか?


 タクミは自分自身の中に眠る太陽神ヘリオスに語り掛けた。


 なんだ?


 お前浄化の魔法を使えるんだよな?それを使って・・・・・・・ってできるか?


 なんだ、そんなことか。もちろん可能だ。相手の体内に私の魔力を直接流し込む必要があるがな。


 ・・・そうか。なら一つ頼むぜ!


 タクミが拳に魔力を込め始めた。


 そうしている間にエレボスの頭上には徐々に巨大な禍々しい黒い球体が膨らんでいった。


 「私の全魔力を込めたモノだ。このアーバンカルごと消し飛ばす程のな!覚悟するがいい!」


 「エレボス!この・・・大馬鹿ヤローがぁあああ!」


 タクミが一足飛びでエレボスの懐に飛び込んだ。


 「いい加減目を覚ましやがれぇ!!」


 「うぉおおおおおお!!」


 タクミの魔力を込めた右の拳がエレボスの心臓のあたりに入りこんだ。エレボスが叫び声をあげる。


 「おぉおおおおお!!きさ・・まぁ・・・ぐっ・・・」


 しばらくしてエレボスは気を失い地面へと倒れこんだ。頭上にあった球体はエレボスが気を失うと同時に消え去った。


 「ふう・・・。お前はしばらく寝てろよ。」


 「タクミー!!」


 エレボスが倒れこんでから少ししてローゼが真っ先にタクミの元に駆け寄ってきた。


 「お、ローゼ。もう終わったから安心しろよ。」


 「終わったって、エレボスに何をしたの!?もしかして死んだの?」


 「ばっ・・!殺してなんてねーよ!ちゃんとエレボスは生きてるよ。」


 「それじゃあエレボスが目を覚ましたらまた・・・」


 ローゼが心配そうな表情になった。


 「いや、その心配はないはずだぜ。」


 「え?なんでそんなこと言えるの?」


 「エレボスの今回の動機はこの世界に来た時に受けた仕打ちが原因なんだろ?だから俺の中にある太陽神ヘリオスの力を使ってエレボスの記憶を消し去ったんだ。異世界に来てから今日までの記憶全部な!そして少し記憶の改ざんもしたんだ。だから次に目を覚ます時が、まさにこいつにとっての異世界一日目ってことになるんだ。」


 「そんなことをしたのね!・・・じゃあ今のエレボスはラザリー姉さんを操っていたことも、邪神教徒のリーダーだったことも覚えてないのね?」


 「ああ。・・・ローゼ、こんなこと言うなんて都合が良すぎるだろうけど、こいつのしたこともう責めないでやってくれないか?」


 「タクミ・・・」


 「こいつのしたことは決して許されることじゃないのはわかってる。でもこいつも異世界に連れてこられてあんなことがなければこんなことはしてなかったはずなんだ。同じ異世界から人間としてもう一度だけこいつにチャンスをくれないか?」


 タクミの提案にローゼは少し考え込んで答えた。


 「・・・そうね。たしかにエレボスの話には同情できる部分もあったわ。それに記憶の無い人を責めたって仕方ないしね。それでいいかしら?ラザリー姉さん?」


 ローゼは振り向きラザリーに尋ねた。


 「ええ。私も操られていたとはいえ沢山の人を不幸にしてしまったのも事実だわ。目を覚ました本当の人格を信じることにしましょう。」


 ラザリーもローゼの考えに同意した。


 「団長もそれでいいか?」


 「そうだな・・・確かにこの男のしてきたことは簡単に許されることではない。だがすべてこの男のせいとは言えない部分もあるのも確かだ。ラザリーの言う様にこの男の本来の姿にかけるとしよう。」


 クリウスもタクミの考えに同意してくれたようだった。


 「アイズもそれでいいか?」


 「私も構わないさ。彼が根っからの悪人ではないことを信じているよ。」


 「他の皆は?」


 タクミの問いにエドワード達もうなずいて答えた。


 「俺のわがままを聞いてくれてありがとう!みんな!」


 そんなやり取りをしている間に気を失っていたエレボスが意識を取り戻したようだった。


 「・・・うっ。あれ?ここは一体・・・?」


 「目が覚めたか?自分がだれかわかるか?」


 「え?貴方達は一体?私はなぜこんなところに?」


 状況が全く理解できない様子のエレボス。少々パニックになっているようだった。


 「まあ話すと長くなるんだが、まずは名前を聞いていいか?」


 「あ、私はコウタって言うんですが・・・」


 「コウタ?じゃあエレボスってのは本当の名前じゃなかったってことなの?」


 驚いた様子のローゼ。


 「エレボスとはもともと暗黒の神という意味が含まれている。恐らくはその名を使っていたのであろう。」


 アイズが補足した。


 「エレボス?暗黒の神?すいませんが何のことだが僕にはさっぱりなんですが・・・私は一体これからどうなtってしまうんでしょうか?」


 「悪い悪い!混乱しちまってるよな!俺はタクミって言うんだ!えっーっと・・・なんて説明したらいいかな?やべっ!考えてなかった!」


 「やれやれお主のそういう部分は相変わらずじゃな。このコウタという者は一旦ワシが預かることにするとしよう。この者がアーバンカルにいるのは色々と都合の悪いこともあるじゃろう。しばらくはワシが面倒を見ることにするが、それでよいかな?」


 エドワードがケイタを引き取ることを提案した。


 「たしかに、ジュエルなんかはエレボス・・・コウタの顔を知っている。しばらくは混乱が生まれるかもしれないな。エドワードの爺さんならとりあえずは安心だ!頼むよ!」


 「とりあえず安心とは失礼なやつじゃな・・・それではコウタといったな?すまんがすこしワシに付きあってもらうぞ?詳しい説明は場所を移してするとしよう」


 「えっ?えっ!?それってどういう・・!?」 


 エドワードはそういうとコウタの肩に手を当てて、どこか違う場所に転移魔法を使って行ってしまった。


 「まあエドワードの爺さんに任せとけば大丈夫だろうよ。これで邪神教徒との戦いも終わりだな・・・」


 「そうね!これも全部タクミのおかげよ!本当にお疲れ様!」


 「イテッ!」


 ローゼがタクミの背中をバシッと叩いた。


 「それじゃみんなも待ってるだろうし帰るとしようぜ!」

 

 

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