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第895話 武雄達の散策。

武雄達は雑貨屋に来ていた。

そして女性の店員(獣人の奴隷)を捕まえビエラの服装を見繕っていた。

「あ~♪」

ビエラは武雄の横で店内を見回しながら楽しそうにしている。

「ん~・・・店員さん、こんな物ですか?」

「はい、旅支度のセットはこのぐらいです。

 雨露が凌げるポンチョ、耐久性が高い服装。

 下着は3日分、あとは水筒等が入る大き目のリュック・・・ですがこの年齢だとあまり多くは入れられません。」

「なるほど。」

武雄が店員が机の上に並べた物を見ながら頷いている。

「それで・・・そのお客様。

 この子はどう・・・いえ、その・・・何者ですか?」

女性店員が主人から見えない位置からこっそりと聞いて来る。

「ん?わかりますか?」

「いえ・・・何となくなのですが、明らかに獣人の域を超えている何者かのように思うのです・・・」

「譲られたのですが・・・本人が楽しそうなので詮索はしていません。

 ほら、会話が出来なくてですね・・・ははは。

 暴れる事もないようですし、当分はうちで様子を見る事にしたんですよ。」

「そ・・・そうですか。

 いえ、失礼しました。」

「いえいえ。

 私はアズパール王国の東側から来ましたが、率直な所奴隷はどうなのですか?

 私も初めてなんですよね・・・他の人間達と同様に扱う気でいますけど、それで良いのでしょうか?」

「!?同じようにですか!?

 この子は良き主と巡り会えたのですね。」

店員の女性が少し涙目になる。

「その言い方だと・・・こちらの主人は・・・その、酷いので?」

「隣のドローレス国に比べればまだよ・・・あ、お客様、こちらの小物もどうですか?」

「?」

女性店員がいきなり話題を変えてすぐに人間の男性店員がやってくる。

「あ・・・お客様に付いていましたか。

 お客様、何をお求めで?」

「こちらの女性にこの娘の旅支度をお願いしていました。」

「ほぉ・・・そうですか。

 ふむふむ、間違ってはいないか。

 ではお客様、ごゆっくりとお選びください。」

机の上に並べた物を見て頷いて戻っていく。

「・・・耳が良いと言うのもあるのですね。」

武雄が男性店員の向かった先を見ながら呟く。

「種族的な物ですし。」

女性店員が苦笑する。

「隣の国の方が酷いので?」

「この国は割とまともです。

 30~50年で奴隷を入れ替える・・・解放するように仕向けてくれてはいます。

 隣の国家の奴隷達はそれは悲惨と聞いています。」

「ふむ・・・入れ替えるか・・・

 単純に考えても店同士で売り買いして入れ替えるという事も出来ますよね。」

武雄が考えながら言う。

「はい、微々たる費用で入れ替えが行われるようです。

 私達には金額は関係ありません。

 明日からあっちにいけこっちに行けと言われるままです。

 ・・・政策が良くても実施する人達がどう思うかまでは・・・

 まぁあまりにも扱いが・・・暴力行為が酷い場合は政府が出ますが・・・あまり意味を成していません。

 3食と最低限の衣類は用意されますし、酷い折檻は基本ありませんので・・・最低限生きていける事は保障されるのみですが・・・それでも奴隷という物は辛いですね。」

「・・・そうですか。

 さて、長居をして貴女が男性店員から目を付けられるのも可哀相です。

 選んで頂いた一式を買います。

 あと衣服についてはこの場で着て帰ります。今の服は捨てて構いません。

 これは良い話を聞けたお駄賃です。」

と武雄が女店員に小箱と銅貨5枚を渡す。

「あ・・・よろしいのですか?」

「はい。結果的には男性店員には銅貨を渡す事になるかもしれませんけどね。

 小箱は寝る前にでも底を確認(・・・・)してくださいね。」

「?・・・はぁ。」

女性店員が小箱を受け取りポケットに終い、机に並べた商品を持ってカウンターに向かうのだった。

・・

「あ~♪」

ビエラが新しい服装でくるくると武雄の前で回っている。

「うんうん、良かったですね。

 では私達はこれで。

 ビエラ、行きますよ。」

武雄がビエラ用のリュックを担いでビエラと店を出て行く。

男性店員も女性店員もにこやかに見送るのだった。

「はぁ・・・ほら、出せ。

 あの客は衣服の破棄を言ってきて俺が嫌な顔したら多めに出したんだ。

 お前にこころづけか何か渡すかもしれん。」

男性店員がキツイ目つきで女性店員に向かって言う。

「・・・はい。」

女性店員は悔しそうに下を向いてポケットに手を入れる。

「・・・銅貨5枚を頂きました。」

とポケットから出したのは銅貨のみだった。

小箱は気持ちの物だからこの男には不要な物として出さなかった。

「はん、銅貨5枚か。

 ほれ、お前の取り分だ。」

男性が銅貨2枚をカウンターに置く。

「さて、店終いだな。

 ほら、棚の整理して来い!

 その後夕食の買出しに行って来いよ。」

「・・・はい。」

女性は銅貨2枚を小箱が入っていない方のポケットに入れ仕事を始めるのだった。

・・

女性店員は与えられた小さい部屋のベッドに寝ていた。

今日も一日辛かった。

唯一の救いは閉店間際に来た男性と女の子。

「ああいった主ならまだ奴隷も楽しいんだろうけど・・・」

自分の境遇を鑑みると悲しくなる。

「あ、そうだ、小箱の底を見ないと。」

女性店員はベッドから起き上がり小箱を開けると中はパイプの葉が入っていた。

「・・・葉?・・・ん~・・・パイプはしないんだけどなぁ・・・

 底かぁ。」

女性店員は小箱をひっくり返すとパイプの葉が出て来る。

カランッ・・・硬質な音が響く。

「・・・銀貨・・・

 ありがとうございます、ありがとうございます。」

女性店員は泣きながら言う。

「いつか解放される時があるならアズパール王国の東側・・・

 今日のお客様の所に行って見たいなぁ。」

女性店員が夢を見るのだった。



ここまで読んで下さりありがとうございます。

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