第974話 115日目 もうすぐ関なんだけど。(歓迎会?)
武雄達がウィリプ連合国 ファルケ国の関に向かって移動をしていた。
周りは背の高い草一面にある草原があり、森も見えている。
「・・・?・・・」
幌馬車の荷台でボーっとしていたビエラが何かに気が付き御者台の後ろから顔を出し、左方向を見る。
「どうしましたか?ビエラ殿。」
ベイノンとブレアが御者台で運転しているのだが、ブレアが聞いて来る。
「あ~・・・あ!」
ビエラが少し大きめな声を出すと武雄の所からミアがやって来る。
「ビエラ。どうしましたか?」
「あ~?あ。」
「え?・・・んー・・・気が付いてはいましたが・・・ギリギリなんですよね。
こっちに来るかは微妙過ぎですけども・・・
わかりました。主に聞いてきます。」
ミアが武雄の下に戻って行く。
すると武雄とマイヤーが話し、隊を止めるのだった。
・・
・
武雄達は車座になりビエラの話(ミアが通訳)を皆が聞いていた。
「ビエラはそう感じたのですね?」
「はい!」
ビエラが元気良く返事をする。
「ふむ・・・約1か月共にした人間達の気配ですか・・・勘違いとは言い切れないですね。
それが一団で動いていてもしかしたらこっちに来るかもしれず、さらに言えば何か追っている感じもすると。」
マイヤーが考えながら言う。
「買われた奴隷が逃げたのでしょうか?」
「それは考えづらいんじゃないか?
その辺は奴隷契約で命令出来るんだし。」
「となると・・・あの連中の物を盗んだか、単純に狩られているのか。
奴隷が囮をしているか。」
アンダーセン、ブレア、オールストンが話し出す。
「・・・?・・・」
「?・・・」
ビエラとミアが同時に一団とは違う方向を向く。
「どうしましたか?」
「あ~?」
「ええ。そうですね。
この旅で慣れ親しんだ感じの者です。」
ビエラがミアに何か言うとミアが頷く。
「主。ビエラと居た人間達にオーク数体が接触するかもしれません。」
「・・・距離は?」
「こっちに一団が200mでこっちにオーク250mです。」
「ミア。右手でオーク、左手で一団を指してみてください。」
「はい。」
その姿を武雄は上から確認する。
「・・・一団とオークは180~200m程度の距離ですかね。」
「わかるのですか?」
「頭の中での簡易計算ですよ。
それに正確性を求められていませんからね。」
ミアは何も言わずに腕をずっと指している。
その間隔が徐々に狭まって行く。
「・・・どうしますか?」
「・・・単純に襲われているなら助けるのも良いですが・・・狩りの最中なら余計な事ですよね。
マイヤーさん。無視して行きますか?」
「事が収まるまで動かないという選択肢もありますが・・・・動かないから平気という物でもないのはありますね。
少なくとも今までの速度では何かあった際は対応が出来ないでしょう。
なので少し速度を落として行くべきかと。」
「・・・それで行きましょう。
止まっていても事態は動きそうにありません。」
「所長、こちらに来た際は?」
「・・・一団であろうがオークであろうが戦闘仕掛けるもしくは道を塞ぐなら斬って構いません。
ただし、一団であれば即死はダメです。
回復させてから気絶させて道端に放置で。
気が付いた時は私達は国境を越えている体で。」
「・・・逃げるんですね。」
「帰るのに厄介事は面倒ですし・・・使節団の通り道を剣を抜いた状態で立ちふさがるなんて即戦闘で良いでしょう。」
「まぁ・・・そうですね。」
ブレアが頷く。
「あ?・・・あ~・・・」
一団の方を見ていたビエラが首を傾げながら考えている。
「ビエラ。どうしましたか?」
「あ。」
「・・・?・・・あぁ。なるほど。
主。一団の人達はオークを発見出来ないのでしょうか?
ビエラ的に一団とオークは同程度の力量と見ているようです。
同じ程度なら逃げても良いんじゃないかと言っています。」
「アンダーセンさん。どう思いますか?」
「地理的にどうなっているかはわかりませんが、戦闘を目的として移動をするならば数名が先行を出しながら進むのが定石かと。
ここが一団の庭的な場所なら先行はされない可能性はあります。
その際は即戦闘の気構えなのでしょう。」
「だ。そうです。」
武雄がビエラに言う。
「あ~・・・?」
ビエラが首を傾げる。
「では。所長。このまま進むのですね?」
「そうですね。
少しゆっくりと行き」
「あ!」
「主!待ってください!」
ビエラとミアが止める。
「どうしましたか?」
「主!あっちにもオークです!
・・・ん?・・・オーガも居る?」
ミアが腕で指しながら言う。
「道を挟んで?」
「ここは巣なのか?」
「ふむ・・・ミア殿。何体ですか?」
「オーク8、オーガ2です。」
「所長。移動は取りやめた方が良いでしょうね。」
「新たに来た方を対処しましょうか。」
「アンダーセン。
ベイノン、アーリス、オールストン、ブレアを率いてオークに対処を。」
マイヤーが伝える。
「「はっ!」」
「所長は」
「オーガを始末しますかね。」
「はい。お願いします。」
「バートとフォレットは幌馬車の警護。
テーア達3人は一応準備だけだ。戦闘には出さない。」
マイヤーが言うとテーア達が頷く。
「それとベルテ一家とニルデとジルダとビエラ殿はお茶の準備。」
「はい!・・・え?・・・え?」
フローラが自分達への指示に驚く。
他の面々も同じようだ。
「さくっと終わらせますか。」
「お茶の時間内で終わせないと・・・ゆっくり飲めないですよね。」
「所長に獲物を取られそうだ・・・早く終わらせないと。」
「はい。行きますよ。」
武雄が立ち上がりアンダーセン達に声をかける。
「あの・・・マイヤー殿?」
エンマが声をかける。
「この程度は慣れていますから。
お茶の準備をしましょう。
関への到着は日が落ちてしまうかもしれませんからお腹に溜まる物をお願いします。」
「はぁ・・・わかりました。
えーっと・・・エンマ。フローラ。干物を少し使って温かいスープを作りますか。
鍋を出さないと。」
ボーナが幌馬車内を探すのだった。
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