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無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。  作者: 高田 タカシ
第二章 魔法騎士入団編
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二章 17 『ウルガンド攻防戦5 ベルモンドの真髄』


 降りしきる雨はさらに激しさを増していった。遠くでは雷も鳴りだした。


 「ふん、どうやってゴラとドラから逃げて来たのか知らないが言ったはずだ。お前ごときでは私には勝てぬとはな!」

 

 みるみるベルモンドの巨神兵の損傷が修復されていく。

 

 「誰があんな双子から逃げ出すかよ!あいつらならしっかり捕まえてやったさ。それに俺も言ったはずだぜ?そんなのやってみなくちゃわかんねーってな!」


 「ほう・・・ならばここでお前の無力さを証明してやろう!やれ!我がゴーレムよ!」


 ベルモンドの合図で巨神兵の右手がタクミめがけて振り下ろされる。これを空を飛びかわすタクミ。


 「浮遊魔法か。こざかしい!これで地面へと叩きつきてやろう!」


 今度は宙に浮いているタクミに地面から無数の土で造られた手がタクミを捕まえようと迫ってきた。


 「こざかしいのはお前だよ!」


 迫りくる手を炎で焼き尽くすタクミ。しかし焦げた手はすぐに元通りに復元されていった。


 「ちっ!すぐ回復しやがって。キリがねぇ。」


 「お前の魔力が尽きるまで私は攻撃をやめないからな。せいぜい逃げ回るがいいさ!」


 さらに土の手を増やしタクミへと襲いかからせるベルモンド。


 「いいや、逃げ回りはしないさ。それじゃ二年前と同じだからな!今度は俺から行くからな!ホーリーレイピア!」


 空に再び無数の光り輝く矢が現れる。そしてタクミの合図でベルモンドへと降り注ぐ。


 「これは・・・さっきのやつか!聖魔法を使うとは。ぐっ・・・」


 降り注ぐ光の矢が迫りくる手をすべて打ち払う。そして巨神兵をふたたび削り取っていく。ほかの邪神教徒の兵も巻き添えになり倒れていく。


 「・・・すごい。これがタクミの魔法なんだ」


 その光景をみていたローゼが思わず呟く。


 「まずはその目障りな泥人形から壊させてもらうからな!」


 タクミは頭上に一つの巨大な光の矢を作り出した。それをやり投げのようなモーションで巨神兵に投げつける。


 これを巨神兵は左の手のひらで防御姿勢をとった。しかしタクミの放った矢は巨神兵の左半身を吹き飛ばした。


 「ぐぉ!こんなことが!?」


 その威力に驚きを隠せないでいるベルモンド。しかし左半分を失った巨神兵は再び修復を始めていく。


 「そんなホイホイと修復させてやるかよ!」


 宙に浮いていたタクミが巨神兵失われた左半身に近づいた。そして左半身の傷口を凍らせた。巨神兵の体に集まってきていた土は凍っている傷口には合体できないようだった。


 「この・・・!こざかしいことをしよって!こいつを吹き飛ばせゴーレム!」


「エアーカッター!!」 


 残った右手でタクミを吹き飛ばそうとする巨神兵。しかしその右手は鋭利な刃物で切られたように地面に崩れ落ちる。両手を失った姿になる巨神兵。


 「なんだと!?・・・貴様!いったいどこでそのような魔力を手に入れたんだ!?」


 予想を超えたタクミの反撃に動揺するベルモンド。


 「ふん。俺だって死に物狂いでこの力を使えるようになったんだ!どうやら異世界から来た俺の体にこの世界の魔力は超反応を起こしているようだぜ?」


 「異世界だと・・!?」


 「あぁ。俺はもともとこの世界の人間じゃねーんだよ。だからお前の常識ではからない方がいいぜ!?」


 今度は右腕に大量の炎をまとったタクミ。炎をまとった拳で巨神兵の胴体を力いっぱい殴り飛ばした。

 

 巨神兵の胴体に轟音と共に巨大な風穴が開く。殴られた衝撃でバランスを崩したように後ろに倒れていく巨神兵。


 たまらずベルモンドも地面に投げ出された。ベルモンドが離れると巨神兵はただの土の塊となったようだった。


 「なるほどな。お前が一緒じゃなきゃあのゴーレムも動かないんだな。さて、やっと同じ目線で喋れるな。ベルモンド?」


 投げだされたベルモンドの元に着地するタクミ。


 「あまり調子にのるなよ!私は邪神教徒の中でも狂魔六将の一人として恐れられる存在だ!お前ごときに倒されるわけにはいかないのだよ!」


 ベルモンドは黒マントをめくり右腕の腕輪を見せてきた。そこにはバズドーのネックレスと同じだが欠けている場所が違う六芒星の細工がしてあった。


 「あぁ、狂魔六将ね。同じ狂魔六将でもお前よりバズドーとかいう奴のほうが全然手強かったぜ?お前狂魔六将の中で一番弱いんじゃねーの?」


 「私が一番弱いだと・・?どこまでも私を侮辱しよってぇぇ!貴様はここで絶対殺す!!最大限の痛みを伴わせて殺してやるぅぅぅぅ!!!」


 タクミの言葉に激昂して怒り狂うベルモンド。


 「貴様のような奴にはもったいないが私の本気を見せてやろう!!」


 ベルモンドはそう叫ぶと右手の手のひらをナイフで切った。傷口から赤い血が垂れている。その血を自分の刺青になぞらせるベルモンド。刺青が不気味な光を放っている。


 「我と契約する地の住人よ、我はお前にこの生命力をささげよう!そして最大の力を望もう!その望みを叶えるべくその全てを我に捧げよ!ゴーレム!」


 ベルモンドが叫ぶと、ベルモンドの全身を大量の土が包んでいく。


 「なんだこれ!?なにが起きてるんだ・・!?」


 タクミが目の前で起きていることを理解しようとした時、ベルモンドを覆っていた土が勢いよくはじけ飛んだ。


 「くっ・・・!」


 その勢いにおされるタクミ。


 土がはじけ飛んだ後には先程とは比べ物にならない禍々しい魔力を帯びたベルモンドがいた。


 「クックっクッ・・・これこそが私の本気の魔力だ。こうなった以上もうお前に勝ち目はないさ!さあ覚悟するがいい!」


 ベルモンドが手を動かすと同時に地面から大量の土が巻き上がりタクミ狙い迫ってくる。その速さはさっきの比ではなく、タクミはかわしきれずに直撃してしまった。


 「くっ!・・・なんだこの魔力は!?」


 土に吹き飛ばされたタクミ。


 「フフフ、さっきまでの威勢はどうした?まるで手ごたえがないな。せっかく本気を出したんだ!もっと楽しませてくれよ!」


 再びタクミに迫りくる土の(ムチ)。何本もの鞭がタクミを縦横無尽に攻撃する。


 その一本、一本が強い魔力を備えていてタクミの防御を上回りタクミの体に傷をつけていく。


 「ちくしょう。これは防ぎきれねぇ・・・ならベルモンド本人を早いとこ倒さねぇと!」


 タクミは鞭をかわすことをやめ、先程巨神兵に風穴を開けたように右腕に炎をまとった。そしてベルモンド本人に殴りかかった。


 「くらいやがれ!」


 叫びながら炎の拳をベルモンドの顔めがけて振りぬいた。


 しかし一瞬で強固な壁が地面から現れてタクミの攻撃をさえぎった。


 「無駄だ!今の私はまさに攻防共に無敵なのだからな!そんな攻撃は私に届きはしないのだよ!」


 壁の向こうで勝ち誇ったようにベルモンドが言った。


 「ぐぉ!!」


 次の瞬間、側面から巨大な土の鞭が現れタクミを薙ぎ払った。薙ぎ払われた勢いでローゼの方に飛ばされた。

  

 「大丈夫!?タクミ!?」


 ローゼが倒れているタクミに駆け寄る。横たわっているタクミをローゼ抱き起こした。


 「もう・・いいから。タクミは頑張ったわ!だからこれ以上無理しないで!」


 涙を浮かべタクミに叫ぶローゼ。


 「いてて・・・。いや、まだだぜ!俺はあいつをぶっ飛ばすって決めたんだ。だからここで諦めはしない。ローゼ、お前が諦めてどーするんだよ!お前がここで諦めたらこのウルガンドの皆はどうなるんだよ!?」


 「でも・・・これ以上タクミが傷つくのは見ていられないのよ。どうしてタクミがそこまでしてくれるの?」


 「言っただろ?お前に恩返しするために来たって!俺はあの時ローゼに救われたんだ.だから今度は俺がローゼを助けるって決めてここに来たんだよ。」


 「そんな!あの時のは私のただの気まぐれだったんだから、タクミがそんなに気にするようなことじゃないのよ!だからここま・・」


 「気まぐれでもなんでも!俺がお前に救われたのに間違いはないんだよ!」


 ローゼの言葉をさえぎってタクミが叫んだ。そしてゆっくりと立ち上がる。


 「それに・・・あの時のローゼの行動が気まぐれだったっていうんなら、今俺がこうしているのもただの気まぐれだから気にすんなよ。なっ?」


 ローゼを振り返り微笑むタクミ。


 「・・・タクミ。」


 口を押さえ涙がこぼれるのを我慢しているような表情をしているローゼ。


 「フフフ。お前ら二人とも仲良くあの世に送ってやるから寂しがることはないさ。」


 ベルモンドが二人の元に歩み寄ってきた。


 「さあ、覚悟はできたか?まずは私の事を弱いなどと侮辱したお前からだ!」


 ベルモンドの周りに大量の土の鞭が現れる。その矛先は鋭いドリルのようになっておりタクミを串刺しにしようとごめいている。


 「死ねえぇぇぇ!」


 ベルモンドの怒声ともにタクミに大量の鞭が襲いかかった。

 

 「タクミ!!」


 ローゼが後ろで大声で叫んだ。


 

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