第904話 101日目 冒険者組合で休憩。(芸術の神と人間の娯楽。)
ここはファルケ国領主邸がある街の冒険者組合。
「ふんふん♪」
マイヤーとアーリスが受付で話をしているので、武雄達は隅の席でのんびりとしていた。
「所長・・・気楽ですね。」
ベイノンが呆れながらスイーツを食べている。
「普通は監視されているかもしれないと怯えるもんですけど・・・まぁ。監視されているとわかっているなら堂々としていられますか。」
ブレアも半ば呆れながら感心していた。
「タケオ。さっきのヴァイオリン。カリテス達に渡すのですよね?」
机の上でミアと一緒にスイーツを食べているパナが聞いて来る。
「ええ。
パナはよくわかりますね。」
「芸術の神であるカリテス達をタケオが見逃すわけないですから。
ならこっちの工房を出し抜いてアズパール王国で作れば良いのではないですか?
カリテス達なら指導も出来ると思いますよ。」
「・・・一から作るのはパナが思う程楽ではないですよ。
職人を説得させてやる気にさせるのは骨が折れるのです。
なら向こうから職人を来させて作らせればいいんですよ。
別に楽器で一儲けする気はありませんし・・・どうせこっちに来た職人の方が腕は上がるのですから戻りはしないでしょうし。」
武雄が顔色を変えずに言う。
「4地域で一斉に作るのですかね?」
アンダーセンが聞いてくる。
「私の中では3王家が一番乗り気になると思っています。
3王家がどう考えるかでしょうね。
ゴドウィン伯爵家が芸術に目覚めるかはわからないですね。
あの地域は魔王国と面していますからね。
今は関の強化が最重要課題のはず・・・案外乗り気になるかもしれませんが、王家に比べれば実施確率は低いかと思いますね。」
「タケオ。コノハはどうですか?」
パナが聞いてくる。
「コノハかぁ・・・音楽に秀でていましたかね。」
「いえ。秀でてはいないかと思いますが、コノハはカリテス達とは違う系統ですから、ヴァイオリン以外が出来るのではないですか?」
「雅楽や琴ですかね・・・ん~・・・」
武雄が悩む。
「タケオは難しいと思いますか?」
「今は一つに絞るべきでしょうね。
まずはヴァイオリン系の流行り方を見てみて次で琴も考えればいいでしょうね。」
「そうですか。」
パナが頷く。
「所長。聞き取り終わりました。」
マイヤーとアーリスが武雄達の所に戻ってくる。
「どうでしたか?」
「前の街と同じですね。
アズパール王国よりオーク肉の買取り価格は高いようです。
金貨1枚と銀貨3枚だそうです。」
「ふむ・・・」
武雄は手を顎に当てながら考える。
駆除費用は同じだが肉としての買い取り価格がアズパール王国より高いのが不思議だった。
武雄達は奴隷が居る以上、肉も輸入がしやすいだろうと思っており、駆除費用を足してもそこまで高価でない物を狩る事はないだろうと考えていたのだが逆に高い結果に理由が思い付かなかったのだ。
「わからないですね。
魔王国ではオークは家畜なのに他国に輸出していないんですかね・・・
まぁ。良いです。
とりあえずウィリプ連合国は肉の需要が高いと言う事でしょうね。」
「奴隷が居ると高いのでしょうか?
肉食が多いとか。」
ブレアが聞いて来る。
「・・・さて。詳しい事はわかりませんけどね。
今回の旅路で24体のオークを倒しましたが、駆除報酬は貰っていますね。
なのであとは20体の肉販売があるのですけど・・・」
「・・・そうですね。
価格が高い所で換金するという話でしたが。
ここでしますか?」
「ん~・・・ドローレス国を見てからにしましょうか。
お金に困ってはいません。
向こうで高ければ向こうで換金し、安かったら帰りにこの街で換金ですね。」
「わかりました。
それと掲示板の内容ですが・・・どうも大規模討伐が多いようです。」
マイヤーが頷きながら聞いて来る。
「「大規模?」」
小隊の面々が聞き返してくる。
「ああ。
どうも・・・洞窟に住み着いている魔物の討伐や屋敷を占拠された魔物の討伐・・・
我が国なら兵士が対処する物をこちらでは冒険者組合に出されているようです。
ベイノン。その辺の見識はどうなんだ?」
「国元でその辺は調査済みです。
実際は意図的に準備された依頼と結論付けています。」
ベイノンが真面目顔で言ってくる。
「何者かが意図的になぁ・・・何の利益があるのか・・・」
アンダーセンが腕を組んで考える。
「はぁ・・・普通に思考するなら魔法具の性能試験。
参加に費用が掛かるようにしての娯楽商売。
個人の趣味。
挙げたらキリがないでしょう。」
武雄がため息交じりに言う。
「所長・・・冒険者を試験に使うのですか?」
「娯楽商売って・・・何だよそれ・・・」
アーリスとブレアがため息をつく。
「世の中には私達と考えが違う者が多くいるのは確かです。
ウィリプ連合国はそれが表立って意思表明をしていると考えれば良いのですよ。
それにどの依頼にもちゃんと褒賞金が付いているのでしょう?」
「はい。高額です。」
武雄が呆れたようにマイヤーに確認する。
マイヤーも呆れている。
「趣味だとしたら余程の自信なのでしょうね。
まぁ参加する方も危険を承知で参加するのですから、双方の合意の下で行うなら良いんでしょうね。」
「それで良いんでしょうか・・・」
アンダーセンが難しい顔をさせる。
「はぁ・・・アズパール王国が安泰で良かった。
こんな変な輩が居る国家は俺はごめんだ。」
「まったくだな・・・
もっと違う事に精を出せば良い物を。」
オールストンとベイノンがため息をつく。
「・・・はは。
商売として見るならそういう事も娯楽の一環なのです。
まぁ私なら娯楽はもう少し命の危険度は下げてあげるべきだとは思いますけどね。
この国ではそれがまかり通っているし、皆が認めているのです。
それにとやかく言うのは筋違いですよ。」
武雄が苦笑しながら呆れている部下を諭す。
「それはわかりますけど・・・」
「しょうがないですよ。
さて。次に行きますか。」
武雄が席を立つ。
「所長。次はどこに行きますか?」
「穀物屋と干物屋ですよ。」
「所長らしいです。
今日の夕食は期待ですね。」
「美味しい物があれば良いですけどね。」
皆が今までの呆れ顔から期待した表情になり、席を立つのだった。
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