二章 4 『脅威』
あの槍・・・さすがにまともに喰らったらいくら防御魔法をしてるとはいえ危ないな。
ジュエルの持つ槍が放つ禍々しいオーラを見て、危機感を持つタクミ。
「そんなに怯えなくても殺したりしないから大丈夫だよ?ルールだしね」
タクミの様子を感じ取ってか、ジュエルが余裕の笑みを浮かべている。ルールで決められてなければ殺せるってか?
「別に怯えてなんかいねーよ!ただ初めて見る魔法だったから驚いただけだ!」
ジュエルの言葉に強がるタクミ。
「そうかい?なら・・・思いっきりいくよ!」
槍の矛先をタクミに向け突進してくるジュエル。ジュエルの走った後の地面が突進力により大きくえぐれていき、凄まじさを物語っていた。
迫りくる槍をギリギリでかわすタクミ。矛の部分には触れていないのに頬が少し切れ血が垂れた。
「へぇ・・・今のも避けられるんだね。やっぱり君凄いじゃないか。こんな相手に巡り合えたのはいつぶりだろう・・・気持ちが高揚するのはひさしぶりだよ!」
強い相手に巡り合えたからなのか嬉しそうなジュエル。その気持ちに比例するようにジュエル自身の魔力も勢いを増しているのがわかる。
タクミがジュエルの槍をかわせるのは、防御魔法以外にも肉体の動きを超人レベルに高める魔法を自分にかけていたからである。
しかしそれでも紙一重でしか避けられなかった。そこからジュエルの能力の高さがわかった。
「ふぅ・・・これでギリギリかよ。このまま防戦一方になるのはマズイな。とりあえずあの突進はやばい・・・ならこれかな!」
タクミは炎龍を消して地面に手を置いた。
「くらえ!アイスウォール!」
タクミとジュエルの間に地面から無数の氷の厚い壁が現れた。
「これでちょっとは突進力もさが・・・っ!?」
壁を作り出し安心したのも束の間のことだった。一瞬で目の前の氷の壁が粉々に砕かれた。その隙間から槍の矛先がタクミ目がけて向かってくる。
またも間一髪のところで、魔障壁で防御したが突かれた衝撃で後ろに吹き飛ばされた。
「っつう・・・マジで猪みてーな奴だな!」
「はは。あの程度の壁じゃオーディンの力を宿したこの槍は止められないよ。しかし今のは仕留めたと思ったんだけどな。本当に君みたいな人は初めてだよ。いったい今までどこにいたんだい?」
「ふん、ちょっと爺さんの道楽に付き合ってどっかの秘境に引きこもってたんだよ!」
「なにそれ?・・・まぁいいや。でも次は外さないよ?」
またタクミにむけ、槍を構えるジュエル。
「やかましいわ!俺ももう頭にきたわ!テメーは絶対一発喰らわせてやるよ!」
タクミも魔力を高めさらに巨大な炎龍を呼び出した。タクミの周りを炎龍がうごめいている・・・ジュエルの突進に備えるタクミ。
しばらく二人に沈黙が続く。お互いが動き出す瞬間に全神経を注いでいた。そしてまさにお互いがぶつかろうと動こうとした時
「そこまでぇ!!」
ドズールのけたたましい声が闘技場に響いた。
しかしタクミとジュエルに終了を告げる声は届いてないようだった。
「うおぉおおおお!!」
タクミとジュエルがドズールの声に気づかずお互いの魔力をぶつけようとしたとき、二人の間に一人の男が割り込んだ。
右手の剣でジュエルの槍を受け止め、左手でタクミの炎龍を受け止め消滅させた。
その男は先ほど試験の初めに挨拶していた魔法騎士団団長クリウスだった。
「二人とも熱くなるのは構わないが、一次試験はもう終わりだ」
槍を受け止めていた右手の剣を鞘に納めた。
突然の出来事に呆気に取られていたタクミだが我に返り、周りを見れば戦っている者はいなかった。
ジュエルも降魔術モードを解除していた。
「魔法騎士団長様、失礼しました」
冷静さを取り戻したジュエルが深々と頭を下げた。
「うむ・・・そちらの君はどうかね?」
クリウスの視線がタクミに向けられる。
「あ、すんません」
その威圧感におもわず謝るタクミ。
「わかればよろしい。試験に全力で取り組む姿勢は評価するが、周りが見えなくなるのは良くないな。以後気をつけるように」
そう言うとクリウスは背中のマントをひるがえし闘技場から出て行った。
「さて、大いに盛り上がったようだが今闘技場に残っている者が一次試験の合格者だ!」
ドズールが試験の結果を告げる。
それを聞いて改めて周りの状況を確かめるタクミ。
300人を超える受験者がいたが、最終的に闘技場に残っていたのは20人といなかった。
残った者たちも様々だった。まだ幼いであろう少年に女の人もいた。
「・・・とりあえず俺も一次試験は受かったみたいだな」
状況を把握して一安心するタクミ。
「邪魔が入ってしまったね。この続きはまたどこかでつけよう」
ジュエルは笑いながらもその挑発的な言葉を残して、振り向きタクミから離れていった。
「あのヤロー・・・とりあえず今回の事は忘れないからな!そして・・・」
タクミはクリウスの事を思い出していた。
かなりの魔力をこめた炎龍を片手で止められたことは正直屈辱だった。
「あれが魔法騎士団の団長の力か・・・上等じゃねーか。あいつもいつかリベンジしてやるよ!」
「やぁ、君の魔法すごかったね!」
タクミがクリウスへのリベンジを決意していた時、背後から不意に声をかけられた。
そこにはオレンジ色の髪をかき上げ近づいて来る女がいた。
「・・・え?あぁ、ありがと。えーっと・・・?」
「せっかく褒めてあげたのにそっけないなぁ。私はレミ!よろしくね。君の名前は?」
レミと名乗る女も一次試験を突破した者のようだ。民族衣裳のような服を着ていた。腕にはいくつもの腕輪のようなものをしており、おそらく二十才前後といったところだろう。
「俺はタクミっていうんだ」
「タクミか!見てたけどスゴイ魔法使えるんだね!いったいあんなのどこで覚えたの?!?
「まぁ・・・色々とあってな。そんな凄いなんて、レミだって試験残ったんだからそんな変わんねーだろ?」
「アハハ。そんなことないよ?タクミとジュエルの戦いは他の受検者の戦いとはレベルが違ってたよ。わざわざ魔法騎士団団長自らが止めにはいったくらいなんだから!」
「そうなの?ってかレミはジュエルの事知ってんの?」
「うん、知ってるよ。ジュエルは槍の名手として有名だからね。それに降魔術で神レベルの力を自分に宿すことのできる人はそんなに多くないしね。そしてそのジュエルと互角に渡り合ったタクミも注目の的だよ!」
「やっぱりあいつ凄い奴だったんだな。って俺も注目されてんのかよ・・・」
「そりゃもちろん!あれだけの戦いをしたら当然でしょ!」
レミがニコッと笑う。八重歯がちらりと見えた。
「なぁ、試験ってだいたいどのくらいあるんだ?」
「うーん、毎回バラバラなんだけど、だいたい2,3個くらいじゃないかな?多い時は5回くらいある時も過去にあったって話だけど」
「マジかよ・・・そんなにあるのかよ!魔法騎士団に入るのも大変なんだな・・・」
「そりゃあね!魔法騎士団に入るのは栄誉あることだし、いろいろと優遇されることもあるしね。」
「優遇?」
「たとえばあの魔法騎士団の制服を着ていればほとんどの街に無条件で出入りすることが可能になるし、他にも宿が安くなったり・・・」
「マジか!?あの制服着てるだけでいちいち身分証みせたりする必要もなくなるんだな?」
レミの言葉に食いつくタクミ。
「え?う、うん、そうだよ。そんなにそこに惹かれるなんて君なんだか変わってるね」
変人を見るかのような目でレミがタクミを見る。
「まぁまぁ!とりあえずお互い合格できるように頑張ろうな!」
「そうだね。それじゃっ!」
手を振り去っていくレミ。
「では一次試験を通過した者は場所を移動してもらおうか。私についてきたまえ」
ドズールのが高台から闘技場に飛び降りてきた。
ドズールの後ろを一次試験合格者がぞろぞろとついていく。
着いていった先には大部屋があり、そこに全員案内された。




