第894話 厄介事5(約束事。)
とりあえずビエラにはクゥにも言ったお約束事を教え本人からも「問題ない」と回答を得ていた。
武雄の現状の立場も説明済みです。
ビエラはこの場で皆と挨拶をかわし、今はのんびりとお茶を飲んでいる。
ビエラは周りを見ながら皆と同じようにお茶を飲む。
「あとは・・・そうですね。
とりあえずビエラは私に買われましたけど、
私が所属するアズパール王国は奴隷制度を採用していません。
と言っても他国であれ契約は履行されていますから、アズパール王国内では最大25年で奴隷契約を解除するようになっています。
私の部下にその首輪をした者が2名ほどいますが、25年間執事をする事が決まっています。
私的には奴隷だとかは意味をなしていません。私が上司でその者達やここにいる者は等しく部下です。」
「あ。」
ビエラが頷く。
「ビエラも私の部下となります。エルヴィス領に戻ったらお仕事を用意します。
期間は・・・8年でどうでしょうかね?
8年で首輪を取りましょう。
奴隷契約後も仕事をしたいのなら雇用継続という形にします。
ですが、ビエラはまず人間社会を覚えないといけないですし、最優先で言語の習得をしてください。
わかりましたか?」
「あ!」
ビエラが頷く。
「えーっと・・・
クゥにもした最低限の約束事は確認した。
奴隷の契約の話もした。
人間社会の街の事や金銭的にはこれから見聞きするからそこは学習に期待だし、言語は手の空いた人に教えて貰えればいい。」
武雄が指折りしながら確認する。
「ふむ、最低限はしましたね。
ビエラの方からはありますか?」
「あ・・・あ・・・あ・・・あ・・・あ?」
ビエラも武雄のように指を折りながら確認している。
「そのウィリプ連合国というこの国で奴隷を買うからついてこい。
何かあっても人間や物を壊さずにまずは逃げて状況を主に報告する。
基本的には離れて行動はしない。
何か食べたければ主に相談して一緒に買う。
それを守って一緒に居る事がまずはお仕事という事で良いのか?だそうです。」
「はい、それで良いです。
クゥの時もそうでしたが、ビエラも本格的な人間社会での生活は初めてでしょう。
まずは人間社会を見聞きすれば良いです。
給金等々はエルヴィス領に行ってから決めましょう。」
「あ。」
ビエラが頷く。
「さて、こっちは終わりと。
で、皆さん何か言いたそうな顔をしていますがどうしましたか?」
武雄が小隊の面々を見る。
「では・・・なんでビエラ殿がその容姿なんでしょうか?」
ブレアが皆を代表し聞いてくる。
ビエラは年配の女性の風貌から幼女体型になっていた。
年齢で言えばまだ5歳6歳程度だ。
そして猫耳のような物と尻尾も出来ていた。
「何か問題がありますか?」
「?」
武雄とビエラが同時に首を傾げる。
「なぜに少女の体にしましたかね?」
「楽ですから。」
「何がでしょうか!????」
ブレアが難しい顔をさせている。
「ふむ・・・では。
ビエラにこの体に成って貰った理由ですが、最上位の理由としては言葉と種族です。
この容姿をしていれば、まず言葉の問題で『知らないから』と言い訳が付きます。
また、人間種の国で人の容姿をしているといろいろと説明が面倒ですし、成人の容姿だと他の人間達が近寄って来そうです。さらに私と連れ立っていたら何か誤解が生じる可能性もあります。
さらにわざと別種族にしてミアみたいに感知が出来ても獣人の亜種と誤魔化せるでしょう。
その不安要素を一掃出来るのがこの容姿なのです。
小さければ言葉が話せなくても問題なく、私が連れていても変な目に見られません。」
「・・・一部に特殊な性癖の方がいますが・・・」
ブレアが更に眉間に皺を寄せる。
「そうだったならアリスお嬢様とは婚約しませんよ。
というよりも・・・そうか・・・そういった人種を呼び寄せてしまいますか。」
武雄がブレアの言葉に考え始める。
「所長、所長が言っている事は真っ当ですが、相対する人達はどう思うかが気がかりですね。」
「なるほど・・・なら少し設定を考えておきましょうか。」
「設定ですか?」
マイヤーが聞いて来る。
「ほら、カトランダ帝国でヴィクターを買う際にやったでしょう?」
「あぁ、所長を農場の坊ちゃん化したあれですね。」
「そうそう。
ビエラは話せないので設定が馴染むまでは丁度良いですしね。」
「・・・ではどうしますか?」
「そうですね・・・
あ、道中で行き倒れていた男性の介護をした時に貰い受けたとしましょうか。」
「・・・ざっくりですね。」
「ざっくりな方が良いですよ。
それにマイヤーさん達はその場に居なかったので私が勝手にやったとすれば私のみに話が来ますよ。」
「私達が知らない間にですか?」
「ええ。
関を越え街道で休憩している時にやったことにすれば検証も出来ないでしょう。
男性はその後いつの間にか消えていたと。
マイヤーさん達も私からしか聞いていないので詳細は私に聞けと拒否しといて構いません。」
「はぁ・・・わかりました。」
マイヤー達が頷く。
「さてと・・・雑貨屋はやっていますかね。
とりあえず今日用意したビエラの服は私の大袋にしまっておきますが、この体型での旅支度が必要ですね。」
「あぁ~・・・なら町に繰り出しますか?」
「ふむ・・・じゃあこれを。」
武雄が革袋から金貨3枚を出す。
「マイヤーさん達6名は歓楽街で遊・・・情報収集をしてきてください。
私達はビエラの旅支度等々をしてきます。」
「こんな状況下でですか?」
「ええ。別に大した状況でもないでしょう。
ですが・・・前に言ったように事後で問題になるような事だけはダメです。
あと、日付が変わる前に宿に戻って来る事。
わかりましたか?」
「「了解です。」」
皆が頷く。
「では皆さん、自由行動です。」
武雄がにこやかに言うのだった。
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