第952話 エンマを回復させよう。(各々の打ち合わせ。)
夕食後の食卓。
マイヤーを中心にアンダーセン、ベイノン、オールストン、アーリス、ブレア、バートの王都守備隊組とドナートを中心にジッロ、フローラ、ニルデ、ジルダの農家組でそれぞれ机を半分にして話し合っていた。
まずは王都組。
「んー・・・このリストの中からなんですよね。
獣人に変身するのもいろいろあるのですね。」
「熊。蛇。ゴリラ・・・はぁ・・・どれも見たことがないですね。
確かに本では見た記憶はありますけど・・・」
「我々が知るのはやはり狼ですかね。
これは集団行動が本能的に出来るから領主向きなのでしょうか。」
「我らはヴィクター殿達を見ているからな。
それにしても・・・ん~・・・見た目年齢としか書かれていないのですね。
青年が良いのか・・・少年が良いのか・・・」
「実際に部下になった時の事を想定してくれと言われても・・・ん~・・・」
王都守備隊員達が頭を悩ますのだった。
こっちは農家組。
「ん~・・・どのくらいの面積が欲しいかかぁ・・・」
「親父。キタミザト様が欲しがっている米の作付け面積を大きくしないといけないんだよな。
そこを4人で作業が出来る面積が良いんじゃないか?」
「でもジッロ。
そうすると今日買って来た種の方の収穫時期が重なった時にニルデとジルダと例えば私で収穫するの?
無理だよ。どんな物が出来るかもわからないし。
ニルデとジルダのタンポポは普通に植えれば良いんだよね?」
「はい!
とりあえず小さな畑で植えて行こうと思います。」
「最初は小さくで行くのね。
でも、他の作物の横を畑にしちゃうとタンポポは種を飛ばすから他の所に行って雑草として迷惑かけてしまいそうだし。
そうすると・・・少し木々で囲った方が良いかも。
あと腰丈までの木々も植えて生息範囲を指定しておかないといけないでしょ。」
「そうすると街の郊外か?・・・ん~・・・一から畑作りは来年の収穫に間に合うのか?
流石に収穫が1年延期になってしまうとキタミザト様にいろいろと迷惑をかけてしまいそうだが・・・」
「なら山に面している所を借りるしかないんじゃないか?」
「向こうの街がどんな地形かもわからないうちは何とも言えないな・・・」
「なら。米の作付け範囲。タンポポの作付け範囲とその周囲の飛散防止の境界が欲しい事と今日買った種の試験栽培の面積を出すしかないよ。」
フローラが言ってくる。
「ん~・・・ジッロが出て行くかもしれないからなぁ・・・」
「私達も頑張ります!」
「頑張る!」
ドナートが悩むのを見てニルデとジルダがやる気を見せる。
「そうだな。
戦力として数えないとな。一緒に住むんだ。
うん。家族も同然だ。
頑張ろうな。」
「「はい!」」
「で。どのくらいが必要なのかなぁ・・・」
フローラが腕を組んで悩むのだった。
最後に武雄とミア、パナ、ビエラ、ボーナ、エンマ、フォレットがパナ達の寝室に来ていた。
そこにはベッドに裸の状態でうつ伏せになっているエンマを皆で囲んでいた。
もちろん腰回りには布をかけている。
「エンマ。すみませんね。
恥じらう気持ちはわかるのですけど。責任者なので立ち会わせて貰います。」
「いえ。キタミザト様。気になさらないでください。」
エンマが顔を赤らめて答える。
「さてと。パナ。今一度エンマの現状を割りと詳しく説明してください。」
「はい。
エンマは腰椎損傷による下半身の不随と無痛覚、左肩の神経の損傷による腕の不随。
性的暴行によると思われる女性性器損傷、裂肛の痕跡が見受けられています。
これはフローラにもありましたが、昨日の回復時において全て回復をさせています。
また両名とも妊娠はしておりません。薬物投与もされた形跡はありません。
2次的な感染症も確認出来ません。」
「・・・フォレットさん。殺気を抑える。」
「はっ!」
武雄が顔を向けないでフォレットに注意するとフォレットが軽く礼をする。
「・・・じゃ。さっさと回復させますか。」
「お・・・お願いします。」
「よろしくお願いします。」
エンマが恐々とボーナが深々と頭を下げて懇願してくる。
パナがエンマの腰横に移動し、腰の辺りに手を置き少し目を細めるとエンマの全身が一瞬光る。
「終わりました。」
パナがエンマの腰から手を離して武雄に向け言う。
「はい。ご苦労様です。
ではビエラ隊長!お願いします!」
「はい!」
武雄にそう促されるとビエラが手を上げて返事をする。
掲げられた手には新品の筆が握られていた。
・・
・
「ふぅふぅふぅ・・・あぅ・・・
もう・・・勘弁してください・・・」
エンマがうつ伏せで大量の汗をかき肩で息を切らしていた。
顔は赤面し目もうるうるとしており明らかに感情が昂揚している・・・はっきり言うと艶やかだった。
「あ~・・・キタミザト殿。やり過ぎでは?」
フォレットが赤面して苦笑しながら言う。
「えーっと・・・おかしいですね。皮膚感覚を確認するだけだったのですけど。
ボーナさん。エンマはくすぐりに弱いのですか?」
「いえ・・・ここまでは。
普通に笑うくらいだったと思うのですけど。」
ボーナは娘の痴態を目にして少し顔を赤くさせている。
「パナ。どう思いますか?」
「んー・・・身体はしっかりと1か月前の状態に戻したんで・・・失敗はしていないです。
ボーナ。エンマのあの状態は何日でしたか?」
「えーっと・・・12日前後だと。」
「んー・・・なら12日間無感覚だったのに今は刺激が来たから戸惑っているのですかね?
痛覚が快楽に?ん~・・・」
パナが首を傾げる。
「脳が久々の刺激に過剰に反応しているという事ですかね?」
「たぶん・・・徐々に元の感覚に戻るはずです。」
「とりあえず様子見ですね。
お湯とタオルを持ってきます。
ボーナ。エンマの体を拭いて服を着せてください。」
武雄が退出しようとする。
「はい。わかりました。
キタミザト様。ありがとうございました。」
ボーナが深々と頭を下げる。
「はは。治って良かったですね。
あと25年。よろしくお願いしますね。」
「はい。謹んで務めさせて頂きます。
本当にありがとうございました。」
ボーナは顔を上げないままだが、床に水滴が落ちているのがわかる。
その様子をフォレットが優しい目で見ているのだった。
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