第957話 試験。2(採用決定と最終試験?)
「11番負け。次!」
11番の魔物が座っていた位置に戻る。
すぐに奴隷商がケアをかけて元に戻している。
「12番前へ!」
12番と呼ばれた者が前へ出る。
見るからに穏和そうな女性だった。
対戦するのはフォレット。
両者が構える。
「んー・・・唯一の女性対決ですね。」
「・・・所長。フォレットには分が悪そうです。」
「そうですか?」
「ええ。
何と言うか・・・構えた雰囲気で負けています。
相手の方が上手い気がします。」
「ふーん・・・さて・・・フォレットさんはどう出るか。」
「魔法がないしなぁ・・・」
武雄は興味深そうにマイヤーは少し心配げに見る。
12番は中段に構えている。
先に動いたのはフォレット。
剣を片手で持ち、剣先を下げた状態から大きく一歩を踏み込み。そして突く。
フォレットの捨て身の攻撃。12番の左胸に当たるが、同時に12番の剣先がフォレットの首元にあった。
12番はフォレットが踏み込んできた時に咄嗟に左手を離し右手でフォレットの首を狙いに行っていた。
「12番引き分け!
以上!試験終わり!」
セスコの部下が試験の終了を宣言する。
アンダーセン達が武雄の周りに戻って来る。
「はい。お疲れ様でした。」
武雄が1人1人に握手をしてケア×35をかけて行く。
「皆。無事で何よりだ。」
「いや~・・・フォレット。上手くなったなぁ。」
ベイノンがうんうん頷いている。
「相打ちでした・・・
もう少し早さを出さないといけないのでしょうか。」
「いや。あの場合は一回フェイントを入れないと優位には立てないぞ。
相手の剣を横に弾いてからあの突きを出せば良かったかもしれないが・・・あの12番はもう少し上手だろう。
対処されていたかもしれないな。」
アンダーセンが解説をしている。
「はいはい。反省会は後で。
さて・・・何番が良かったですか?」
「4番は確実ですね。」
「私は引き分けましたけど12番も良いと思います。」
「7番は・・・少し歳を取っていますが指揮官として良いのではないですか?
剣の捌き方に粘りがありました。」
「8番も捨てがたいですね。」
各々が話し出す。
「・・・はい。投票。
自分が良いと思う2名に印をつける事。
どちらも●印で書きなさい。」
武雄がリストと鉛筆を置くと各々が2か所に書いていく。
・・
・
「セスコ殿。決まりました。」
「はいはい。何番がよろしかったですか?」
武雄がセスコを呼ぶ。
「4番、7番、12番です。
3人でお願いします。」
「ふむふむ・・・
いくらが上限でしょうか。」
「出来れば当初の予定通り金貨290枚ですが、予備費もあるので金貨350枚まででお願い出来ますか。」
「わかりました。
交渉してきましょう。」
セスコが奴隷商達の下に向かうのだった。
・・
・
武雄は3名と契約を終えていた。
「では。若旦那。
ご購入ありがとうございました。」
セスコとその後ろに並んだ奴隷商の面々が深々と頭を下げる。
「いえいえ。
金貨345枚で妥結して頂きありがとうございました。」
武雄も軽く礼をする。
「代金は後程セスコ殿宛に奴隷商組合事務所に持って行きます。」
「わかりました。」
「ここはしばらく借りても平気でしょうか?」
「はい。
9時課の鐘までお貸し出来ますが・・・
いや。9時課の鐘に人を来させますからそれまでに退去しておいてください。」
セスコが考えながら言う。
「わかりました。」
「では。私達はこれで。」
セスコを先頭に皆が退去していくのだった。
・・
・
「アンダーセンさん。遮音の魔法をお願いします。」
「はい。」
アンダーセンが返事をしてブレア達に顔を向け頷くと4人とも頷き四隅に座る。
「マイヤーさん。やりましょう。
ミアはマイヤーさんと居なさい。パナは回復役。」
武雄がそう言いながら3人の前に出る。
「「はい。」」
ミアとパナがポケットから出てくる。
「はぁ・・・わかりました。」
マイヤーが諦めたように頷く。
「さて。3名ともお疲れさまでした。
詳しい話は後程しますが、ま。とりあえず私と手合わせしてください。」
アンダーセンが武雄に木刀を渡す。
「4番!前へ!」
そのまま審判を始める。
「あ・・・あの・・・」
4番が困惑している。
「一応、使節団の責任者なのでね。
貴方達の実力を自分で確認もせず買ったと他の者に報告されるとマズいのですよ。
本当は最初にしたかったのですが他人の目がありましたしね。
まぁ。ケアが出来る者もいます。危なくなったら止めに入る人もいます。
何があっても貴方達は私の部下であるという事に変わりはありません。
これは私の我が儘です・・・遠慮せずに全力でお願いします。
早く終わらせて皆で湯浴みに行きましょう。」
武雄がにっこりという。
「では・・・」
4番が武雄の前に出て右手で剣を持ち半身に構える。
武雄も右手で木剣を持つが右肩に担ぎ、左手を前に軽く出して構える。
4番は一瞬首を捻るが先手必勝とばかりに右手を上げ切り込んでくる。
武雄はいつも通りに左手に「シールド×10」を作り木剣を受け止めると左側に剣をずらし、力を左にいなす形にする。
すると4番の体勢を前のめりにする。
そして右肩に担いだ木剣を4番の右肘の内側に思いっきり振り下ろす。
「アガッ!」
4番は激痛と共に木剣を放しバランスを崩す。
更に武雄は相手がバランスを崩したと見ると相手の顔目がけて右肘を打ち込むのだった。
そのまま4番は崩れ込む。
「4番終了。」
アンダーセンが終了を告げると、バートとフォレットが4番を引きずり元居た場所に戻す。
すぐにパナが近寄りケアをかける。
「・・・次。」
武雄はその様子を一瞥しただけで元居た場所に戻っていくのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




