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無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。  作者: 高田 タカシ
第二章 魔法騎士入団編
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二章 14 『ウルガンド攻防戦2 決意』


 観念したゴラとドラは今のウルガンドの状況を白状した。


 その内容は要約すると


 現在、邪神教徒によってウルガンドを占領するために周辺の村から徐々に制圧を行っている。さっきタクミ達が訪れた村もかなり前に邪神教徒によって虐殺が行われた後だった。


 現在もベルモンド率いる軍によってウルガンドに攻撃を行っている。勢力的には邪神教徒のほうが優勢らしくウルガンドが堕ちるのも時間の問題とのこと。


 ゴラとドラの話す内容は、正直卑劣極まりない内容だった。


 レミはあまりのひどさに耳を塞ぎこんでしまったくらいだ。他の魔法騎士団も怒りに震えているといった表情をしている。


 「この・・・クズどもが!!」


 ゴラとドラの自白の後ドズールは怒りを込めてこの言葉を投げつけた。


 「ヒヒヒヒ・・・なんとでも言えばいいさ。今からお前らごときが動いたところで間に合いはしないさ!バカめっ!」


 この言葉にドズールはゴラを殴り飛ばした。殴られた衝撃でゴラは白目をむいて気絶してしまった。


 ドラもアトスの手刀によって気絶させられた。


 「こいつらはアーバンカル魔法騎士団本部に今回の重要参考人として連れて帰るぞ。エリー、レミ、ジークお前らでこいつらをグリドラのところまで連れて行ってくれ。エリー、束縛魔法を最大でかけといてくれ。そして俺とアトス、シュウ、そしてタクミはもう少し情報を集めるぞ。そしてある程度敵の戦力を把握したら一旦アーバンカルに帰還するぞ。」


 「帰還!?なんでだよ!?ウルガンドの人たちは今にも殺されそうなんだろ!助けないのかよ!?」


 ドズールの言葉に驚くタクミ。


 「タクミ・・・お前の気持ちもわからなくはないが、我々は7人だ。そして相手は狂魔六将の一人と都市一つを落とすために用意された軍だぞ!?最初にも言ったが今回の任務はあくまで情報収集が第一だ。一旦アーバンカルに引き返し、戦力を整えてまた助けにくるさ。だからここは堪えてくれ。」


 「・・・引き返してから軍を整えてからまたウルガンドに来るのにどのくらいかかるんだよ?」


 「おそらくはまたウルガンドに来るのは一週間くらいだろうな。」


 「一週間!?そんなに待てるかよ!軍って言ったって、ベルモンドがリーダーなんだろ!?ならあいつを倒せばいいんじゃやねーのかよ!?」


 「たしかに狂魔六将のベルモンドを倒せば軍は統制力は失われ、ウルガンドを救うことになるだろう・・・」


 「なら俺らでベルモンドを倒そうぜ!このメンバーなら難しくないだろ!?」


 興奮のあまりドズールに詰め寄るタクミ。そんなタクミの肩をドズールが両手で押さえた。


 「俺はお前らの隊長だ!ここで無茶をさせてお前らを無駄に死なせるわけにはいかないんだ!いいかタクミ!?これは命令だ!情報を集め次第引き返す!わかったか!?」


 「そんな・・・」


 ドズールの言うことはもっともだった。確かにたった7人でどのくらいかわからない軍に戦いを挑むなんて無茶だ。そのくらいタクミもわかっていた。レミたちも不安の表情でタクミを見守っている。


 しかしさっきのゴラ達の話を聞いてますますローゼのことが心配になってしまったタクミ。


 「タクミ・・・君の気持ちはわかるさ。助けるなら早い方が良いに決まっている。しかし不確かな戦力で挑み敗れてしまっては意味がないのだよ。それは無駄死にも同じだ。それにここで私たちが全滅してしまったら誰がこの情報をアーバンカルに持ち帰るんだい?それこそ誰一人として救うことは出来なくなってしまう・・・だからタクミここは我慢してくれ。」


 アトスがタクミの背中に手を当て諭すように話しかけた。


 「・・・わかったよ。ここはおとなしく命令に従うよ。」


 覚悟をきめた表情でタクミが返事をした。


 「ありがとう。つらいだろうが、ここは我慢してくれ。」


 アトスが軽くタクミの背中を叩いた。


 「よしっ!では先程話した通りの作戦で行くぞ!タクミ達は俺についてこい!」


 ドズールの合図で二手に分かれて行動を開始した。


 森の中を進んでいくタクミ達4人。何か更なる情報を掴もうと森を走り進んだ。


 森の中でさらに二手に分かれた。ドズールとシュウ、アトスとタクミのペアで森の探索を進めていく。


 「・・・タクミ君、さっきは良く堪えてくれたね。」


 アトスがタクミに話しかける。


 「・・・・・ああ。俺覚悟決めたよ。」


 「必ず軍を引き連れてウルガンドの・・」


 「俺一人で行くよ。」


 アトスの言葉をさえぎるようにタクミが決意を伝えた。


 「なに!?君は自分の言ってることがわかってるのいかい!?」


 驚きのあまり歩く足を止めてタクミに問い直すアトス。 


 「わかってるさ。たしかにアトスさんの言うこともわかるよ。たしかにこの人数で一つの軍に挑むのは無茶だ。そして情報を持って帰るのも大事なのもわかる。」


 タクミも足を止めてアトスの目をまっすぐ見て答えた。


 「なら、なんでそんな答えにたどり着くんだい!?」


 「アトスさん・・・俺、頭ではわかってるんだよ。でもどうしてもここでアーバンカルに帰ることは

出来ないんだ。どうしても助けたい奴がいるんだ。なんだろう・・・きっとここでアーバンカルに帰ったらもう間に合わない気がするんだ。だから情報を持って帰る任務はアトスさんたちに任せるよ。だから早く援軍連れてきてくれよ!」

 

 「いったい何を・・・」


 「ブラックアウト!!」


 アトスの言葉を待たずにタクミは煙幕魔法を唱えた。辺りが一瞬で黒煙に包まれる。


 「タクミ君!!待つんだ!!」

 

 黒煙の中でアトスが叫ぶ。しかしタクミはフライを使い空へと飛びあがった。


 「悪いなアトスさん、説教は後でいくらでも受けるからさ。」


 そういうとタクミはウルガンド目指して飛んだ。途中でドズールとから預かった魔法石から声が聞こえてきた。ドズールの声だ。


 「タクミ!!なにをやっとる!!命令違反だぞ!!戻・・・」


 たいそうご立腹の様子だった。しかし途中で通信を切った。


 「俺はどうしても行かなくちゃダメなんだよ。だから悪いなみんな・・・あーあ、これで俺も魔法騎士団クビになっちまうかもな。就職一日目でクビとかどんだけダメな奴なんだよ、俺は。ハハハ・・」


 「待ってろよローゼ。今助けに行くからな・・・ベルモンドの奴も俺がぶっ飛ばしてやるからな!」


 タクミは今まで生きてきて一番の決意をしてウルガンドを目指して飛び続けた。



 


 

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