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第964話 皇子妃達の戦い。(つわり。)

アズパール王国の王城の第3皇子一家の執務室。

「・・・」

「・・・」

「・・・」

ウィリアムとレイラとエリカは机で書類を処理している。

と執務室の扉が開いてアルマとパイディアーが入って来る。

「・・・あぁぁ・・・」

アルマがソファに座ると横になる。

するとエリカが席を立ちアルマに毛布を持って行く。

「エリカさん。ありがとう。

 パイディアーもごめんね。」

「いえいえ。」

「休んでください。」

2人とも微笑みながら自分の席に帰っていく。

「アルマお姉様。辛そうですね。」

レイラがビスケットを食べながら言ってくる。

「・・・午前中は良いんだけどね~・・・

 やっぱり午後一はダメだわ。」

レイラが声をかけるとアルマが横になっている状態で顔のみを向けながら言ってくる。 

「アルマ。体調が優れないなら寝室で寝ていても良いんだよ?」

「ウィリアム。ここに居させて・・・

 寝室で1人だと不安で死にそう。」

「まぁ・・・アルマが良いと言うなら良いんだけど。

 無理なら先に寝ても良いんだからね?」

「は~い・・・」

アルマが力なく手を振りながら言う。

「昼食後がアルマお姉様は厳しいのですね。」

「うん。昼以外だと平気なんだけど。

 一応、保健に書かれていたようにこまめに物を食べるようにしているし、パイディアーにも気を使って貰っていて・・・こればっかりは個人差なんだろうね。

 レイラは朝ね。」

「ええ。朝の寝起き時が辛いですね。

 最初は驚きましたけど・・・何とかなっている感じです。

 あとは特に問題はないんですけど・・・アルマお姉様。味覚変わりました?」

「うん。レモンの多用はしているけどね。

 肉も野菜も今の所問題ないわ。

 肉も小分けでしっかり焼いてくれて味付けもあっさりさせてくれているし。

 レイラは?」

「私もレモン以外だと特に・・・んー・・・見聞きして想像していたよりも軽いんですよね。

 料理人達が果物のジュースをこまめに作って来てくれるのも意味があるのでしょうね。

 昔のお母様方や料理人達の妻の知恵みたいですけど。」

「吐いた分を戻している感じよね。

 胃が荒れなくて良いわ。

 ・・・1日1回なのは普通なのかなぁ?

 でも確かにレイラが言うように想像よりかは楽なのよね。」

「ですよね~?」

アルマとレイラが首を傾げている。

「・・・そんなに酷いものなのかい?」

ウィリアムが苦々しい顔をさせながら聞いて来る。

「ん~・・・日に3、4回は吐くと言われていたんだけど・・・食欲も無くならないし・・・

 お菓子が美味しいなぁ。」

レイラがポリポリ食べている。

「・・・私はレイラ程食べられないわね。

 と。麦茶。麦茶・・・」

「こちらに。」

パイディアーが麦茶とビスケットを持って来る。

「ごめんね。パイディアー。」

「飲んで胃を綺麗にしなくてはいけません。

 あと少しでもお腹に物を入れましょう。」

「は~い・・・はぁ。スッキリだわ。」

アルマが出された麦茶を飲んで一息つく。

「ローナお姉様もセリーナお姉様も経験があるから問題ないとして・・・リネットお姉様の方は大丈夫でしょうかね?」

「あ~・・・無理じゃない?

 リネットが初産だし、ワタワタしているわよ。」

「・・・あそこも3人目なんですけどね。

 まぁ周りが慣れているでしょうかね?」

「そうね。

 うちが一番問題なんだろうけど・・・あ。そろそろかな?」

アルマが懐中時計を取り出して時間を見ながら呟く。

「・・・陛下が来ましたね。」

パイディアーが廊下の方を見ながら言う。

「はぁ・・・父上も2日に1回来なくても良いのにね。」

「心配なんでしょう?

 それに王城で生まれる(・・・・・・・)初めての孫(・・・・・)なんだからしょうがないわよ。」

アルマが苦笑する。

「それも男女一緒にね。」

レイラも苦笑する。

「はぁ・・・何だか僕よりも嬉しそうなんだよね。」

「ふふ。お義父さまは孫は甘やかすと言っていたわね。」

「そうですね。」

と扉がノックされるのだった。


------------------------

こっちは第1皇子一家の屋敷。

「あぁぁぁ・・・」

セリーナが庭先で麦茶を飲みながらボーっとしている。

「・・・つわり酷いわね。」

ローナもお茶をしながら言う。

アウクソーは何も言わずにすぐ後ろに控えている。

「アンの時より酷いわ・・・

 でも前よりかは物は食べれている感じね。

 保健のおかげよ・・・でもこの倦怠感は何度経験してもダメね。」

「そうね・・・寝る?」

「もう少し風に当たってからで良いかしら。」

「わかったわ。

 ・・・この時期のこの景色も見納めね。」

「もうすぐ春だしね。」

ローナとセリーナがのほほんとしている。

「そう言えばアンは何しているのかしら?」

「・・・料理作っているわよ。」

「食べれる物かしらね。」

「料理長が付いているわよ。

 あ。タケオさんの出汁のスープ系はセリーナも食べれたよね。」

「うん。自分でも驚いた・・・前はブイヨンのスープが食べれなかったのにあれは美味しいわ。

 料理長達がオレンジの皮を少し入れて柑橘系の匂いをさせたり、いろいろ工夫してくれているのが助かるわ。」

「皆経験を活かしているわよね。」

「そうね。

 あ・・・・アンと料理長が来たわ。」

「何が出来たんだろうね。」

「楽しみ半分、もし戻したらアンが悲しむだろうと思う怖さ半分。」

「大丈夫よ。その時はその時。」

「まぁ・・・そうね。

 あの大きさなら机を片付ける必要はなさそうね。」

「そうね。」

・・

「お母様方。アウクソー。スイーツが出来ました。」

「うん。待ってたわよ。」

「アン。何を作ったの?」

「はい!料理長が教えてくれた体に優しい物です!」

アンが楽しそうに配膳していくのだった。


------------------------

こっちは第2皇子一家の屋敷。

ニールの執務室。

「・・・なぁリネット。つわりは大丈夫か?

 日に2回くらい吐いていると聞いているんだが。」

「訓練よりかは楽ですよ。」

「・・・そうじゃなくてな?

 寝ていなくて良いのか?」

「特には・・・吐く以外では食欲もありますし、眠くもないんです。

 カリスからも子には何も問題ないと言われていますからここに来たんですけど。

 でも・・・そろそろ見つかりそうです。

 カリスがクリナの下に行きましたし・・・」

とリネットが諦めたような顔をすると扉がノックされニールが返事をするとすぐに扉が開けられる。

「カリスが言った通りです!お母様こんな所に居たのですか!寝てください!」

「はい・・・寝ます。」

クリナに見つかりリネットが渋々立ち上がる。

「お母様はさっき吐いたのでしょう!?

 寝ていてください!」

「・・・平気なんですけどね。」

「病人は皆そう言うのです!

 さぁ!さぁ!さぁ!」

クリナがリネットを連れだしていく。

「カリス。すまないがよろしく。」

「はい。殿下。お任せください。」

ニールがカリスに声をかけるとカリスは返事をしてクリナとリネットの後を追いかけて行く。

「はぁ・・・エイミーもクリナの年齢の時に母親が妊娠したならああなったのだろうか?

 ・・・そういえば母が行く先々に一緒に行って観察していたか。懐かしい物だな。」

ニールが朗らかな顔をしながら書類に目を落とすのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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