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第896話 ビエラの疑問(柚子湯最高。)

武雄とビエラは机を挟んで将棋をしている。

会話が出来ないだけの最強種ドラゴンは物覚えも良く、2回ほど目の前でしたらルールを覚えてしまった。


「ん~・・・」

パチンッ

「んん・・・」

パチンッ

お互いに少し考えてから指しあっている。

「あ~・・・ああ?」

「・・・主、ビエラがクゥはどうだったか聞いています。」

ミアはビエラの物を買った帰りに寄った青果屋で見つけたイチゴを食べながら通訳をしていた。

「ん~・・・まぁ普通ですよ。

 暴れたりもしていませんし、こちらが言った事は守ってくれていました。」

「あ~・・・あ。」

「ですよね~。

 主、良くあの子が言う事を聞いたねって感心しています。」

「クゥは好奇心は旺盛ですが、わからず屋ではありません。

 やってはいけない事をちゃんと決めてあげればそれ以外で遊んでいるだけです。」

「クゥは主のお菓子や料理が目当てだと思いますけど。」

ミアが呆れながら言ってくる。

「十分な動機ですよ。

 クゥは少なくともあのクラスの料理が食べれるなら大人しくしてくれているのです。

 安いものです。」

武雄が頷きながら言うとミアもビエラも「まぁ美味しい物が食べられるなら我慢するか」と頷く。


「あ?・・・あ。あ・・・」

「ふむ・・・主、さっきの店でも思ったが金銭という概念はビエラには難しく感じたようです。

 『例えば小箱を見た時に素材が同じで意匠もあまり変わらない物があったが値段がどうして違うのか。

 宝石や金が付いているならまだわかるが、人間の考える事はわからない。』と。」

「作り手の違いでしょうかね?

 例えば私とビエラが同じ小箱を2個ずつ作った時に1つ目の店ではビエラの方が高い値段で売られて、2つ目の店では私の方が高い値段で売られていたとします。」

「あ?」

ビエラが首を傾げる。

「1つ目と2つ目の店では値段が違うのはビエラが作った物か私が作った物かだけですね。」

「あ~・・・?」

更にビエラは首を傾げる。

「作り手を見て値段が変わる事があるという事は多々ありますね。

 ビエラがドラゴンと知っていて珍しいから高くなるのか、私のような貴族が作り出した物が珍しいから高いのかはわかりませんが、売り主・・・店の判断でその物の純粋な価値に作り手の価値を足して値段が決まるという事になりますね。」

「あ~・・・あ?」

「主、その考え方だと、更にその店の価値も足されるのではないかと言っています。」

ミアが聞いてくる。

「確かにそれもありますね。

 山の中にある村で売られるか、貴族達がいる国王の・・・人間種の統治者達が集まる所で売られるかによっても違うでしょうし、そもそもその店に出入りする客層・・・良く買いに来る人達の生活水準でも違いがあるでしょうね。」

「あ~・・・。」

ビエラが腕を組んで悩む。

「そうですね、人間社会は難しいですね。

 だから他種族は人間社会を習いたいと思うのかもしれません。」

「主、私の通訳なしでビエラが話す事をわからないでください。

 うぇ!すっぱい!」

ミアは新たに食べたイチゴが思いの外酸っぱかったようで、武雄に酷い顔を見せる。

「ほら、砂糖を付けなさい。」

「は~い。」

ミアは手に砂糖を取り、イチゴに塗ってから食べ始める。

「ミア、今の話をしていて腕を組んで悩むなら私もそう考えますよ。」

「そうなんですね。」

ミアが頷く。


「あ、皆さんが帰って来る前に湯浴みをしておきますか。

 気分をスッキリさせたいから柚子湯ならぬオレンジ湯ですね。」

武雄が立ち上がり、買って来た大きめのオレンジを持って言う。

「主、オレンジは食べる物です。

 湯浴みに持って行くものではありませんよ?」

「まぁまぁ、私がしたいんですよ。

 それにミアに甘くない物(・・・・・)を選んで貰ったでしょう?

 柑橘の良い香りで入りたいんですよ。

 さて、お湯を張ってきますかね。」

武雄が湯浴み場に向かうのだった。

・・

武雄達は湯浴みを済ませ皆の帰りをお茶をしながら待っていた。

と部屋の玄関が開き皆が帰って来る。

「所長、戻りました。」

マイヤーが武雄に挨拶をすると皆が会釈をする。

「皆さん、おかえりなさい。

 もう少し酔ってくると思っていましたが。」

「はは、その辺はもう我らも歳ですから。」

「ま、仕事中ですし。」

「明日も移動ですから。」

「酒に自信はありません。」

「軽くが丁度良いんですよ。」

「・・・疲れました。」

最後に一言言ったアンダーセンが一番疲れていた。

隊長格なのに。

「はは。役職は上でも一番下は大変そうですね。」

「まぁ私は若くして隊長でしたからね。

 毎回他の分隊と飲むとこうなるんですよ・・・」

「おいおい、自分で若くなんていうなよ。

 もう30後半だろう?」

「所長と同じ36です。

 はぁ・・・」

アンダーセンがため息をつく。

「はは。

 今お湯を足しますから湯浴みをしてください。

 皆さん、移り香が酷いですよ。」

武雄が苦笑する。

「やはりですか。」

マイヤーも苦笑する。

「ええ。

 その様子なら報告会は出来そうですね。」

「はい。

 問題はありません。」

アンダーセンが言う。

「わかりました。

 パナ、一応この場の全員にケアをしなさい。」

「わかりました。」

武雄は言葉には出さないが「性病関係もあるしね」と思う。

「はは、厳重ですね。」

「あ~・・・これで明日の出立時に酔っていたら寝酒したのがバレるな。」

「そうだな。

 だがまぁ所長が煎れたお茶で寝る前の会議も悪くないとこの旅では思えるようになったがな。」


皆はこの旅の最中は寝る前に武雄がパイディアーに教えて貰った美味しいお茶を飲むのが習慣になっていて段々慣れているようだった。


「とりあえず皆湯浴みだな。

 その後、会議をしよう。」

マイヤーの言葉に皆が頷くのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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