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第927話 闘技場にて観戦を。6(タヌキとキツネとトンビかな?)

施設長が扉をノックすると中から許可が下りたので扉を開け入室をした。

「失礼します。

 ロターリオ・カファロ殿。アズパール王国 使節団の方をお連れしました。」

施設長が入り、武雄とマイヤーが入って来る。

応接セットにはカファロとエマが立って出迎えていた。


ちなみに武雄のお付は今回は男性陣でくじ引きにしたのだが、やっぱりというかマイヤーが当たりを引いた。

マイヤーは「今回は休みたかったなぁ」と皆の前で愚痴っていたりする。


「失礼します。

 ロターリオ・カファロ殿。

 私はアズパール王国 国王より使節団を率いるように申し付かりましたタケオ・エルヴィス・キタミザトと申します。

 この者は私の側近ですので、紹介は省かせて頂いてよろしいでしょうか。」

武雄は軽く会釈をしてマイヤーの説明を省く。

「ええ。

 構いません。

 さ。使節団殿・・・いや。キタミザト殿でよろしいか?」

「はい。

 私からはどうお呼びしましょうか?」

「カファロで結構。」

「はい、わかりました。」

「では、こちらへ。」

武雄とマイヤーはカファロが手をかざした対面の席に移動する。

「さ、お座りになってください。」

「失礼します。」

武雄が座るとマイヤーも座り、エマとカファロも座る。

そして周りの男達がお茶を配膳し出すのだった。


「カファロ殿。この度は私の急な面会の要請を受けて頂きありがとうございます。」

武雄が軽く頭を下げる。

「いえ。それにしても当方の奴隷が気に入ったとか。」

カファロが言ってくる。

「気に入った・・・ん~・・・」

武雄が目線を反らす。

「違うので?」

「人と成りを知らないのに気に入りはしません。

 どちらかと言えば・・・憐れみや同情でしょうか。」

「ほぉ。アズパール王国から来られるとそう思われるのですかな?」

「生活習慣の違いでしょう。

 貴国がどうのとか我が国がどうのとか・・・国政を比べても意味はありません。

 極論を言えば、私達はアズパール王国が住み易く、カファロ殿達はこのドローレス国が住み易いだけで、自国が素晴らしいから他国も自国のようになれなんて・・・お互いに言える訳もないです。」

武雄は最初はカファロを見ていたが、最後には目線を落とし言う。

「それは・・・まぁそうでしょう。」

カファロが攻撃の材料を早々に消されて頷くだけになる。

「キタミザト殿。私からもお聞きしてよろしいですか?」

「貴女は?」

「エマと申します。

 キタミザト殿から見て奴隷はどう映りますか?」

「随分とツッコんで聞きますね。

 そういった事はこの場ではない場所で互いに言うべきでしょうが・・・あくまで個人的な事でよろしいですか?

 今から私が言う事は私個人の意見で母国が思っている事ではありません。

 その辺を念押しさせてください。」

「構いません。

 使節団を任される方の意見を聞きたいです。」

エマがにっこりとする。

「・・・雇用契約であろうと奴隷契約であろうとも人を集める方法としては間違っていません。

 必要な人材をどう見るかは各々の判断として、それを買取金額に反映させるのか、給料に反映させるのかの違いでしょう。

 待遇については雇い主がどう思うかによると考えます。」

「なるほど。

 キタミザト殿は奴隷を容認するのですか?」

「容認・・・その表現は難しいですね。

 私が所属する国家は奴隷を認めていません。

 他国で契約をしようとも国内に戻れば最長25年で解放する事が法律で決められました。」

「へぇ。」

武雄の説明にエマが目を細める。

「私は国の法律を守る側に居ます。なので基本的に奴隷を容認はしません。

 ですが、25年間お仕事をして頂ける優秀な人材が手に入るのなら奴隷売買も人材を集める方法としてはありなのだと思います。

 事実私はこの街に来て奴隷を買おうと思っているのですからね。」

武雄が真顔で返す。

「ふむ。それの第一弾がうちの奴隷という訳ですか?」

カファロが聞いて来る。

「カファロ殿・・・私は別に戦闘が出来る者は欲していません。

 あの奴隷達が欲しいと思ったのはただ単に見ていて憐れんだからです。

 先の戦闘は見ました・・・ハッキリ言ってしまうと、もう戦士として使えないでしょう。

 何日間戦ったのかは知りませんが、もう戦えないのなら残りの人生はどこかの片田舎でのんびりと余生を過ごせば良いと思ったまでです。

 それにあの若い風貌の者・・・寿命が来るまであの状態なのですよね。

 わが身に置き換えると絶望しかないでしょう。

 ならせめて風景が良い場所で過ごして欲しいと同情したのです。」

「・・・キタミザト殿。その為に欲しいと?

 こう言っては何ですが、それは自己満足なのではないですかね?」

「ええ。否定はしません。

 性欲にも似た自己満足・・・言葉にすれば優越感という欲求でしょう。

 自分が他者より優位であると誇示したいという欲求は何も貴族や武官、文官の特権ではないですよ。

 そこら辺の子供だって持っている。

 いや・・・子供の方が優越感という物の刺激に耐えられないでしょう。

 だからイジメがある。だから他者を貶めるのですよ。

 でも、この欲求は無くても生きていける。我慢出来るか出来ないかは個人差ですけどね。

 お二方?違いますか?」

武雄がカファロとエマを見る。

「ふふふ。あははははは!」

エマが大笑いをする。

「エマ!?」

カファロが若干驚く。

「はぁっ。キタミザト殿。面白い事を言われるわ。

 性欲にも似た自己満足。うんうん、なるほどなるほど。

 ふふふ。」

エマが楽しそうに笑う。

「私は至極真面目に言いましたがね。」

武雄が微笑をたたえながら出されたお茶を飲む。

「キタミザト殿。今夜私と一晩語らいませんか?

 貴方は面白いわ。」

エマが妖艶な笑顔で武雄に問いかける。

「エマ殿は魅力的ではありますが・・・今回はご遠慮しましょう。

 私は最近婚約をしましてね。国に戻ったら挙式なんです。

 その前に他の女性の味を知るつもりはありませんよ。」

武雄が軽く指輪を見せる。

「ふふ。固いですね。

 多少は火遊びをした方が男の価値は上がると思いますよ?」

「私がここに居る時点で、我が国は国を挙げての火遊びの真っただ中ですからね。

 私が真っ当に仕事をこなさないと大火事に成りそうです。

 申し訳ありませんね。

 なんでしたら我が国に来られますか?

 私の知り合いで良い男は・・・何人かいますが、紹介しましょうか?」

「そぉ。ふふふ。

 私は旅はしない主義なんですよ。

 欲しいのなら来て貰うか買うのが信条でしてね。」

エマがクスクス笑う。

「そうですか。それは失礼しました。

 私がもし婚約者も居なく、国家に所属していなかったらいくらで囲いましたか?」

「そうね・・・金貨5000枚は出したわ。

 それで私の婿になって貰いましょうかね。

 もちろん私の今の旦那は離婚するわよ。

 ふふふ。」

「そりゃまた凄い大金です。

 惜しかったですね。アズパール王国で採用される前にお会いしておけば大金持ちでしたね。」

「ええ、そうね。

 今からでも遅くはないわよ?」

「エマ殿、ご勘弁を。

 私にも立場はありますから。

 それにその笑顔を見ていると魅了されそうです。

 早々にお暇いたしましょう。」

「そう?ふふ、面白いわね。

 あ、そうだ。ロターリオどうするの?

 さっさと終わらせなさいよ。

 キタミザト殿の邪魔はしてはいけないわ。」

「エマ、お前が話を壊したんだがな。

 キタミザト殿、こちらとしては奴隷については売るのは構わない。

 金額は・・・そうだな。金貨140枚が相場だろう。」

「そうですか。」

武雄が金額を言われても何も感情を出さないで頷く。

それにもう3人とも口調を気にもしなくなっていた。

「あら?安いわね。」

「中古で傷物だからな。」

「ならこの会談が面白かったから私が金貨40枚を肩代わりするわ。」

「エマ殿、それはいけませんね。

 そのお金はエマ殿の楽しみに使ってください。

 カファロ殿、金貨140枚です。」

武雄が革袋を2つリュックから取り出し、中身を出して並べる。

「おい、確認しろ。

 それと奴隷契約書を屋敷から持ってこい。

 施設長、奴隷を連れて来てくれ。」

カファロが側近と施設長に指示を出し動かし始める。

「キタミザト殿、アズパール王国はどんな所なの?」

「ん?旅をする気になりましたか?」

「する気は無いけど気になるわ。

 奴隷が来るまで話していましょう。

 もちろん我が国の事も聞いて良いわよ。

 それでキタミザト殿、アズパール王国はどんな人材がいるのかしら?

 中々良い人材に会えないのよ。」

「人材不足はどこも一緒なんですね。」

「あら?そうなの?うちだけだと思っていたわ。」

エマは武雄が気に入った様だった。

その様子をカファロはため息を付きながら見守るのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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