第936話 楽しい夕飯。(綺麗になりましょう。)
宿屋にて。
人数が多くなったので同じ階の同じ間取りで別屋を借りて対応していたが、皆が同じ部屋に集まっていた。
そんな中、武雄は今は夕飯作りに精を出していた。
「よし。あとは揚げるだけかな?
スープもプリンも用意は終わりましたね。
タルタルソースも作ったし・・・パンは平気ですか?」
「はい。
焼いています。
所長は外カリの中フワでしたね。」
ブレアがフライパンでパン焼きをしていた。
「流石に毎日してればわかりますね。
ベルテ一家の好みは聞きましたか?」
「ええ。
ですが、特にないと。」
「遠慮しているんですかね。
ま。しょうがないですか。」
「これからでしょうね。
・・・それよりは所長の料理を食べてどういう反応をするか・・・ククク。楽しみです。」
「まぁ。私の調味料は万能ですからね。」
「ええ。クゥ殿やビエラ殿のドラゴンと王家を魅了する魔法の調味料ですからね。」
「その言葉だけだと私のマヨネーズが凄い物のように感じますね。」
武雄が考える。
「いや。実際凄いんですけど。」
「誰でも出来るんですけどね。」
ニルデとジルダはフォレットとフローラに湯浴み場で洗われている。
「あ!こら!大人しく!・・・あ!オレンジを食べない!
誰!?オレンジを湯浴み用の桶に入れたの!?
ほら!頭からお湯をかけ・・・こっちにかけるなー!」
「「あはははは♪」」
フォレットの怒号が・・・いや楽しそうでなによりです。
「もうすぐ出て来そうですね。
さて油に火を入れますかね。」
武雄が湯浴み場の方を見ながら言う。
「主~。さっき買って来ていた中にあったオレンジがないんですけど?」
ミアがウロウロしながら武雄に聞いて来る。
「あっちに行きましたよ。」
武雄が湯浴み場を指さしながら言う。
「いつの間に足が!?
これだから野生のオレンジは・・・」
「え?・・・いや・・・ミアさん?オレンジに足が生えるのですか?」
武雄が冗談で言ったつもりがとんでもない答えが返って来て焦る。
「いえ?私は見た事ありませんが、木だって移動するんです。
オレンジが移動しても不思議ではありません。
あ~オレンジ食べたかったです。」
ミアが残念そうに食卓に移動する。
「・・・」
武雄が難しい顔をさせて首を捻りながら考え込んでしまう。
「いや。所長。流石に木は移動しないかと。」
ブレアが苦笑しながら言う。
「・・・こういう時のミアは私に嘘を言った事がないんですけど・・・」
「・・・少なくとも私達は見た事はないですね。」
「「ん~・・・」」
武雄とブレアが軽く悩むのだった。
食卓では夕飯が出来るのを残った面々がのんびりと待っていた。
「あの・・・マイヤー殿。」
ボーナがマイヤーに声をかける。
「はい。何でしょう。」
「何で。貴族であるキタミザト様が夕飯を用意しているのでしょうか?」
「・・・不思議でしょう?
まぁ旅の最中は各々が持ち回りでしていたんですけどね。
大きな街に着くと所長がし始めるんですよ。
それに所長以上に料理が上手い者が居ないのもまた事実なんです。」
「はぁ・・・」
マイヤーの説明にボーナがあいまいな返事をする。
「良い匂いがする。」
エンマが大人しくしながら武雄の料理の匂いを嗅いでいる。
「今日は所長が好きな鶏のモモ肉を買いましたからね。
確か・・・から揚げでしたか?あれを作っているんでしょうね。
酒のツマミに最高なんですよ。」
アーリスが楽しそうに言う。
「モモ?ムネではなくて?」
「ええ。所長はモモが好きなんですよ。
ムネにはあまり興味がないのか好まないですね。」
「・・・その言い方・・・誤解を招きますよ?」
アンダーセンが訝しがりながらアーリスを見る。
「ちゃんとモモとムネと言いました。
太モモと言っていないから問題ない!」
「あぁ・・・アリス殿の前では止めてください・・・」
アンダーセンがガックリとしながら言う。
「時と場所はちゃんと見ているから平気!」
「時たまミスるでしょうが。」
「時たまね。」
「あぁぁ・・・」
アンダーセンが頭を抱える。
と疲れた顔をさせたフォレットを先頭に4人が帰って来る。
「キタミザト殿。戻りました。」
「楽しそうでしたね。」
「子供って大変なんですね・・・」
フォレットがしみじみと言う。
「ふふ。皆子供の時があったのです。
親に迷惑をかけて大きくなるのですから昔していたことを今される側にいるだけですよ。」
「ん~・・・
今度親に手紙書こうっと・・・」
フォレットが昔を思い出し改心するのだった。
「ニルデ。ジルダ。皆さんにご挨拶。」
「はい。ニルデと言います。
よろしくお願いします。」
「ジルダです。
よろしくお願いします。」
2人がお辞儀をする。
「はい。
えーっと・・・マイヤーさんから改めて自己紹介しますか。」
「はい。
私は王立研究所 第二研究所 総監。キタミザト所長の部下でカルロ・マイヤーと言います。
実質の所長の補佐ですね。
所長がこんななのでお守り役としています。」
「うん。間違っていないですね!」
武雄が認める。
「はぁ・・・よろしく。」
「次は私ですね。
王立研究所 第二研究所 試験小隊隊長をしている」
順々に自己紹介をするのだった。
・・
・
「最後に私の精霊であるパナ。
魔物の通訳をするミア。
そしてビエラは・・・どういう位置付けでしょうかね?」
「あ~♪」
「主。ご意見番らしいです。」
「うん。まぁのんびり屋が1名ですね。」
「あ!?」
「はいはい。ビエラはもうその位置には行けませんよ。
大人しく食っちゃ寝をするしかないんです。」
「・・・」
ビエラの抗議にミアが嗜める。
「以上です。
では。食べましょうか。」
「はい。」
皆が席に座る。
「頂きます。」
武雄の一声で皆が食べ始めるのだった。
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