第972話 セイジョウの報告。
セイジョウが自宅に戻る。
「お・・・おかえりなさいませ!団長!」
女性がお出迎えする。
だが、女性はキョロキョロとセイジョウの周囲を探す。
「ただいま。ヨハンナ。
団長はこの前のカトランダの時の呼び方だから今はしなくて良いんだよ。
と。バロール。」
「うむ。」
「ひゃぁ!?
おおおおおかえりなささささいままませ・・・・バババロールさん!!」
バロールが姿を現すと女性がオロオロしながら頭を下げさっさとどこかに行ってしまう。
すると入れ替わりで執事服の男性がやって来る。
「主。おかえりなさいませ。」
「うん。
さっきは聞かなかったけど・・・始末書は何個?」
「ヨハンナ様は頑張っております。」
「うん。知っている。
何個?」
「・・・3つほど・・・内1つが今日です。
一応金銭で解決出来る物ばかりです。
特務隊の他の方々は訓練に勤しんでいます。
あと連れて来た方々への住み家と農地は借りれましたので、早速移り住んで貰いました。
明日の朝一に他の者と様子を見に行きます。」
「わかった。連れて来た者達の面倒をよろしく。
始末書は後で読むよ。
それとバロール。威圧しないで。」
「した覚えはない。
勝手に怯えているだけだ。」
「・・・はぁ・・・他には?」
「お客様がみえられています。
客間にお待ちです。」
「・・・」
セイジョウは執事が名前を言わないので『裏の方か』と考える。
・・
・
「失礼するよ。」
「よう♪」
「・・・」
セイジョウが入ると2人が室内のソファに座りながら片手を上げて出迎えてくれる。
「報告書ありがとうね。」
セイジョウが2人の前に座りながら言う。
「おう。
提出したら『ま。好きにしなよ。だけど宝物庫に入らないのは減点だから』だそうだ。
それと当分は表の仕事をしていて良いってよ。」
「・・・いや。表の方で殺害厳禁だったんだけど・・・あそこに侵入は無理だね。」
「ま。愚痴は直接言ってくれ。
俺は伝えただけだ。」
「・・・金くれ。」
「はいはい。前に言っていた金額だよね。」
セイジョウが一旦席を立ち金貨を持って来る。
「・・・またのご利用・・・よろしく。」
「次があったらね。」
セイジョウが苦笑する。
「で。キタミザト子爵様はどうなんだ?
何でも新貴族で1人だけ子爵なんだって?」
「そうみたいだけど本人的には気にしていないみたいだよ。
魔王国方面のエルヴィス家とかいう所に研究所作るんだって。」
「「エルヴィス伯爵家・・・」」
2人が目を細める。
「ん?どうしたの?」
「・・・2回程魔物に襲わせた街なんだが・・・
鮮紅に撃退されてな・・・
戦果があがっていない。」
「あぁそう言えば前に報告がうちらにも回っていたね。
行った事はないけど・・・資料を読むなら普通の街の印象かな。」
セイジョウが思い出しながら言う。
「あそこは当分何もしないのが上からの指示なんだが・・・良い印象はないな。」
「上手く・・・行かなかった・・・自信崩壊・・・」
「そっか。
でも向こうに強敵が居るのはわかっているんだし、わざわざそこでなくても良いんじゃないの?
同じ労力で最大の戦果を出すなら強敵が居ない方が良いでしょう?」
「・・・その言い分は真っ当だし仕事なんだからそうすべきなんだが・・・
俺達が用意出来る最高の魔物を強者にぶつけてみたい・・・強い者を打ち破りたいという欲求はあるんだ・・・」
「自己満足でしかないとは思うんだけど・・・ま。誰しもあるよね。
力は強い者に使ってこそ楽しいよね。」
「わかるか?」
「そりゃあね~。
この組織にいるんだし、何かしらしたい事があるから参加しているんでしょ。
皆が方向が違うだけで何かしら世界を壊してでも成し遂げたい夢があるのは確かだし。
俺だってやりたい事があるからいるんだよ。」
「脱退は・・・死あるのみ・・・」
「そこは酷いとは思うけどね。」
「そうだな。各々やりたい事があるからこの仕事をしているんだったな。」
「その強者が死ぬ前に再戦があると良いね。」
「・・・用意に数年かかるがな。」
「じゃ。今から仕込まないとね。」
「既に仕込んでいるさ。」
「仕掛けるの禁止でしょう?」
「今はな。
いつか了解が取れるだろう。」
「・・・我々の代では・・・ないと言ってた・・・」
「・・・企画書出すさ。」
「ガンバ。」
「はぁ・・・いつになるのかね。
で当面は?」
「ん?・・・あぁウィリプ連合国とアズパール王国の国境周辺に魔力溜まりを作成している。」
「んー・・・4年半後に向けて?」
「そう・・・でも計画・・・おかしい。」
「そうなの?」
「まず・・・大規模過ぎる・・・街1つ・・・・簡単に落ちる。
だが・・・かなり・・・山の中に・・・ある。
あれでは・・・人里まで・・・無理。」
「・・・何でそんな所に作るのかな?」
「「さぁ?」」
来客の2名が首を傾げる。
「知らないのかい!?」
「作れと言われた場所に作っているんだ。
4年半後までどう使うかは秘密らしい。
それに俺らとは別組が戦争時の混乱を誘う為に今何やら魔法具を試作して試験しているらしい。
当分はアズパール王国の関に近づくなだとさ。」
「理由・・・知る必要・・・ない。
今回・・・魔力溜まり・・・作る仕事。
今は・・・これで・・・良い。」
「まぁ2人がそういうならそうなんだね。
俺はのんびりと過ごさせて貰うよ。」
「あぁ。そうしろ。
さて。俺らも休暇に戻るかな。」
「じゃ・・・また来る。」
2人が立ち上がり退出して言った。
・・
・
「良いのか?」
何も言わないで見ていたバロールがセイジョウに聞く。
「何が?」
「あの御仁には精霊と妖精とドラゴンが味方している。
となるとエルヴィス伯爵領の警備はとてつもなく厳重になるだろう。
さらにはアズパール王国には最低でも新たな精霊が居て襲撃での成果は望めない。
もしかしたらあの御仁の今回来ていない部下に付いていてもおかしくはない。
まぁ名だたる精霊が早々付くとは限らないし、ほとんどの精霊が戦力にはならないだろうが・・・それでも精霊だ。
たかが数十の魔物では太刀打ち出来ん。」
「・・・ふむ・・・
大統領府で見た報告書には精霊の事が書いてなかったんだよね。」
「情報が遅いな。」
「ま。いつかは情報が来るよ。」
「そうだな。
で。これから何をする予定だ?」
「タンポポ茶の生産と販売♪」
「はぁ・・・上手く行くのか?」
「やった事ないからやってみる!まずはこれで良いんだよ♪」
「はぁ・・・農業関係者にまずは連絡だな。
それと良い部下を登用しないといけないな。」
「あ!そうだね!
部下を探さないとね!
ん~・・・いろいろやらないといけないね。」
セイジョウが腕を組んで考え始める。
「はぁ・・・御仁に部下の育て方を聞くのではなかったのか?」
バロールがヤレヤレと両手を上げるのだった。
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