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無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。  作者: 高田 タカシ
第二章 魔法騎士入団編
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二章 7 『狂魔六将』


 「ふう・・・正直ここの野党どもは手応えが無さすぎてね。今日はなんだか物足りない感じがしていたのだけどまさかこんなところでお目にかかるなんてね?狂魔六将(きょうまろくしょう)の一人、重力魔法使いのバズドーさん?」


 ジュエルが地面にささった槍を引き抜きその矛先を男に向ける。男は微動だにしない。


 「お、おい!ジュエル!そいつは俺の獲物だぞ!いきなり横取りすんな!」


 「やれやれ・・君が無知なのは知っていたがここまでとはね。」


 少し振り向きあきれたようにジュエルが言う。


 「いいかい?この男は邪神教徒の幹部の一人だよ。なんでこんなところにいるのかはわからないけどかなりの大物には違いないんだよ。それこそ討伐すれば殊勲を与えられるレベルのね」


 ジュエルの視線がタクミからバズドーへと向けられる。


 「その槍に、その黄色の髪。そうかお前が槍使いの名手として名高いジュエルか。なかなか面白いものに出会ったものだ。」


 バズドーは不敵な笑みを浮かべている。


 「僕のことを知っているなんて光栄だな。しかしここで僕に出会ったのが君の運のつきだね。魔法騎士団としての初仕事が狂魔六将の討伐というのも悪くないものだ。さて覚悟はいいかな?」


 「いまこの戦場においてその力を我に捧げよ!オーディン!」


 タクミの時と同じように神の力を宿すジュエル。辺りに魔力が満ち溢れている。


 「ふふ・・神の力を宿す者か。存分にその力見せてもらうとしよう!」


 再び無数の黒い球を出現させるバズドー。臨戦態勢の二人、タクミは完全に蚊帳の外といった感じだった。


 「コラー!俺の事無視して勝手に始めてんじゃねー!ジュエルも俺の手柄横取りしてんじゃねーよ!」


 「君は下がっていた方が身のためだよ。さっきも見ていたけど一方的にやられていただけじゃないか?」


 小さく鼻で笑うジュエル。この態度にカチンとくるタクミ。


 「やかましいわ!今から反撃するとこだったんだよ!ドラゴンフレイム!」


 炎龍を再び召喚するタクミ。


 「どうでもいいけど僕の邪魔だけはしないでくれよ。」


 やれやれといった感じのジュエル。


 「私は二人相手でも一向にかまわないからかかってくるがいいさ。脆弱な魔法騎士ども。」


 余裕の笑みを浮かべるバズドー。この言葉にはタクミとジュエル二人がカチンときた。 


 「コノヤロォ・・いってくれるぜ。いけ!」


 炎龍をバズドーに向け放つタクミ。それを今度はジャンプでかわすバズドー。


 飛んだ先に待ち構えていたジュエル。その槍をバズドーに振り下ろす。しかしこの刃を黒い球を変形させた盾のようなものでいなしてジュエルを地上に蹴り落した。


 「ぐっ!」


 蹴られたジュエルは槍で受け身を取り地面への直撃を逃れた。


 「大丈夫か!ジュエル!?」


 「このくらい問題ないよ。僕の心配はいいから自分のことに集中したほうがいいよ。」


 「この程度なのかい?魔法騎士団の力とやらは。まったく期待外れだよ。」


 宙に浮いたまま二人を見下ろすバズドー。


 「あまり長く時間をかけるわけにはいかないのだよ。・・私の前に平伏(ひれふ)すがいい。」


 バズドーが上から抑えるように右手をおろす。


 タクミとジュエルが見えない何かに抑えられるように地面に手をつく。


 「クソっ!またこれかよ・・芸がないぜ!おらぁ!」


 ふたたび魔力をみなぎらせバズドーの重力魔法を打ち破ったタクミ。


 「これでもくらいな!爺さん直伝のとっておきだ!ホーリーレイピア!」


 タクミが呪文を唱えると辺り一面に光の刃が現れた。その全ての矛先がバズドーを向いている。


 「ほう・・聖魔法か。これはなかなか厄介なものだ。」


 「逃がさねーよ!いけ!」


 タクミの合図で光の刃がバズドーへと降りそそいだ


 光の刃の追撃をかわすように空を飛び回るバズドー。黒い球と刃がいくつもぶつかり白煙がまきあがる。


 「ちっ、これでも直撃しねーのかよ。どんだけすばしっこいんだよ!」


 「いや君は良い仕事をしたよ。僕のために・・ね!」


 白煙の中にジュエルの姿があった。その槍の矛先に魔力をみなぎらせているのがわかる。


 「この一撃は重いよ?覚悟してね・・聖槍一閃グングニール!!」


 ジュエルがその刃をバズドーに思いっきり振り下ろした。


 バズドーの影が地面に叩きつけられるのが見えた。落ちてきた衝撃で砂埃が上がりバズドーの姿が見えない。


 ジュエルも地面へと着地した。砂埃をその槍で薙ぎ払う。バズドーの姿が露わになった。


 その姿は、腕から少し血を流していたが致命的といった感じではなかった。


 「ハハハ・・まさかこの私に血を流させるとはね。こんなことはいつぶりだろうか。こんな楽しい戦いは久しぶりだよ。」


 血を流していてもその余裕ぶりは変わらなかった。


 「いまのでも仕留められないとは・・さすがは狂魔六将といったところかな。だけど次は逃がさないよ。」


 ふたたび魔力をみなぎらせ矛をバズドーに向けるジュエル。 


 「そんなに悔しがることでもないさ、今のは直撃していたら私とて危なかっただろう。」


 「俺も次は外さねーぞ?覚悟しろよ!」


 タクミが再び光の刃を出現させようとした時、バズドーに向かって雷が落とされた。


 これを黒い盾で防ぐバズドー。


 「大丈夫か!?二人とも!」


 声の先にドズールがいた。その後ろにはレミたちもいた。


 「あぁ!俺たちは大丈夫だ!それよりも気をつけろ!こいつ結構やるぞ!」


 「わかっとるわい!お前たちの姿が見えないから探してみれば、まさか狂魔六将と戦っておるとは・・しかしよくやった。あとは任せろ!」


 ドズールの他の正魔法騎士団も集結しているようだった。

 

 「邪神教徒の幹部の一人バズドー。お前には聞きたいことが山ほどある。ここでおとなしく我らに捕まってもらおうか。」


 ドズールがその体に魔力をみなぎらせているのがわかる。威圧感がすごくタクミもおもわず息をのんだ。


 「やれやれ・・ここからが楽しいところだったのに。邪魔が入っては興ざめだよ。あいにくだがまだ私はやらないといけないことがあるので、ここで捕まるわけにはいかないのだよ。」


 そういうとバズドーは空間にゲートのようなものを出現させた。


 「残念だが、この続きはまた違う機会にするとしよう。さらばだ魔法騎士団の諸君。」


 そういうとバズドーはゲートへと入ろうとした。


 「逃がすわけにはいかんのだ!」


 ドズールが雷のような電撃をバズドーに放った。すさまじい速さだったが雷の落ちた後には黒焦げになった地面だけがありバズドーの姿はどこにもなかった。


 「逃したか・・・まったく神出鬼没な奴等だ。邪神教徒め。」


 取り逃したことが悔しそうなドズールだった。レミがタクミの元へ駆け寄ってきた。


 「タクミー!大丈夫!?ケガしてない??」


 心配そうにタクミの体をみるレミ。


 「あぁ。大丈夫だ、特に大きなケガはしてねーよ。」


 「そう。良かったぁ!まったく狂魔六将と戦うなんて無茶しすぎだよ!ジュエルもだよ!」


 レミの言葉にふぅっとため息で返すジュエル。


 「わりぃわりぃ!そんなつもりなかったんだけどよ。まぁ結果的に追い払ったんだから結果オーライってことで勘弁してよ。」


 手を合わせレミに頭を下げるタクミ。後ろからドズールが肩をたたく。


 「まぁ無事でなによりだ。二人ともよくやったな。この村の野党も制圧したことだし我々は帰ることとしよう。」


 野党どもは村の広場に一か所に縛られていた。その中には野党のリーダーのような者の姿もあった。


 「あれ?もしかしてあいつがここのリーダーだったの?」


 縛られていた野党を見てタクミがレミに聞いた。


 「そうだよ!せっかく私が捕まえたのにタクミいなくなってるんだもん。まったくどこに行ったのかと思えばまさかの狂魔六将と戦ってるし・・・いくら手柄が欲しいからって無茶しすぎだよ!」


 まだご立腹の様子のレミ。


 「アハハ・・・悪かったって!そんなに怒んなって!」


 「まったく・・もう!」


 頬を膨らませるレミ。


 「ガハハ!二人ともそんな喧嘩するなって!レミも無事だったんだからもう許してやれ。・・それじゃあアーバンカルに帰還するぞ!」


 こうして初任務を終えたタクミ達は再びグリドラの待つところに戻りアーバンカルへの帰路についた。


 


 

 





 

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