第984話 エルヴィス家に報告。4(今後の日程。)
「タケオはどのくらいで王都に行くと言っていたかの?」
「会った際に6日後にニール殿下領、1日休んで、さらに6日後に王都の予定との事です。」
彩雲が答える。
「ふむ・・・彩雲がここまで5日だから・・・ならあと8日後じゃの。
なら彩雲の出立は5日後にしようかの。
王都の西の町で待機してタケオにも初雪達の行動を伝えた方が良いじゃろう。」
「はい。
わかりました。」
彩雲が頷く。
「では。試験小隊の方々には8日後にご主人様達が王都に到着予定と伝えて予定を立てて貰います。」
ジーナが伯爵に言う。
「うむ。
そうしてくれるかの。
確か・・・緊急時の強行軍の練習と言っていたかの?」
「はい。
2日で行くと言われております。
初雪を乗せるのはご主人様の馬にあった革製バックで良いかと思われます。
もう一つ用意して初雪の服を入れれば良いかと。」
ジーナが頷く。
「そうじゃの。
あとで足らなければ王都で調達すれば良いしの。」
「はい。
明日の朝一で伝えて来ます。」
「うむ。頼むの。
そう言えばタケオからステノ技研への依頼も書かれていたかの?」
エルヴィス爺さんがフレデリックを見る。
「はい。
ステノ技研というよりも小太刀の予備から1本持って来て欲しいとの要望ですね。
あとでジーナにタケオ様の書斎から出して貰おうかと考えていました。」
「うむ。それで良いかの。
そう言えばジーナにはステノ技研から警棒の試作品が来たのだったかの。
使ったかの?」
「はい。
マリとの剣術の修練の際に使い始めています。」
「何回壊・・・取り替えたのかの?」
「5回程です。
現状では魔眼を発動してから打ち込みをすると1回でダメになります。
なので改良を依頼中です。」
「う・・・うむ。
元々消耗品じゃから耐久力は低くても良いのじゃが・・・3回くらいは耐えて欲しい物じゃの。」
「はい。」
ジーナが頷く。
「あ。ジーナちゃん。
現状の警棒をタケオ様に渡さないといけないですね。
もしかしたらタケオ様の思っている警棒と違う可能性がありますから意見を聞かないといけません。」
「はい。その通りかと思います。
こちらも明日にでもステノ技研に行ってご主人様に持って行って貰う警棒を依頼しておきます。」
「うん。
お願いね。
と。あとこっちからタケオ様に教える事はないですかね?」
アリスが腕を組んで考える。
「そうじゃの・・・
ヴィクター。研究所はどうなっておるかの?」
「はい。
室内の間取りは決まりましたので建て方が始まっています。
喫茶店についても大まかな調理具の選定は終わっています。
内装やテーブル等々はもう少し出来上がってから料理長達が決めるとの事で検討をされています。
また各種扉や内壁等の内装については主の承認待ちです。
本棚や執務机については親方達とハワース商会の方々と打ち合わせをしています。
こちらは数案を出して頂いていますが、まだ最終候補にまで至っていません。」
「ふむ。
アリス。タケオは意匠が濃過ぎないのが良いと言っておったのじゃな?」
「はい。
ご自身の書斎のように意匠には拘りは無いようです。
ですが、タケオ様も組織の長としてある程度は意匠を凝らないといけないとは思っています。
なので応接室も含めて家具は貴族経験のあるヴィクターに一任すると言っています。」
「ふむふむ。
フレデリック。案は見たかの?」
「はい。2日前にヴィクターと総監部にて打ち合わせは行いました。
何案かありましたがどれも良いかと。
ただ・・・主とは趣向が少し違いますね。」
「ハワース商会のモニカ様に聞いた所、傾向としてここ最近は意匠が薄くなっているように見受けられるとは言われています。」
「ふむ・・・流行りは時代や当主によって変わるからの。
致し方ないじゃろう。
スミスの時代はまた違う意匠が流行るかもしれぬしの。」
「そうですね。」
「僕の時代かぁ・・・
王城のは意匠が凝っていましたけど、うちの屋敷内にはあまりゴテゴテしたのないですよね?」
「ないの。」
「ないですね。」
スミスの疑問にエルヴィス爺さんとフレデリックが頷く。
「わしはそもそもそこまで意匠が凝っているのが良いとは思っておらんのじゃ。」
「?・・・でもフレデリックがヴィクターと研究所の案を見た時にお爺さまと違うと言ったのですよね?
違うのですか?」
「ええ。
主は意匠は最低限で良いという考えで、タケオ様は元々いらないんだけど外聞の為に最低限は入れておいてと言っているんです。
結果、同じ様な発注になるのですが、そもそもの考えが違うので結果が変わってきます。」
「そうなのですか?」
「ええ。
紋様とかですね。
何をモチーフに作るかによって変わるのです。
例えば主は木や森をイメージして最低限の意匠を施してきますが、タケオ様は無地が好きと言われてそこに意匠を施すので・・・職人が悩むのです。」
「つまり?」
「つまりはタケオ様用は何を題材にして意匠を作って良いのかがわからないのです。
何か題材があれば統一感を出せるのですけど・・・拝見した案は全て別々の題材で作られているんです。
これが主なら似たような意匠を数案持って来てその中から選べば良いとなるんですけど。
これは職人泣かせでしょうね。」
フレデリックがため息を付くのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。