第916話 奴隷商組合入店。2(知り合いに会うとはね。)
「はは・・・まさか若旦那だとは。」
「おっちゃんこそ・・・なんでこんな所に・・・というより畏まった服着ているという事は。」
「はい。
私はガエル・セスコ。
奴隷商組合。副組合長をしています。」
「そうでしたか。
私はタケオ・エルヴィス・キタミザト。
まぁ貴族になってしまいましたよ。」
「ほほぉ。
出世なさいましたね。」
「ええ・・・まぁ私の事をお話しますか。」
「はい。お聞かせ願います。
あ。皆さま。お座りになってください。」
セスコに勧められ皆が座り、武雄が経歴(セイジョウに話した内容)とアズパール王国の奴隷契約条項について話すのだった。
・・
・
「アズパール王国も人事を思い切ったというか・・・不思議な事をするものですね。
いや。そう言っては失礼でしたね。
相応の実力があったのでしょう。」
セスコが顎に手をやり興味深そうに言ってくる。
「まぁ結局は運なんでしょうね。
・・・ほんと与えられてる給料は魅力的なんですよ。
仕事の方は部下任せですけどね。」
「ははは。それはこれから苦労をするのでしょう。
ですが、若旦・・・失礼、キタミザト様なら何とかなりそうな気はしますね。」
「セスコ殿。呼びやすい方で構いません。
特に様付けに拘ってはいませんので。」
「わかりました。
若旦那。」
「はい。そっちで構いませんよ。
で。セスコ殿はなぜあの時カトランダ帝国に?」
「ふむ。
あの時は貿易協定後、初出荷だったのです。
向こうの受け入れ状態、市場状況、売れ行きと認知度の確認、諸々の調査の為にうちの組合でも上位の販売員達で行っていました。
そして私がその取りまとめを。」
「初めての出荷・・・なるほど。だからヴィクターとジーナがいたのか。」
武雄が思案しながら言う。
「なるほど・・・貴族の風格がありますね。」
セスコは武雄を見て頷く。
「ん?・・・見よう見まねですがね。」
武雄がにこやかに対応する。
「まぁ。そういう事にしておきましょう。
お。そう言えばあの2人はどうされたのですか?」
「畑仕事をさせる間もなく私の執事にしましたよ。
新しい土地で今は執事の学習中です。
あぁ。それと私はもうアズパール王国の貴族ですから実家の方は関与出来ません。
あしからず。」
「はは。その辺は今後の私達の活動によるでしょう。
さて・・・本題をよろしいでしょうか。」
セスコが真面目な顔をさせる。
「そうですね。
私達の身の上はこのくらいで良いでしょうか。
・・・私達は陛下より兵士に向いているであろう奴隷を2名か3名購入するよう指示を受けています。」
「若旦那にその役目が行ったのは先の2名の実績でしょうか?」
「はい。
セスコ殿の販売していた奴隷の質の良さをアズパール王国の方々は見て依頼をしてきました。
ですが、そういった目利きは私は持ち合わせてはいない。
なので質も取り扱いも丁寧だったセスコ殿を頼ろうと思ったのです。
セスコ殿。見繕って頂けますか?」
「・・・ふむ・・・
若旦那。もし私以外でしたらどうしていましたか?」
「そうですね・・・
市に見学はしましたが・・・見繕って貰うのはしなかったかもしれませんね。
その人がどんな立場であろうと実際に取り扱いしている様は見てはいませんし、それにこっちの肩書を知った状態で売り込まれても・・・ねぇ?」
武雄が目を細めてセスコを見る。
「ふむ・・・条件はどういたしますか?」
「見ますか?」
武雄は以前人事局で見せられた能力要求事項書(仮)をセスコに渡す。
「拝見します・・・ふむ・・・」
「要約すれば、人間種と同等の外見を持ち、国内法を順守し、25年間アズパール王国で兵科に従事する事となります。
あとは私の判断だそうです。」
「若旦那が言われた事に身体能力が高く、アズパール王国で兵士に成なれるような人格者となるでしょうか・・・
なかなかに厳しい条件ですね。
予算はどの程度でしょうか。」
「買いつけに金貨290枚ですね。
もちろんこの中にセスコ殿の取り分は含まれています。
あと金貨10枚で衣服を買い与える予定です。」
「ふむ・・・
外見が人間と同等・・・あの2名と同様の種族が好ましいのですね?」
「ええ。」
「・・・ん~・・・」
セスコが腕を組んで悩む。
「あと私の個人的な方で農業が出来るエルフを数名。
金貨700枚でお願いしたいんですけど。」
「な!?」
セスコが驚く。
「それとこれが上手く行けば次回があった時はセスコ殿を仲介するように言っておきますが?」
「それは・・・魅力的ですね・・・」
セスコが益々難しい顔をさせる。
「いかがでしょう?
まぁ王都からの依頼も私からの依頼も金銭的には大変そうではありますが・・・」
「それは・・・いくらか猶予はありますか?」
「・・・やるなら依頼しますが、断るならこれから奴隷商の店を回って見繕わないといけません。
私は他国の人間なんです。向こうに仕事を置いて来ていますから滞在日数に限界はありますね。」
「そこを何とか振り絞って頂く訳には?」
「・・・」
武雄が目を瞑って考える。
「・・・」
セスコは真面目顔で見守る。
「おっちゃん。なぜ時間が必要なのですか?」
武雄が片目を開けて聞く。
「・・・実は数日前に奴隷船が着いて、昨日より事前市が開催されています。
たぶん若旦那が欲しがっている人材は・・・」
「もう誰かの手に渡っていると?」
「・・・詳しい出順は覚えていませんが・・・
後で確認もいたしますが、概ねそうなっているかと。」
「そうですか・・・
もし居た場合、他の奴隷商から買う事になりますか?」
「はい。
仲間内なら良いのですが・・・すぐに出立はしないでしょうけども・・・」
「なら最優先は国の方の依頼でお願いします。
エルフについては居れば良いですが、私の個人的な方なので重要度は低くします。
なんならなくても構いません。
明日。また来ます。
それまでに情報を整理してください。」
「・・・わかりました。
この依頼を引き受けさせて貰います。
事前市はいつ見られますか?」
「明日の情報で良さそうなのがあれば見ます。
セスコ殿は私の用以外で本業で買いつけに行かれるでしょうから付き添い程度ですよ。」
「畏まりました。
今日の予定はどうしますか?」
「ん~・・・ないですね。
何かこの街特有の面白い物はありますかね?」
「闘技場がありますが見に行かれますか?」
「・・・闘技場。」
武雄が考えるのだった。
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