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第931話 冒険者組合で打ち合わせ。3(皆を出て行かせて。)

武雄とマイヤーは皆が居なくなった小会議室でお茶を飲んでいた。

ミアとパナとビエラは武雄の傍で寝ている。

他の面々はというと、ヴィクターとジーナの時と同じようにベルテ一家の旅支度を買いに行かせ、夕食の買い物もお願いし、宿で集合という事にしてさっさと退出させていた。

もちろん、その場の全員に武雄はケア×35かけて今日の疲れを取らせていた。

ベルテ一家は一様に武雄の異様とも言えるケアの使用回数に驚き、小隊の面々は苦笑していたのは言うまでもない。


「で?なんでマイヤーさんが残っているんですか?」

「キタミザト殿。どこ行くんです?」

「・・・散歩です。」

「なら私も同行します。」

「・・・」

「・・・」

さっきからこの2人は2回程同じ事を話していた。

「はぁ・・・付いて来ても楽しくはないですよ?」

「仕事ですから楽しいかは問題ではありません。」

「・・・」

「・・・」

「先の会談で出た保護施設という単語。マイヤーさんはどう見ますか?」

武雄が目線を反らせながら聞いて来る。

「・・・言葉選びが重要でしょうが・・・面倒ですので簡単に一番酷い言い方をすれば廃棄場でしょう。」

「やはりそう見ますか。」

「はい。そもそも闘技場の敗者を住まわすのです。

 まともな原型を留めているのかすら怪しいですね。

 所長はそこに行くと?」

「・・・王都で話したスライムの事業を覚えていますか?」

「ええ。

 エルダームーンスライムがスライムを作れ、5種の体液を使った事業ですね。」

「スライムには3形態があるそうです。

 スライム。エルダースライム。エルダームーンスライム。

 エルダームーンスライムは人型が3体、鳥型が1体居ます。

 そして・・・エルダースライムの時に取り込んだ死骸の形を元(・・・・・・)にエルダームーンスライムになります。

 エルダースライムからエルダームーンスライムになるまでは数十年から百年だそうです。」

「・・・そうですか。

 難儀な物ですね。

 なら所長はそれを探しに?」

マイヤーが驚きも感情の起伏はさせずに頷いただけで聞いてくる。

「・・・素体の調達です。

 人型のエルダームーンスライムを見ていると、街中に居ても違和感がなく、意思疎通が容易です。

 今の4体は守りたいですが、絶対守れるという保証はありません。

 今後数代に渡ってあの地を治めるのに、エルダームーンスライムの協力は欠かせないでしょう。

 孫の代、孫の孫の代でも有益な情報を手にする為には今、手を打たないといけないと思っています。」

「・・・難しい選択ですね。」

「ええ。

 墓荒らしをする気にはなれませんし、アズパール王国でするわけにもいかない。

 私は我が儘で独善的ですね。

 アズパール王国の民に対しては絶対にしないであろう行為を、他国の人間以下ならし易い・・・調達が容易い(・・・・・・)と考えたんです。

 私もカファロ殿も変わりませんね。

 奴隷を物として考えているんですよ。」

武雄が苦渋の顔をさせる。

「所長も陛下も・・・いや、王都に居る各局長全員が王国の繁栄の礎について考えています。

 そして行動を起こし、その結果の引き起こされる惨劇や苦悩を十分に理解している。

 所長がされようとしている素体の調達もまた未来の為。そして、その者達は施設に来るまでの経緯をわかっての調達です。

 見なくても良い物を見て、聞かなくても良い事を聞き苦悩はあるでしょう。

 ですが、その道を超えた所に確たる信念と理想があるから。

 その理想が、未来の子供達により良い生活を保障出来る物だから、所長はする事を選んだのです。

 私はその決定をする立場にいないですが、せめて見守る事はしたいと思います。」

「マイヤーさんこそ、見る必要も聞く必要も無い物を体験する事になりますよ?

 人間の暗部。カファロ殿は闘技場の受け皿(・・・・・・・)と言いましたが、実際はどんな運営がされているかはわかりません。

 最悪もっと悪しき物を見る羽目になるかもしれません。」

「それでも、お一人で見るよりかは良いでしょう。」

「・・・損な役回りをさせてすみません。」

「給料の増額を期待しますよ。」

「もう少し収入が増えたらですね。」

武雄とマイヤーが渋い顔をさせながらお茶を飲む。

「さ、所長。行きましょうか。

 グダグダしていても始まりません。」

「覚悟を決めますかね。

 はぁ・・・出来るだけ精神的な負荷が無いようにしなきゃなぁ・・・

 ま、まずはどこにあるかの聞き込みからですね。」

武雄が嫌々席を立つのだった。


------------------------

雑貨屋にて。

「やはりナイフはこの戦闘に有利そうなやつでしょうね。」

「いやいや。ナイフは戦闘より料理や駆除対象を捌くのに使うんだ。

 こっちだろう。」

「それだと小さいから間を取ってこれでしょう。」

「「それはない。」」

「ええぇぇぇ・・・」

ベイノンとブレアとアンダーセンが楽しそうに短剣選びをしている。

「「ん~・・・」」

ベルテ一家の男性ドナートとジッロは「楽しそうに選んでるなぁ」と苦笑していた。

「えーっと・・・一通り揃えられましたか。」

バートが聞いてくる。

「はい。

 ですが、お金は・・・」

「あぁ。所長から頂いていますから問題ありませんよ。」

バートが答える。

「そ・・・そうですか。」

ドナートとジッロは「いくらですか?」とは聞けないのだった。


フォレットとボーナ、エンマ、フローラは買う物も選び終え、店員に着替えの了承を得て着替えていた。

「ん~・・・」

フォレットが着替え姿を見ながら唸っていた。

「あの・・・何かあるのですか?」

「ん?流石はエルフだと思ったのです。

 何を着ても見劣りしないから羨ましい限り。

 私もあと少し足が長ければなぁ。

 ドレスが似合ったかもしれないと。」

フォレットが苦笑しながら言う。

「え?そうなのでしょうか?」

ボーナが自分の着替えた姿を見ながら言う。

「気にしないでください。

 ただ単にそう思っただけですよ。

 はぁ・・・エルフは高身長でスタイルもばっちり。これは世の男共が羨望を抱くのもわからなくもないと思っただけで・・・

 全く男共は・・・」

フォレットがヤレヤレという風に手を上げる。

「あの・・・そう言えば、キタミザト様も含めて部下の方々は私達に何も好奇な視線を向けないのですが・・・

 確か、アズパール王国でもエルフは珍しいのではないかと思うのですけど、なぜなのでしょうか?」

フローラが恐々とフォレットに聞いて来る。

「王国に行けば晒されると思いますけどね・・・その辺は慣れて貰うしかないですね。

 珍しいのは確かなので。」

「はぁ。」

「それにここに居る人員は問題ないですよ。

 キタミザト殿は既に部下にエルフがいますし、私達も寝食を共にしています。

 外見的に多少違っても、意思も思考も特に私達と変わりがないのは知っています。」

フォレットが「問題ない」と言ってくる。

「はぁ。」

フローラが生返事をする。

「あの・・・あの小さい首輪をした女の子がいましたよね。」

エンマが聞いて来る。

「ビエラ殿ですね。

 キタミザト殿がこの旅で買ったと言われているけど、どうしましたか?

 あのくらいの獣人の子も可愛らしいですよね。」

「・・・いえ。獣人ですか・・・」

エンマが目線を下げる。

「会話は出来ないけど本人は頑張って覚えようとしているし、聞き分けも良いから問題ないですよ。」

フォレットがニコっとする。

「え・・・ええ・・・」

エンマがぎこちなく頷くが「いや・・・あれドラゴンでは・・・」思っている。

エンマがボーナとフローラを見ると、2人とも首を振っている。

「それに彼女もキタミザト殿の配下だし、特に問題はないです。

 と・・・あと決めないといけないのは武器ですね。」

「「「武器!?」」」

3人が驚く。

「ええ。剣とかではないけど。

 ナイフくらいは良いかな。旅で使うだろうし。」

「いやいやいや。奴隷に武器を持たせるのですか!?」

ボーナが驚いて聞いて来る。

エンマとフローラも驚いている。

「え?・・・キタミザト殿は前からそうです。

 確かに貴女達は奴隷かもしれませんが、キタミザト殿の部下です。

 自身に危害を加えられた際は対応するのが普通だと思いますが?」

「も・・・問題ないのですか?」

「何が問題なのですか?」

ボーナの質問に、フォレットがわからないような顔をわざとして質問を返す。

「いえ・・・その・・・主に戦いを仕掛けたり・・・」

「?・・・何の為ですか?

 キタミザト殿は25年で貴女達を解放すると宣言しています。

 わざわざ反抗して延ばしたいのですか?」

「いえ・・・そういうわけでは・・・

 というより私達が襲っても問題ないのですか?」

「それは問題です。ですが、キタミザト殿は人間種では強い方です。

 こう言ってはあれですけど・・・闘技場での戦いは見せて貰いました。

 あの程度の攻撃ならキタミザト殿は問題なく対応されます。

 それにキタミザト殿の傍には誰かいますから、まずは私達で対応する事になると思います。

 私達と・・・しますか?」

フォレットが最後は目を細めてゆっくりとした口調で少し低い声で返す。

「は・・・反抗なんてしません・・・」

ボーナが緊張しながら答える。

「なら別に武器を持っていても問題ないです。

 反抗する気がないんですから。」

フォレットが頷く。

エルフの3人は「それで良いのかなぁ」と緩い認識をしている武雄の連れに首を傾げるのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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