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三章 39 『アーバンカル総力戦 8』


 「団長!大丈夫か!?」


 戦いの終わったクリウスにタクミ達が駆け寄る。


 「ああ。多少傷は負ったが問題ない。それよりタクミは一体今まで何をしていたのだ?」


 「それは・・・団長!本当にすいません!俺、スコットの事で正直に話すのが怖くて逃げだしてしまったんだ。でもそれじゃダメだって気づいて、きちんと自分のしたことに向き合わなくちゃいけないと思って戻ってきました!」


 クリウスに深々と頭を下げるタクミ。


 「・・・そうか。タクミがスコット様の件で何かを思っていたのは気づいていた。しかし今のタクミの言葉を聞けばそれでもう十分だ。自分で立ち直ってくれたのならば私たちがそれ以上言うことはないだろう。今はタクミの力が必要不可欠な状況だ。しっかり魔法騎士団として頼んだぞ。」


 「・・・はい!」


 クリウスが頭を下げているタクミの肩に優しく手を当てた。


 「それで他の状況はどうなっているかわかるか?」


 「ここに来るまでに狂魔六将のゲルニクスは倒して、ラザリーは呪縛の呪いを解いて今はローゼが看病してます。あとはジュエルがバズドーと一人で戦っているところだと思います。」


 「そうか。ジュエルの事だ、大丈夫だとは思うが何があるかわからない。私たちも援護に向かうとしよう!」


 「了解っす!」


 タクミ達三人はジュエルの元へ向かうことにした。


 「なあ団長、狂魔六将は全部で6人いるんすよね?今のところ倒したのがシーバスにゲルニクス、元に戻したラザリー。そしてウルガンドで捕まえたベルモンド。そして今ジュエルが戦ってるバズドー、これで5人すよね?あと最後の一人がエレボスって奴でいいんすかね?」


 「その通りだ。この状況からしてエレボス本人もアーバンカルに来ているに違いないだろう。ここでエレボスを倒せば邪神教徒は壊滅するに違いないはずだ。」


 「そうっすか・・・エレボスさえ倒してしまえばこの戦いは終わるんすね!」


 「ああ。だがエレボスは邪神教徒をまとめ上げる実力者だ。その力は今までの狂魔六将達とは比べ物にならないはずだ。決して油断するんじゃないぞ!」


 「もちろん!絶対に負けませんよ!」


 もうすぐでジュエルのいるはずの場所に着こうとした時、先頭を走っていたアイズが二人を制止した。


 「待て・・・この先にとても強力な力を感じる。ただならぬ気配だ。」


 「この先?バズドーとジュエルじゃないのか?」


 「いや、この気配は先ほどの男ではないようだ。タクミ、気を抜くなよ?」


 「わかってるよ!行くぜ!」


 タクミが先陣を切ってジュエルの元に向かった。


 そこには予想を超えた光景があった。そこには地面に横たわっているバズドーの姿があった。


 しかし、その横には満身創痍のジュエルの姿が倒れていた。ジュエルの姿を見つけて慌てて駆け寄るタクミ達。


 「ジュエル!!おい!大丈夫か!?しっかりしろ!」


 「タクミか・・・」


 まだ意識はあるようだった。


 「一体何があったんだ!?バズドーにやられたのか!?」


 「正直ここまでとは思わなかったな・・気をつけろタクミ。」


 「だから誰にやられたんだよ!?」


 「おやおやお仲間かな?」


 突然後ろの方から声がした。その声の方を振り向くタクミ達。そこのは一人の男が立っていた。


 その男は見た目は30代前半ほどの見た目で、黒髪を後ろで束ねている。端正な顔立ちだがその眼は底の見えないどこか闇を抱えているような黒い瞳だった。


 「お前がジュエルをこんなにしたのか?」


 「ふむ。少しばかり戦いの手ほどきをしたにすぎないんだがね。予想より手応えが無くてがっかりしていたところだったのだよ」


 「そうか・・・お前がエレボスか?」


 「私の名前をご存じだったのかい?その通り私の名はエレボス。邪神教徒を作り上げた張本人だ。それを知って君はどうするつもりだい?」


 エレボスはまるで品の良い紳士のように胸に手を当て頭を下げた。


 「そんなもん・・・・ぶっ飛ばすに決まってんだろう!!」


 頭を下げているエレボスに殴りかかるタクミ。


 「残念だがそれは無理な話だ。」


 エレボスを殴ろうとしたタクミの拳は、なにか見えない壁に邪魔されてしまいエレボスに届きはしなかった。


 「ちっ・・!バリアーか!それならこれでどうだ!ドラゴンフレイム!」


 凄まじい炎がエレボスを襲う。しかし間髪開けずにタクミは攻撃を続けた。


 「まだこんなもんじゃ終わらせねーよ!貫け!ホーリーレイピア!」


 今度は無数の光の矢が煙幕が上がっているエレボスのいた所に降り注いだ。


 「さらにもういっちょおまけだ!あいつをつぶせ!ゴーレム!」


 タクミの呼びかけに応え地面から巨大なゴーレムが現れた。ゴーレムはその巨大な右手を思いっきり叩きつけた。


 「どうだ!」


 徐々に煙幕が晴れ、視界がはっきりしてくる。


 「・・・なるほど。これはかつてベルモンドが操っていたゴーレムか。さては君が話に聞いた他人の魔術を奪う力を持つという者か?」


 そこにはゴーレムの右手をいともたやすく右手で受け止めているエレボスの姿があった。タクミの魔法は何一つ効果を発揮していないようだった。


 「あれだけしても無傷ってか。さすがラスボスはケタが違うようだな!」


 「この程度の魔法、私には子供がじゃれてきたようなものと変わりはないさ。しかし君のその特別な魔術に興味が出てきたよ。私と同じく異世界から来たと言う君の力試させてもらおうか!」


 そういうとエレボスは右手で受け止めていたゴーレムの手を粉々に砕いてしまった。


 

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