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三章 16 『約束』


 「で、護衛って具体的には何をすればいいんだ?」


 タクミの思わぬ質問に頭を悩ませているウインズ。クリウスも軽くため息をついた。スコットも目を丸くしていた。


 「・・・タクミ。君のさっきの自信はどこから来たのかと私は聞きたいよ。」


 ウインズがあきれたように言った。


 「アハハ・・・とりあえず勢いで返事しちまった。」


 「まったく・・・。いいかい?今回の護衛の任務は2週間後にここアーバンカルでスコット様の皇帝襲名式典を開くこととなっている。なのでその式典まで、そして式典中にもスコット様に危害が及ばぬように守るのがタクミの役目だ。わかったかい?」


 「なるほど。なら俺は邪神教徒からスコットを守ればいいんだな?」


 「それは少し違うな・・・」


 ウインズが重い口調で答えた。


 「え?それって一体どういうことだよ?」


 「スコット様に危害を加えようとしているのは何も邪神教徒だけではないということだよ。」


 ウインズは何やら説明しにくそうな様子だった。


 「それは僕から説明しよう。この街には僕が皇帝になることを良く思わない人たちがいるってことだよ。皇帝は代々引き継がれていくものだが、その家系が絶たれればまた別の家系が皇帝の称号を得ることとなる。前皇帝の血筋を引いているのは僕だけだからね。だから僕が死んで皇帝の称号を得られる可能性がある人たちも僕の命を狙っているってことだよ。」


 「そんなことがあるのかよ・・・」


 「まあね。前皇帝・・・つまり僕の父が何者かに暗殺された時も誰かが暗殺者を手引きしたと僕は考えているんだ。あの事件の時僕は母になんとか逃がしてもらったけど、その母も暗殺者によって命を落としてしまった・・・。だから僕は両親の無念を晴らすためにも再びアーバンカルの皇帝としてこの国を治める義務があるんだ!だからタクミ、君の力を僕に貸してほしい。」


 スコットの瞳が真っすぐタクミの瞳を見つめている。その瞳には強い覚悟が現れていた。


 「つまりスコットに近づこうとする奴全員が敵の可能性があるってことだな?」


 「簡単にいうとそういうことだ。」


 クリウスの言葉にタクミは大きく息を吐いた。


 「ふぅ・・・。わかった!俺が絶対にスコットをアーバンカルの皇帝になるまで守ってやるから!そしてスコットは皇帝になったらこのアーバンカルを守る立派な皇帝になってくれよ!」


 「もちろんだとも!」


 タクミとスコット互いに強く返事を交わした。


 「話は決まったようだね。このことはここにいる我々とあとはニーベル、ジュエルあとはドズールしか知らないからくれぐれも他言しないように気をつけてくれよ。」


 「極秘任務ってわけね。それで襲名式典までの二週間は何をしていればいいんだ?」


 「私とクリウスは式典の準備と根回しを主に行うこととなる。スコット様とタクミはその間は私の屋敷に滞在してもらってほしい。準備が出来次第私たちが迎えに行くから待っていてくれ。」


 「なら俺はウインズの屋敷でスコットの護衛ってわけだな。」


 「ああ。二週間は外出も控えてくれ。食事も私の指名したメイドの物のみを口にするようにしてくれ。」


 「わかったよ。」


 「僕の為に皆の手を煩わせて申し訳ないね。なんと言葉にしたいいかわからないよ・・・」


 申し訳なさそうに頭を下げるスコット。


 「スコット様が気に病む必要はありませんよ。あなたが皇帝にならなければこのアーバンカルの民が路頭に迷うことにもなりかねません。我々は我々にできることを全うするだけです。なのでスコット様にはスコット様にしか出来ないことがありますのでそれにご尽力いただきますようよろしくお願いします。」


 ウインズが優しく答えた。


 「・・・ありがとう。ウインズの言う通り僕にしか出来ないこと、それを全力で全うするよう頑張るよ。」


 こうして新たな任務を受けたタクミはスコット一緒にウインズの屋敷に二週間篭ることとなった。


 「悪いが私も色々と忙しいので屋敷にはあまり戻れそうにない。一応この屋敷のも守護魔法はかけてあるが、タクミくれぐれもスコット様の事を頼んだぞ。」


 こう言い残してウインズは屋敷を後にした。


 ウインズの屋敷にはタクミとスコットの他に身の回りの世話するためのメイドが3人残された。それぞれウインズが最も信用のおけるメイドを選出したようだった。


 まず初日の夜、ウインズの言う通りメイドの用意した食事を食べた。一応スコットが口にする前にタクミが毒見をした。


 そして入浴の時間もタクミとスコット二人一緒にお風呂に入ることにした。護衛の役目として片時も離れるわけにはいかなかった。


 「なんだか男同士で風呂に入るってのも不思議な感じだな・・・」


 タクミがボソッと小さくこぼした。


 「すまないね。僕の為にタクミにも迷惑をかけてしまっているね。」


 「あ、いやいや!そういうわけじゃないんだよ!ただこういう状況があんまり慣れてないってだけで・・・俺ってその小さい時からそんな風呂に一緒に入ったりするような友達とかいなかったから・・って何言ってんだろ俺。」


 「アハハ。なんだろうタクミは不思議な感じがするね。タクミは他の人と違って僕にも普通に接してくれるから。」


 「あー・・・俺ってなんていうか、かしこまった感じで話すのが苦手なんだ。スコットは嫌な気はしないのか?」


 「全然そんな気はしないよ。むしろ嬉しいくらいだ。僕は小さい時から皇帝の息子ということで特別な扱いを受けて来たんだ。だからタクミのように親しく話しかけてくれるような友人なんかもいないんだ。こんな風に同性同士でお風呂に入るなんてことも初めてだよ。城にいた時はいつも世話係のメイドが体を洗ってくれるくらいだったからね・・・」


 「メイドが体を洗ってくれるってそっちの方が断然いいんじゃん!うらやましすぎるだろ!」


 「アハハ・・・そんなことはないさ。彼女らも仕事でしているだけなのだから。いつも義務的な感じでされるのも寂しいもんさ。」


 「そうなのか?俺には想像もつかない悩みだな。」


 「そうさ。そういえばウインズ達に来たのだけどタクミはなんでも異世界から来たって聞いたのだけど本当なのかい?」


 「え?あ、ああ。本当だよ。なんで俺がこの世界に来たのかは理由はわかんないけどな。」


 「やっぱり本当なんだね!よければタクミの世界の話を聞かせてくれないかい!?」


 スコットが目を輝かせてタクミに尋ねてきた。


 「お、おう。俺の世界の話で良ければ話してやるよ。」


 それからタクミはスコットに自分のいた世界の事を話した。


 スコットはタクミの言葉に時には驚き、まるでおとぎ話を聞く子供のように話を聞いていた。


 「聞けば聞くほどタクミの世界に行きたくなっちゃうよ!」


 タクミの話を一通り聞いてスコットはこう感想を述べた。


 「そうか?俺の世界は魔法もないからこの世界の方がずっと面白いと思うぞ?」


 「そんなことはないさ!僕に言わせれば魔法なんてものはあって当たり前だからね。それよりも君の世界の話に出てきたゲームっていう物や他にも聞いたことのない物が沢山あるからそっちのほうが僕は興味深々だよ!」


 「アハハ。スコットって面白い奴だな。そうだな・・・俺がこっちの世界に来れたんだ。いつかはこっちからも俺の世界に行ける日が来たらスコットも連れて行ってやるよ!」


 「本当かい!?約束だよ!!」


 タクミの言葉に子供のように喜ぶスコット。


 「ああ!約束だ!」


 二人は誓いの証として拳同士を軽く合わせた。 


 

 

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