第946話 精霊の試合だ。2(演舞)
ニオが審議を要請したので、アリスとジーナとコノハにて協議。
結局の所。「まぁ当初の予定通りにするか」となった。
「型見せ!一本目開始!」
審判のテトが両者の中間で宣言する。
マリは一文字(約0.8m)を、ニオが日本号(全長3m)を構えて対峙する。
「「・・・」」
ニオは中段に構え、マリも中段に構えている。
ニオの槍の間合いにて対峙中。
「「・・・」」
観戦する者達が息を飲んで間合いの取り合いを見ている。
マリがすり足で徐々にニオに近づいて行く。
「!せい!」
ニオが半歩踏み出しマリの顔に向け突く。マリは刀の峰辺りで槍先を横から叩き軌道を変え顔横に突かせる。
ニオはすぐに半歩下がると同時に手元に槍を引き中段に構える。
「「「おおおお!」」」
周囲から歓声が上がる。
ニオが繰り出す槍の速度は人間が見れる限界値で出していた。
兵士も騎士団員もその速さに驚きそれを軽く捌くマリに感嘆を漏らしていた。
「ふむ・・・凄い一撃じゃの。」
「親父殿・・・精霊戦は凄いですね。」
エルヴィス爺さんとゴドウィン伯爵が魅入る。
「今のはパラスちゃん向けね。」
コノハが呟く。
「あの速度・・・私に出せるでしょうか。」
「ニオが出来るし、可能の範囲ね。
三又槍は攻撃力が最大の武器だけど・・・少し改造した方が良いかも。
見た感じパラスちゃんのは対人、対魔物戦闘用としてはバランスが悪いわ。」
「・・・はい。」
パラスが頷くのだった。
「型見せ!二本目開始!」
審判のテトが両者の中間で宣言する。
「「・・・」」
先ほどと同じようにニオは中段に構え、マリも中段に構えている。
マリとニオの間合いが先ほどよりも近い2mになっていた。
「・・・あ~。次はジーナ用ね。」
「マリが?」
実は昨日の夜から精霊達が「殿付けはしなくて結構」と総意を出していた。
「うん。右足前で左足を少し後ろにしているでしょう?」
「はい。
でも先ほども・・・いや歩幅が先ほどよりも狭いですか。」
「うん。ジーナは良い目を持っているわね。」
コノハが頷く。
「!せい!」
ニオが先ほどと同じ一撃を放つ。
マリが中段の構えから左腰側に一旦刀を引き、左足を前に出すと同時にかち上げニオの槍の軌道を上にズラす。
「!せや!」
マリは振り終わる時には顔の右側、右肩少し上に手を持って行き、右足を出し振り始める。
ニオは槍を引きながら半歩下がる。
ニオの前をマリの剣が振り切る。
「「「おおおお!」」」
周囲から歓声が上がる。
「かち上げからの振り下ろしじゃの。」
「あの速度の槍をかち上げて振り下ろすのも常軌を逸していますね。」
エルヴィス爺さんとゴドウィン伯爵が魅入る。
「今のが?」
ジーナも魅入っている。
「タイ捨流。燕飛の派生ね。
あれは本来は剣同士の時に相手が中段からの攻撃をする際に剣を上段に振り上げたと同時に相手の顔目がけて刺突をし、相手を仰け反らせて隙を作り、袈裟斬りで一刀両断する技なんだろうけど。
まさか槍相手にするとは・・・」
コノハがため息をつく。
「型見せ!三本目開始!」
審判のテトが両者の中間で宣言する。
ニオは頭の上、上段に構え刃先を少し下にし構える、マリは下段に構えている。
先に動いたのはマリ、下段から突きをしようと右足を踏み込む。
とニオが上段から横に槍ごと振り下ろしマリの刀に当て、突き上げを抑える。
そしてニオが右回転で刀を抑えながら外に持って行く。
マリの刀と槍の先が外側に持って行くとニオが一歩踏み出すと同時に槍を勢いのままに回転させ、中腰になりながら柄の底をマリの顔に向け下から突く。もちろん寸止めです。
「!せい!」
「「「おおおお!」」」
周囲から歓声が上がる。
「なるほどの。」
「先に攻撃させ、剣の力を外に向かわせて隙を作り、柄の底を打ち込むという・・・槍の特性を生かしているのでしょうね。」
エルヴィス爺さんとゴドウィン伯爵が魅入る。
「・・・」
パラスは何も言えずに魅入っている。
「あれは宝蔵院の到用からの攻撃ね。
本来なら槍の長さを利用して刀よりも強い力を上からかけ払い落すんだけど。
マリ相手には通じないから瞬時に槍を回転させて外に振って隙を作り、柄の底でダメージを与えたと。
槍の特性を生かしての良い攻撃ね。」
コノハがため息をつく。
「型見せ!四本目開始!」
審判のテトが両者の中間で宣言する。
先ほどと同様にニオは頭の上、上段に構え刃先を少し下にし構える、マリは左腰の鞘の上に平行に右手だけで構えて左手は峰に添えている。
するとマリが歩幅は狭いがニオに向かって歩き出す。
ニオは上段の構えから右回転させマリの左上から頭に向け払落しにかかる。
とマリが右手で持ち峰に左手を添えたまま槍の柄の部分に真横から当て、槍を受け流し、もう一歩踏み出し、右に一瞬溜めた力をそのままにニオの首に突きをする。もちろん寸止めです。
「!せや!」
「「「おおおお!」」」
周囲から歓声が上がる。
「なるほどの。」
「槍の威力を流してさらに踏み込んで喉への致命傷ですか。」
エルヴィス爺さんとゴドウィン伯爵が魅入る。
「今のも私用ですか?」
ジーナも魅入っている。
「タイ捨流。石厭の派生ね。
あれは本来はマリの持つ刀に長さが短い小太刀や小刀で対応する技のはずなのに・・・
槍相手にするのね。」
「なるほど。」
ジーナが頷く。
「型見せ!終了!」
ニオとマリが構えを解き、伯爵に向け礼をする。
すると周囲から拍手が起こる。
「うむうむ。2人とも良かったの。」
「見ごたえがありましたね。」
両伯爵はご満悦。
「次!槍の特性解説!」
ステノ技研達が何やら物を設置するのだった。
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