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第915話 105日目 奴隷商組合入店。1(やる気の有無が必要です。)

「ここですか・・・」

「「・・・」」

皆が一様に奴隷商組合の事務所を道路の対面から見ながら考えていた。

バートとフォレットがその様子を見ながら「でしょ」と苦笑している。


奴隷商組合の事務所の外観は普通の雑貨屋なのだ。

看板もないし、貼り紙すらない。

店先にも店内にも小物や品物が並べられているのがわかる。

近隣の店との違いは店先の美人の売り子が首輪をしていない(・・・・・・・・)ぐらいだ。


「これはわからないな。」

マイヤーが腕を組んで言う。

「・・・まぁ。良いです。

 外観がどうのこうのは個人の考え方ですよ。

 これで良いならそうなのでしょう。

 さて。入りましょうか。

 えーっと・・・バートさん。どうやって入るんでしょう?」

「店の奥が入り口です。」

「そうですか。」

武雄を先頭に店先に入る。

「御前を失礼します。

 この先は奴隷商組合事務所でございます。

 どういったご用件でしょうか。」

売り子が武雄の前に立つ。

「・・・アズパール王国 国王陛下より使節団を率いるよう言われたキタミザトと申します。

 奴隷市の見学が出来ると門前で言われたのですが、その確認に来ました。」

「失礼いたしました。使節団殿。

 ようこそお出で下さいました。我ら組合にも連絡が入っております。

 先にお進みください。

 中に入ると案内がお聞きすると思いますので、申し訳ございませんが再度御口上の程をお願いいたします。」

売り子が道を開ける。

「はい。」

武雄が先頭になり店内に入るのだった。


------------------------

武雄達を監視している2名はというと。

「・・・ルイ。監視の意味あるのか?」

「ごめん。俺も今そう思っていたよ。」

バロールは武雄が組合事務所に入っていくのを見ながら隣のセイジョウに聞く。

セイジョウも武雄達を見ながら言っている。

「おっちゃん。全然隠れようともしないんですけど!

 ここまで普通に大通りを通って来たし!なにあれ!?尾行とか襲撃とか全く気にしていないよ!?」

「簡単に襲撃をしている街もないと思うが?」

「・・・そう言えばそうだね。

 って違う!何であそこまで普通なの!?

 おっちゃんの周りの人達出来る人達なんでしょう!?」

「信頼しているのだろう・・・彼の御仁は図太いな!

 それに比べて・・・小っちゃい事よ!」

「いちいち比べない!君は俺の精霊!

 もっと主の為に動きましょう!」

「・・・尾行を?・・・無理だな!」

「うん。清々しいくらいに無能だな!」

「お前の精霊だからな!」

「・・・お前は~・・・」

尾行をするんだかしないんだかわからない2人になっていた。


------------------------

その2人を監視する者達は。

少し離れた路地から監視をしていた。

「二研殿は予定通り目的地に着けたようだ。」

「班長。交代です。

 後は我々が。」

路地の裏手から2名がやって来る。

「了解。1周してくる。

 たぶん二研殿が動かないと彼らも動かないだろうが・・・

 目線には気を付けろよ。

 精霊相手に目線を合わせるのは危険だ。」

「了解しました。」

上手く監視をしているのだった。


------------------------

武雄達は事務所内に入っていた。

そこは冒険者組合事務所のような内装で昔の銀行の様な雰囲気のカウンターがあり、対面には受付が座っていた。

と。組合員と思われる女性が話しかけてくる。

「失礼します。

 お客様。本日はどういったご用件でしょうか。」

組合員の女性が聞いて来る。

ちなみにこの女性も首輪はしていない。

「アズパール王国の使節団を率いるキタミザトと申します。

 奴隷市の見学が出来ると門前で言われたのですが、その確認に来ました。」

「使節団殿。ようこそお出で下さいました。

 ご連絡は承っております。

 詳細につきましては担当の者がお話いたします。

 お部屋にご案内いたします。」

女性が先導を始めて武雄達も付いていく。

・・

武雄達は一室に通され女性はお茶を出すと退出していった。

室内を見ると応接室のようだ。

「さて・・・どんなのが来るのか。」

マイヤーも室内を見ながら言う。

「室内戦闘は防御が鍵だからなぁ・・・」

「この面子で訓練してなかったな。」

ベイノンとアーリスが呟く。

「物騒な事を言わない。

 それに室内戦闘になれば一番の足手まといは私ですよ。

 誰か盾役を決めておいてくださいね。」

武雄が呆れながら言う。

「いや。この中での一番の防御持ちは所長なんですけどね?」

アンダーセンが呆れる。

「そうでもないでしょう。

 私はそれしか出来ないですし、取れる手段は2つぐらいです。

 あとは口で何とかするしかないんですよ。

 ・・・他者より能力が足らないからこそ道具を作って並ぼうとする。

 他より組織力が足らないから優秀な人材を集める。

 商店しかり軍団しかり・・・程度の差、必要とする道具の差はあっても求める所は一緒です。」

「人材確保の手段に奴隷売買があってもですか?」

「個人的な感情を除いて考えた場合、雇用契約も奴隷売買も人を集める方法としては間違っていません。

 むしろ元値と生活費のみで良いなら月々の給金より安いかもしれないですよね。」

「そう判断するのですか?」

マイヤーが難しい顔をさせる。

「上っ面の紙に書かれるような情報のみならですよ。

 そこにやりがいだの使命感だのが加味されて組織力が高まります。

 いくら身体能力が高かろうが、やる気がない者は使えないと考えています。

 実際、ビエラなんかはやる気がない筆頭です。」

「あ?」

フォレットに抱かれたビエラが武雄を見る。

「ビエラはどこかの軍に入れても意味は薄いでしょうね。

 国家や集団をこの子達は気にしていていない。

 そんな子を組織に入れると周りが迷惑する物です。

 ならある程度、利害関係を作って、持ち場を作って、後はよろしくとした方がお互いの為です。」

「それが所長の言った人工湖と?」

「それも一つ。

 でも実際はビエラが人間社会を学んで自身で何がしたいか。何が出来るかを考えてからでしょう。

 その時に話し合って双方に利益があるようにすれば良いのです。」

「そうですね。」

「それに極論を言えばビエラだけでなく皆がそうですね。

 移り住んだ街の為、生まれた国家の為、子供の為、家族の為、お金を稼ぐ為・・・それぞれに理由はあるでしょう。

 商売、兵士、文官・・・やり様もいろいろ。

 でも、共通するのは自身の目的にやる気があるという事です。

 言われたからとか、親がやっていたからとか・・・そういう理由では生きれるかもしれませんが、楽しそうではないですし、得てして事業は上手くは行かない物です。

 それにやる気があれば失敗しても何が足りなかったのか考える気になる思います。

 そうすれば少しずつでも物事は上向いて行くでしょう。」

「「そうですね。」」

武雄の言葉に皆が頷くのだった。

と扉がノックされ男性が入って来る。

「失礼いたしま・・・え?若旦那?」

男性が武雄を見ての第一声がそれだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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