表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
945/3614

第933話 裏路地から匂いがする。2(カファロ勢力圏にて。)

「婆ちゃん。連れて来た。」

少女が路地の奥の2階建て家の入り口に声をかける。

「来ましたか。

 どうぞどうぞ。」

家の奥から声がかかる。

「失礼します。」

武雄が玄関を入るとそこには顔の半分を包帯で隠し、片耳を無くしている首輪をしたエルフの女性が居た。

武雄が一瞬驚いてしまう。

「ふふ。こちらにどうぞ。」

エルフの女性が武雄達を対面の席に招く。

「失礼します。」

武雄とマイヤーが席に座る。

「私はアナベルと言います。

 ニルデから聞きましたが、このお茶を飲みたいと?」

「はい。

 匂いに釣られまして。」

「・・・ここはカファロ一家の勢力圏です。

 なかなかに危ない場所に入ってしまったのですが?」

「お茶を飲むぐらいで命を狙われる覚えはありません。」

武雄が正直な所を言う。

「それは確かに。」

アナベルが苦笑しながら頷く。

「私はアズパール王国から使節団を任せられたキタミザトと言います。

 こちらは側近です。

 あと。子供です。」

「・・・」

「あ。」

マイヤーは会釈し、ビエラは手を上げて答える。

「・・・そうですか。

 ま。我々もドラゴンに盾突く気はありません。

 穏便に帰って頂ければ結構。

 この地での騒動は私達の命を散らしかねないので。」

「わかりますか。」

「ええ。昔ドラゴンは見ていましたからね。わかります。

 これだけ近くに居ればエルフの者ならわかるはずです。

 それにしてもその見た目との差があり過ぎでしょう。

 これは貴方が?」

「はい。頼んでこの体に成って貰っています。

 まぁ。この子は人間社会を見学するのが目的なので私に同行しています。

 偽装は当然必要だと思っていたのですが・・・欺けなかったですね。

 ドラゴンだと最初からわかっていたのですか?」

「いえ。最初は大通りで特殊な魔物が居る気がする程度。

 で。ニルデが人間の旅人がお茶を飲みたいと言って来たので、もしかしたらと思って許可したという所です。

 ま。家の前に来れば流石にドラゴンはわかります。」

「そうですか。」

「じゃ。待望のお茶を出しましょうか。

 温かいのと常温があるけどどちらが良い?」

「私は温かいのを。

 マイヤーさんは?」

武雄がマイヤーを見るも目線を合わせるだけで何も言わない。

「温かいのをお願いします。」

「わかりました。

 ニルデ。持ってきなさい。」

「は・・・はい。」

アナベルがニルデに言うと少し緊張した顔をさせて奥に行く。


「さて。何か聞きたい事がありそうですね。」

「この街区は裏家業の支配下にあると伺っています。」

「そのとおりです。」

「この街区は何ですか?」

「捨て子。犯罪者。身寄りのない者が住む街区。」

「アナベル殿も?」

「ええ。私は主殺しをしまして。」

「何をされたんですか?」

「・・・頭の上から皮膚が溶ける薬を・・・

 なので反撃して屋敷を飛びだしここに居るという訳です。」

アナベルの説明を聞いて武雄が目を細める。

「アズパール王国の方には厳しいですか?」

「奴隷と言われて真っ先に想像した過酷な想像通り過ぎて嫌になっているだけです。

 良くもまぁそんな事が出来るものだと・・・まだ手籠めにしようとしたとかなら気持ちはわからなくもないですけどね。」

「それはそれで酷な話ですけどね?」

「だから『まだ』わかるのです。

 被害を受けた方は相当のショックなのは理解しています。

 そういう行為をしたいなら専門の店にでも行けば良いと思いますよ。

 わざわざ奴隷にする必要はないと思います。」

「そぉ。

 貴方は奴隷をそういう風に見ないのね?」

「我が国の大部分は・・・いや少なくとも私と私の部下や私に近い者は奴隷をそのように見ないでしょうね。

 ですが、私も実際の所、奴隷を買いに来たので、奴隷売買についてどうのこうのと言える立場にはないですが・・・少なくとも私達は優秀な部下を探していてその手段として奴隷売買を見に来ました。

 一生懸命に働いてさえくれれば給金も出しますし、25年で奴隷契約を解除します。 

 それに自由時間も法に触れないように好きに過ごしてくれて良いと思っています。」

「ふーん。

 私もこうなる前に貴方に会いたかったですね。」

「すみませんと謝るべきでしょうか?」

「貴方に謝られても。

 でも貴方に買われる奴隷が少し羨ましいのは確かです。

 あ。来ましたね。」

ニルデが不揃いのコップにお茶を淹れて持って来る。

「こちらです。」

「頂きます。」

武雄は躊躇なくそのコップを持ち上げ口に近づける。

「え?」

武雄がピタッと止まる。

「?所長どうしましたか?」

マイヤーが聞いて来る。

「いえ・・・」

武雄がマジマジと淹れられたお茶の水面を見てから一口飲む。

「・・・美味い。」

武雄が一言呟く。

「「え?」」

その言葉にアナベルとニルデが驚く。

「うん・・・うん・・・」

武雄が一口飲んでは頷き。また一口飲んで頷く。

「貴方はこれを美味しいと思うのですか?」

アナベルが訝しげに聞いて来る。

「え?・・・ええ。美味しいと思いますよ。

 珈琲に似ていますね。

 ただ薄くて・・・アメリカン?いやマイルドに近いのか・・・そしてほのかに甘みも感じられる?

 不思議です・・・でも・・・うん。十分に美味しい。」

武雄がにっこりとして今度はゆっくりと飲み始める。

「所長がそんな顔をされるとは・・・

 では。私も頂きます。」

武雄の評価を伺っていたマイヤーが飲む。

「ん~・・・判断が難しいですね。」

こちらには微妙なようだ。

「タケオ。私も飲みたいです。」

胸ポケットのパナが顔を出す。

「では。人間大になりなさい。

 小さいままでは失礼でしょう。」

「はい。」

武雄の胸ポケットから出たパナが人間大になる。

「・・・こちらは?」

アナベルが顔を若干引きつらせながら聞いて来る。

「私の精霊のパナと言います。

 で。こっちが。」

「ミアでーす。よろしくおねがいします。

 主。私も飲みたいです。」

ミアも顔を出して武雄に言ってくる。

「え?・・・ミア。麦茶がダメだったでしょう?

 あの感じですよ?」

「え゛・・・じゃあいりません。」

ミアが胸ポケットに引っ込む。

「あ?」

「ん?ビエラもですか?」

「あ。」

ビエラも飲みたいようだ。

「えーっと・・・すみません。おかわりが1つと新たに2つお願いします。」

「あ!わかりました!」

ニルデが奥に行くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ