第906話 情報擦り合わせ。1(まずはファルケ国の事。)
武雄達はバートが取っていた宿に入った。
マイヤーとミア達は各部屋の再チェックを始める。
アンダーセン達は地図等の打ち合わせ用の資料を机に置き始め、武雄が皆のお茶を用意し始めるとバートとフォレットは「またやっているんですか」と呆れていた。
「ふふ。バートさん、フォレットさん、その呆れ顔はダメですよ。」
武雄が苦笑しながら言う。
「失礼しました!」
「いいんですけど。
顔に出してはダメですね。
と、お茶は皆の前に行きましたかね?
じゃあ、始めましょうか。」
「「はい!」」
皆が(人間大になったパナも)席に着く。
「えーっと。まずはバートさんとフォレットさん、先行ご苦労様でした。
こちらからの報告としては・・・ビエラ、立ちなさい。」
「あ。」
武雄に言われビエラが立つ。
「道中で買った奴隷です。
名はビエラ、種族はドラゴンです。」
「「はぁ!??」」
バートとフォレットが驚愕の表情をする。
皆がその顔を見て「そりゃそうだ」と頷いている。
「ビエラはクゥの母親です。
首輪は8年で取る事を了承していますので問題なく。ビエラ的には人間社会の見学みたいなものですね。」
武雄が驚いている2人を無視して説明をしている。
「ク・・・クゥ殿と一緒なのですね?」
フォレットが武雄に恐る恐る聞いてくる。
「ええ。
本人は至って旅行を楽しんでいますし、人間種の言葉を学ぼうとしていますので、『これは何か』聞いてきたら普通に返事をしてください。
こちらの言葉は通じますので問題はありません。」
「「はぁ・・・」」
バートとフォレットが生返事を返す。
「それと。パナ。」
「はい。」
パナが立ち上がる。
「パナは私の精霊です。
たぶん2人が王都を発ってから契約したと思いますので、ここで自己紹介ですね。」
「せ・・・精霊ですか。」
「はい。
タケオの精霊になります。ケアしか出来ませんがよろしくお願いします。」
パナが頭を下げる。
「わかりました・・・」
バートが返事をするとフォレットもぎこちなく頷く。
正確には「キタミザト殿なら何があっても不思議じゃない」と諦めたようだ。
その心情がわかるのか小隊の面々も苦笑している。
「さて・・・では、この街でわかっていることを擦り合わせますか。
夕食は昨日の時点で下地は出来ていますから、時間がきたら調理して食べましょう。
マイヤーさん、議事を進行してください。
ま、軽ーくで良いですよ。」
「はい、わかりました。
では、2人も合流出来ましたし、この街に来るまでの出来事と気が付いた点を話していきましょう。
議事録は・・・ブレア、オールストン、よろしく。」
「「わかりました。」」
「では・・・アズパール王国の関を出た所から話を始めましょうか。
まずはファルケ国の概要ですね。」
武雄達の議論が始まるのだった。
・・
・
「以上がファルケ国での内容ですね。
何か思う所がある者はいるか?」
マイヤーが皆に聞く。
「・・・正直な話、あのセイジョウとバロールでしたか。
彼らが何か仕掛けて来ると思っていましたが、来ませんでしたね。」
ベイノンが考えながら言う。
「まぁ、さっきの説明であったように、次はこの街の奴隷市で会うと言っているんだ。
先んじて何かするという事は低い、という所はある程度確かだったでしょう。
あるとすれば何かしらの遭遇戦ですが、こちらも何も魔物が近寄って来ませんでした。」
アーリスも言ってくる。
「皆さま、ビエラが居るのに軽々しく魔物が近寄って来るとは思えませんよ?
クゥの時も、アリス様や工房の皆さまに何もありませんでしたし。」
ミアがお茶を飲みながら言ってくる。
「ビエラが居るだけで弱い魔物が近寄らないのは楽ですね。
ビエラ、ありがとう。」
「あ♪」
武雄が感謝を述べるとビエラは片手を上げて「あたり前よ♪」と言ってくる。
「キタミザト殿。その2名は問題ないのでしょうか?
排除しますか?」
バートが聞いて来る。
「私達はあくまでお使いですからね。
その2名の監視は別組の仕事ですし、そもそもそちらも戦闘をする気は無いようですからね。
放置で構いません。
ですが、向こうから仕掛けて来たら、追い払う事はしないといけませんかね。
この人員では精霊魔法師と精霊を相手に楽勝とはいかないでしょう。
負けないのは出来るかもしれませんけど・・・なるべく戦闘はしません。」
武雄の言葉に皆が頷く。
「さてと・・・あとはファルケ国についてどう思いますか?」
「所長。どこまでなら侵攻が出来ると思いますか?」
アンダーセンが聞いてくる。
「・・・そうですね。
欲をかけば、ドローレス国とファルケ国の国境までと言いたいですけどね。
皆さんもファルケ国領主邸がある街の城壁と、その門を見ましたね。
あれ・・・落とすのに何名の犠牲が必要なんだか・・・
占領地政策も考慮するなら、人員の損耗率は低く抑えないといけません。
無理をしない範囲でするなら、私ならファルケ国領主邸がある街の東街まででしょう。
まぁ、具体的には軍務局と外務局が考える事ですね。
楽観する人達ではないでしょうけど、消極すぎてもダメですか・・・
まぁ、今回の議事録は陛下経由で見るでしょうから、参考にして欲しいですね。」
「わかりました。
あとは向こうで我々が感じた事の確認ですね。」
アンダーセンが、ファルケ国での話を2人に話すのだった。
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