第951話 何を買ってきたのかな?(食虫植物も。)
武雄達は別班を待ちながら部屋でまったりとしていた。
「ん~・・・夕飯の支度が終わってしまいました。」
「所長。今日は何ですか?」
「牛肉(ごろ肉)のワイン煮です。
朝から準備していたシイタケの出汁を少々と安い赤ワインを入れてコトコト煮込むだけなんですが、作業らしい作業もニンジンとタマネギとジャガイモを皮を剥いて大きく切って入れるだけの簡単料理なんです・・・手抜きですね。」
「パンとワイン煮とサラダですね。
サラダはマヨネーズを使った練り物ですね。」
マイヤーが簡易厨房を見ながら言う。
「ポテトサラダなので材料は一緒なんですよ。
これも手抜きと言えば手抜きですね。」
武雄が苦笑する。
と別組が帰ってくる。
「所長。戻りました。」
「はい。ご苦労様。」
「「戻りました~。」」
「はい。おかえり。」
「ただいまです。」
「はい。おかえりなさい。」
次々に武雄に挨拶をしてくる。
・・
・
挨拶も済ませ皆にお茶を出して夕食までの軽い雑談中。
「種を買ったのですね?」
武雄が皆が買ってきた種の袋の山を見ながら同意を言う。
1人一袋+αだ。
「はい。とりあえず棚にあるものは全種類買いました。」
ボーナが言ってくる。
「わかりました。向こうで試しに作付けしてみましょう。
えーっと。農具はないのですか?」
「特に目新しい物は・・・奴隷サイズなのか大きいのはあったり、鍬や鎌は鉄を尖端に付けているだけでしたので。
他の農機具も私達は見たことがある物ばかりなので買ってきませんでした。」
ドナートが難しい顔をさせる。
「ん~・・・私は農具に詳しくはないのですが、違いはなかったのですか?」
「馬用のプラウもありましたが・・・鉄で出来ている以外は構造的には同じでした。
それにアズパール王国で借りる土地の土壌がどうなっているかによって使える農具が違いますので、この地の物を買っても使えるかというのはちょっと違うかと。」
「なるほど。そういうものなのですね。
で、プラウとは何でしょうか?」
「えーっと・・・簡単に言えば地中に大きな板を斜めに差し込み、馬で引く事によって地中の土を表面に出し、反り返りを作る事によって上下を入れ替える農具になります。」
「ふむ・・・鍬の馬引き用という感じですか。
時間が短くなりそうですね。」
「んー・・・短くなるというか・・・土壌改良の一環ですね。
耕していると数年に1度はこれをして地中の養分を地表へと運ぶ作業をしないといけません。
そして上下を入れ替えてから土の塊を砕き、耕して初めて農地としての第一歩が始まります。」
「なるほど。」
武雄は頷きながら「朝霧(緑)を使った高性能肥料があれば多少は楽になるかと考えたけど、農具の開発も必要か」と思う。
「あれ結構重労働だよね。」
「あれ疲れるよね。」
エンマとフローラが苦笑している。
「何か問題が?」
武雄が食いつく。
「こういう板を入れるのですが、力がかかるので左なら左だけ右なら右だけの農具なので畑の中を遠回りしながら回ってくる必要があって時間がかかるんです。
キタミザト様。農業のイメージはどんな物でしょうか。」
ドナートが聞いて来る。
「畑を耕し、種を蒔き、雑草を取り、収穫する。
概ね4工程だと思っています。」
「そのどれもが人手と時間がかかります。
特に畑を耕すのと収穫は重労働なのですが、中でも耕す方は気力が物を言いまして・・・収穫は喜び半分なのでそこまでの疲労感はないのですが。」
「なるほど。」
武雄は「帰ってから農家の人達と打ち合わせも必要かな?どんな農具を使っているかとか、どう改良すれば効率が上がるかを聴き取りして何か作らないといけないかもなぁ。」と思う。
「では、農具関連は帰ってからで良いでしょう。
あと。ニルデ。何を持っているのですか?」
「う・・・これです。」
ニルデが小さな鉢植えを机に置く。
「植物ですか?」
「あ~・・・キタミザト殿。ニルデが気に入りまして・・・」
フォレットが苦笑している。
「いや。買って来た事に怒る気はありませんが、何を買ったのですか?」
「トリグサ。葉をパクパクさせて可愛い。」
「まさか食虫植物ですかね・・・
ボーナお母さん。ご意見をどうぞ。」
「植えるのは良いんですが・・・20年後が心配です。」
「20年後?」
「植えて15年から20年にかけて急速に大きくなるんですよね。
観賞用としては10年くらいを目途に球根から子種を取っておいて親種は枯らせるのが普通です。
ニルデがちゃんとその辺の事がわかれば良いのですけど。
変に愛着を付けてしまうと結果的に焼却処分をしないといけない羽目になります。」
ボーナがため息交じりに言う。
「大きく?どのくらいですか?」
「5m。軽く馬を取り込めますよ。」
「・・・鉢植え以外を禁止します。
それとニルデ。ちゃんと10年毎に新しく再生させる事をしましょうね。
しっかりと生きた事に感謝をしてあげて、次の子供を育ててあげるんですよ。
愛着は必要な感情です。ですが、皆に迷惑をかけてはいけません。」
「はい!」
ニルデが頷く。
「さてと。夕食にしましょうか。
準備は出来ていますからね。
手伝ってくださいね。」
「「は~い。」」
ニルデとジルダが席を立つ。
「あ。ニルデ。ジルダ。手を洗いなさい。
鉢を持っていたから土が付いていますよ。」
ボーナも立ち2人に注意する。
「・・・いや。全員手を洗いなさい。」
武雄が苦笑しながら言うのだった。
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