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無能な俺がこんな主人公みたいなことあるわけがない。  作者: 高田 タカシ
第一章 ~プロローグ~
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一章 13 『出会いと別れ』


 「・・・ん・・・うーん、もう朝か?」


 窓からさしてきた朝日で目を覚ますタクミ。どうやら今日も空は快晴のようでなによりだ。


 昨日あれからは何もなかったようだった。というか熟睡しすぎて何かあったとしてもきっと気づかなかっただろう。


 「あの、マルクさん昨日はあれからは何もなかったんですよね?」


 「えぇ、あの後は静かなものでしたよ。なのでご安心ください。」


 一応確認してみたが、やはり何もなかったようで安心した。


 「タクミ?起きたー?入るわよ」


 部屋のドアが開き、ローゼが入ってきた。もう身支度をすませているようで見慣れた白いローブに着替えていた。


 「お?ちゃんと起きてるみたいね。感心、感心。」


 まるで母親かのような口ぶりである。部屋に入ってくるとマルクの寝ていたベッドに腰かけた。


 「まぁ、今起きたとこなんだけどな」


 「あら、そうなの。道理でまだだらしない顔してると思ったわ」


 「この顔は生まれつきだ。ほっといてくれ」


 「アハハ、まぁそれはそれとしてお腹すいたからご飯にしましょう。早く用意して出発するわよ。それじゃあ、外で待ってるからね。」


 見た目の体の大きさからは想像できないほど食事に貪欲である。てっきり昨日のことを色々聞かれると思ったが、意外にもローゼは何も聞いてこなかった。


 正直何も聞かれないのは助かった。自分のせいで余計な手間を取らせてしまい危うく危険な目に巻き込むところだったかもしれなかったのだ。負い目が無いと言えばウソになる。


 タクミは身支度を整え外で待つローゼと合流した。


 「で、一応聞くけど、どこに行くんだ?」


 「そんなの決まってるでしょ?シャンバルよ!私アーバンカルであのお店以外行かないんだから!」


 「やっぱりか。まぁ予想はしていたけどな」


 「なに?あの店に不満でもあるの?ねぇ?」


 「いやいや!もちろん文句なんてあるわけないだろ。喜んでいくよ!」


 ローゼが不機嫌になりそうだったので慌ててフォローした。どうやらシャンバルの悪口はタブーのようだ。今後気をつけよう。


 「ならよろしいわ。なら出発しましょうか!」


 ご機嫌になったローゼが子供のように腕をブンブンふって歩いていく。右手にある紋章がタクミの視線に入ってきた。


 あれ・・・昨日はあんなに光ってたんだよな。あの紋章にどのくらいの力があるんだろうな・・・


 紋章に見とれていたタクミ。その視線にローゼが気づく。


 「あ、これ?そんなに気になる?」


 「あ・・・いや昨日はなんか凄かったなって思い出して、ついな」


 「驚いたでしょ?あれが力を解放した紋章術よ。そしてこれがベルトール家に伝わる魔法なの」


 「あぁ、正直驚いたよ。あんな凄い魔法使えるなんてローゼって実はすごい奴なんじゃないのか?なんか昨日の奴もローゼのこと知ってたみたいだし・・・」


 「そうね。私の家系は代々炎の魔法を引き継いで行くしきたりがあるの。私がベルトール家の16代目になるのだけど歴史がある分、普通の魔法使いよりは有名なのかもしれないわね」


 笑顔で答えるローゼ。名家を継いでいくというのは大変なこともきっと多いんだろう。しかしローゼの笑顔からはそんな苦労はいっさい感じることはないものだった。


 「やっぱりそうなのか。すまない、俺のせいで変な奴と関わることになってしまって・・・・」


 「タクミが謝ることじゃないわよ。悪いのは魔法を使って良からぬことをしようとする連中なんだから。それにああいう連中とはいずれ対峙する時が来ただろうし、むしろタクミのおかげで早くあいつらの存在に気づけたことに感謝してるくらいよ!」


 炸裂するローゼの無邪気スマイル。


 ローゼの優しさが嫌というほど伝わってくる。そして自分の無力さがさらに情けなくなってくる。


 昨日も自分が魔法さえ使えていたら、なんの問題もなかったのだ。


 いくら自分自身にすごい力が秘められていようが、それをいざというときに使えなければ何の役にも立たない。タクミはそれをまさに実感したのだ。


 「おいっ!人にぶつかっといてなんもなしか!?じいさんよ!?」


 タクミが感傷に浸っているときに遠くから何やら叫び声が聞こえてきた。


 どうやら脇から入ってところ路地でガラの悪い3人組とおじいさんが揉めているらしい。


 「おいおい・・あんな爺さん相手にあんな・・・」


 タクミが言い終わる前に、ローゼがその爺さんの所に走っていった。タクミとマルクも後を追う。


 あぁ・・やっぱりマルクの言っていたことは本当だったんだ。この子は困っている人を見過ごすことはできないんだな。


 迷いなく走っていくローゼの後姿を見てタクミは思った。


 「コラー!あんた達お年寄りになにして・・・っ!?」


 目の前の状況にローゼが言葉を詰まらせた。


 なんとチンピラ三人が急にバタバタと地面に倒れていったのである。


 「え?急に・・・どういうこと?」


 呆気にとられるローゼ。


 「なーに、どうやら話が伝わらぬようだったんでな、少し眠ってもらってたんじゃよ」


 くるっと老人がこちらを向く。身の丈はローゼよりもさらに小さく見た目は60は過ぎているであろう。

しかし服の上からでもわかるしっかりした体格をしていた。顎には白い長い髭が生えていた。そしてその瞳はとても老人とは思えぬ鋭さを兼ね備えていた。


 「おや、お嬢さんたちはワシのこと助けに来てくれたのかの?ならおとなしく助けてもらっとけばよかったのかの。ホッホッホッ・・・」


 髭をさすりながら笑う老人。


 「いえ、無事ならよかったわ。・・・って、あなたはもしかして・・・?」


 老人の顔を見て何やら気づいたローゼ。


 「間違ってたらごめんなさい!あなた様はもしかして・・・エドワード大魔導士様じゃないでしょうか?」


 「ホッホッホッ。お嬢さんお若いのによくご存じじゃな。その手の紋章・・ベルトール家の者かの?」


 「そ、そうです!私はベルトール・ローゼと言います。お会いできて光栄です!」


 二人のやり取りにすっかり置いてきぼりのタクミ。ただローゼの振舞いからこの老人がなにやら凄い人なのはわかった。


 「して後ろの二人はお付きの人かの?」


 エドワードの視線がこちらを向く。


 「えぇ。・・・こちらのマルクは私の付き人です。そしてこっちのタクミは・・・えーと・・・」


 ローゼがタクミの紹介に言葉をつまらせているといつの間にかエドワードがタクミの目の前に移動してきていた。


 「ほう・・・こっちの青年はなにやら面白いものを持っておるのう・・・お主、さてはこの世界の人間ではないな?」


 エドワードの鋭い視線がタクミに突き刺さる。まるですべてを見透かされているかのようである。


 「え!?なんでそんなことわかるんだよ!?」


 「こら!タクミ!エドワード様になんて口の利き方を!」


 「ホッホッホッ、別に良いんじゃよ。してタクミと言ったかの?さっきの質問じゃが、それはお主の中の魔力を見れば一目瞭然じゃよ。わしが昔会ったことのある者にそっくりなんじゃよ。そしてその者も異世界から来たと言うておったしな」

 

 まさかの異世界人接触経験者との遭遇である。さらにエドワードは続ける。


 「そしてタクミよ。見たところによるとお主はまだその力を使えぬようだな?」


 「その通りだよ。なんでそんなことまでわかるんだよ?爺さん何者だ?」


 「タクミ!またそんな口の利き方を!いい!?エドワード大魔導士様は凄い人なのよ!」


 ローゼが目くじらを立てている。


 「すごい・・・?」


 「そうよ!エドワード様は数々の魔法を新たに発明されて、かつては魔法騎士団の団長まで(つと)められてた方なのよ!」


 「魔法騎士団団長!?この爺さんが??まじかよ!?」


 正直信じられぬという目でエドワードを見るタクミ。


 「ホッホッホッ。それも昔の話じゃよ。そしてタクミよ、お主魔法が使えるようになりたくないか?」


 「え!?」


 思わぬエドワードの言葉に声を合わせ驚くタクミとローゼ。


 「そりゃ、もちろん使えるようになりてーよ!でもそんなこと出来るのかよ!?」


 「もちろん。わしについて来れば可能じゃろうよ。ただ場合によってはかなり厳しい修行になるかもしれんがんな。ホッホッホッ・・・」


 あいかわらず髭をさすりながら笑うエドワード。


 エドワードの言葉を聞き悩みこむタクミ。


 魔法がつかえるようになる・・・


 まさに願ったりもしない提案だ。ついさっき魔法のつかえぬ無力さを思い知ったばかりなのだ。


 厳しい修行・・・


 この言葉がタクミの中で引っかかっていた。


 今まで修行なんてものはもちろんしたことなどない。修行どころか小さい時は部活の練習すらサボってしまっていたような人生を送ってきたのである。


 俺にそんなこと出来るのか・・・?


 考え込み黙り込むタクミ。


 その様子を不安そうに見つめるローゼ。その表情にタクミが気づく。


 あぁ・・・そうだ。ローゼは優しいからな。きっとこれからも俺が隣にいればなんだかんだきっと助けてくれるだろう。だが、それはまた危険なことに巻き込むことになっちまう・・・


 タクミの中で答えは決まった。


 「頼む!俺に魔法を教えてください!」


 エドワードに深々と頭を下げるタクミ。


 「ホッホッホッ、いいんじゃな?さっきも言うたがきつい思いをするかもしれないんじゃぞ?」


 「あぁ、それでもかまわない。どんなきつい修行がまっていようとも乗り越えてみせるよ!だから俺を立派な魔法使いにしてくれよ!」


 タクミの瞳に迷いはなかった。


 「タクミ・・・ホントにそれでいいの?たしかに魔法を使えるようになるのは大事だけどもっと良く考えた方が・・・」


 ローゼが心配そうに尋ねる。


 「あぁ!俺・・・決めたよ。今まで嫌なことから逃げて生きて来たけどよ、今回は逃げちゃいけない気がしたんだ。なんの取柄もない俺だけど、この世界なら変われるかもしれないんだ。だからきつい修行だろうと、俺はこの爺さんに教えてもらうことにするよ。なんか散々世話になった挙句なんの礼もできずに悪いけど今回のお礼は立派な魔法使いになった時にきちっと返すことにするからその時まで待っててくれるか?」


 「そう・・・わかったわ!タクミが決めたことならもうこれ以上なにも言わないわ。タクミからの恩返し期待して待ってるわ。頑張ってね!」


 またいつもの笑顔に戻ったローゼ。その様子を見てタクミも安心した。


 「ホッホッホッ、覚悟が決まったようじゃな。ではタクミはワシと一緒について来てもらうぞ。ではお嬢さんと付き人の人とはここでお別れじゃな」


 「ああ!絶対に魔法を使えるようになってやるよ!」


 エドワードの隣に立ちローゼ達の方を振り返る。


 「ローゼ!ホントに色々とありがとうな!マルクさんもお世話になりました!二人のおかげでホントに助かったよ!またどこかで会おうな!」


 「えぇ!タクミも元気でね!」


 「お体に気をつけて」


 ローゼが手を振りマルクは頭を下げた。


 「ではお別れも済んだようじゃな。ではゆくぞ?」


 「あぁ!」


 エドワードが指を鳴らす。その右手に青い宝玉のついた杖がどこからか現れる。


 「ほいっ」


 現れた杖の先を地面にコンコンと二回つく。


 次の瞬間、タクミとエドワードの姿は路地から消えていた。


 「行ってしまいましたな・・・」


 「えぇ、でもタクミならきっと大丈夫でしょ!短い付き合いだったけどなんとなくそう思うわ」


 こうしてタクミは短くも一緒に旅をした二人と別れ魔法を覚えるべくエドワードの下で修業することになったのであった。


 

  


 

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