第893話 厄介事4(事情を聞こう。)
ここはファルケ国の東の街。
武雄達は買い物も終え、冒険者組合でビエラに湯浴みをさせた後、今日の宿を探したのだが・・・運良く湯浴み場が付いている数部屋ある型の部屋が取れたので、武雄が夕食を作り食事をしていた。
「あ!ああ♪」
ビエラが恍惚の表情で肉を食べていた。
「・・・あ~・・・誰かビエラにナイフとフォークの使い方を教えてください。」
武雄がビエラの豪快な手づかみで食べながらも美味しそうに食べる様を見て苦笑している。
「うちの子供と一緒ですね~・・・」
アンダーセンも苦笑している。
「さてと。
ミア、パナ、ビエラの経緯はわかりましたか?」
「はい。
ビエラはクゥの母親になります。」
「・・・初っぱなから重大事項なんですね。」
武雄が疲れた顔をさせる。
「所長、諦めましょう。」
マイヤーも苦笑しながら武雄を労う。
「ビエラは人化の魔法を使い人型になったので旅という人間がしている物を体験しながらクゥの住み家であるエルヴィス邸に行こうとしたようです。」
「ふむ、終着点はクゥの所にね。」
武雄が腕を組んで頷く。
「はい。
ですが、人間の言語は理解できるが話せない事がわかりこの辺でウロウロしていた所、人間に捕まり、売られあの男達の元にいたそうですが、まだ1か月も経っていなかったそうです。
本人的には言葉が覚えられると期待はしていたようです。」
「最近の事なんですね。
それにしても気楽ですね。」
「はい。
結局の所、意志疎通が出来ないので言葉も覚えられなく、更には順守条項でドラゴンにも変身出来なくて途方に暮れていたそうです。
そんな時に私達が来たそうです。
ビエラはクゥの姉ドラゴン・・・リツにクゥが精霊と一緒にいる人間と行動していると聞いていたのでこっちに来ようと思ったそうです。」
「うん、行き当たりばったりですね。
でもあの男達が私達に手を出さなかったらどうしたのですかね?」
「あ・・・あ・・あ?」
「・・・ビエラ、それは危ないですよ。」
ビエラが首を傾げながら何か言うとミアがため息をつく。
「全くですね、怪我をしてしまいますよ。」
パナも呆れている。
「何となく嫌な予感はしますが・・・何をすると?」
「隊列に飛び込んだら認識されるかなと。」
「流石にそれは危ないですね。」
「はい、実行されなくて良かったです。」
武雄とマイヤーがホッとする。
「全くですね。
主達が怪我をしたら大変です。」
「ええ、そうですね。
人間は脆い。馬から投げ出されたら大変だったでしょう。」
ミアとパナが頷いている。
「ん?」
武雄達が首を傾げる。
「ミア、私達の心配なのですか?
飛び込んできたビエラではなくて?」
武雄が皆を代表して聞く。
「主・・・ビエラは最強種のドラゴンですよ?
形が人間になろうと馬に当たったくらいで怪我もしませんよ。
むしろ馬が飛ばされるのではないでしょうか。」
ミアが呆れながら説明をする横でパナとビエラが頷いている。
「・・・物理法則が変だなぁ・・・」
武雄が「深く追求しちゃダメなのかな?」と思い始める。
「・・・あ~・・・所長、世の中には理不尽な事がありますね。」
アンダーセンが疲れた顔をさせます。
「納得するのですか・・・」
「私達は最弱種の人間ですよ?
弱いから徒党を組む、それは種族的な事。
なら単体で1領地を滅ぼせる力があるドラゴンなら何があっても不思議ではないでしょう。」
アンダーセンが説明する。
「確かドラゴンの戦力比って・・・騎士団3個小隊だったか?」
「通常の貴族領騎士団なら4個だよ。
王都の第1騎士団と第2騎士団は3個でドラゴン相当と見積もったな。
王都守備隊は人的に少ないし、陛下警護が任務だから除外。」
ベイノンとアーリスが話し合っている。
「・・・第2騎士団・・・アリスお嬢様と試験小隊で対処出来るのか・・・」
武雄がそんな2人を見ながら呟く。
「・・・したくないですけどね。」
マイヤーが武雄を見ながら言う。
「したいしたくないという決断をしたいならもっと上に上がらないといけませんね。」
武雄が目を細めて言う。
「・・・まぁ・・・そうですけどね。
出来るだけそうならないようにしたいものです。」
「それは私も思いますよ。
と、ビエラ、何で年配の女性の姿をしているのですか?」
武雄がビエラに聞く。
「あ・・・あ~・・・あ・・・あぁ。」
ビエラが話し始め最終的にはガッカリとする。
「・・・えーっと・・・
ビエラが上空から人間を観察していて人間社会は若い男→子供→女→年老いた男→年老いた女の順に配慮されているようだったと言っています。
なので、年老いた女性で歩いていても気にもかけられないだろうと。
そして年老いている者を奴隷にする事はないだろうと思ったそうなんですけど。」
「見事に奴隷ですね。」
「はい。なんでも話せなかったので奴隷商に売られたそうです。
何とか種族の所は誤魔化したそうですけど。」
「何かこぼして黒くなっていたあそこですか・・・」
「あ!」
「上手く行ったそうですよ。」
ミアが呆れる。
「そうですか。
ならビエラ少し体型を変えなさい・・・そうですね・・・」
武雄が部屋の窓辺に寄る。
ビエラも席を立ち武雄の下に行く。
「この宿の向かいの店の入り口に居る人型が見えますか?
あのくらいの体格でどうでしょうか?」
「?・・・あ!」
ビエラが街中を見て首を傾げながら少し凝視した後、頷く。
するとビエラの体が光り始めシルエットが変わるのだった。
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