第892話 厄介事3(さて・・・買うか。)
「おじさん達、買う気になった?」
男が聞いて来る。
「・・・その金額でですね?」
武雄が訝しがりながら聞いて来る。
「そうだね・・・じゃあ中古という事もあるし、金貨50枚で良いよ。」
「・・・わかりました。
買います、ちょっと待ってくださいね。」
武雄が革袋の中身を確認する。
「はい、金貨50枚です。」
武雄が渡す。
「じゃあ俺からは。」
男が契約書を取り出す。
「・・・これは?」
「奴隷契約書。
市場で買えば順守条項という独自のルールが追記出来るが今は契約者の更新だから俺が課した順守条項を継続して貰う事になる。」
「ふむふむ。それでどういった順守条項を課したのですか?」
「俺の場合は・・・
1つ、主人である俺の命令に従う事。
2つ、俺の命令以外でいかなる変化もしない事。
この2つになる。
追加や変更がしたいなら奴隷商組合に行って手続きが必要だ。
結構金がかかるらしい。」
「そうですか・・・わかりました。
えーっと・・・どうすれば?」
「ちょっと待ってくれ。えーっと・・・こっちに俺の手を置いておじさんがこの婆・・・奴隷の名前の所に手を置いて、相手の名前を言ってから名前を言えば問題ないらしい。」
「・・・そうですか。
えーっと、ビエラですか。種族は・・・黒塗り?」
「あぁ、奴隷契約した後にインクでもこぼしたらしい。
もう一度契約するのも何だったからそのままで来ていると言っていたよ。」
「・・・はぁ。」
武雄が生返事をする。
他の男が奴隷の女性を連れて来る。
「おじさん、やるよ。
契約者エトラがビエラに関し継承を行う。
おじさんどうぞ。」
「ビエラに告げます。
現契約者よりその順守条項を継承します。
順守条項に違反した場合、身体能力、魔法能力等9割の能力を1週間使用禁止とします。
契約主、タケオ・エルヴィス・キタミザト。」
武雄の宣言を受けビエラの体が淡い光に包まれると共に首輪が光り武雄の名前が刻まれる。
そして武雄の右手小指に指輪が発光するのだった。
・・
・
「終わりましたかね?」
武雄が手を見ている。
「うん、終わったね。
じゃあおじさん達、お達者で。
行くぞ!」
「ああ!」
男達がさっさと引き上げて行く。
口々に「いや~若い奴隷を買いに行くか!」、「もっとマシなのを買いに行かないとな!」等々話している。
武雄達は何も言わずにその場で見送るのだった。
・・
・
「さて・・・ビエラ、こっちに。」
そう呼ぶと首輪を付初老の女性が近寄って来る。
「はい、握手。」
ビエラの手を取って武雄が握手をする。
「あ・・・ああ・・・あ・・」
「ん?言葉が出来ないのですか?」
「あ・・・あ・・」
ビエラがコクコク頷く。
「そうですか。
はい、うちの通訳さん、お仕事ですよ。」
「はい!主の通訳!ミアです!」
ミアが待っていましたとばかりに胸ポケットから顔を出す。
「私が事情聴取をしましょう!」
ミアが飛び出してビエラの肩に止まる。
「あーー!・・・あ・・・ああ・・・」
ここぞとばかりにビエラがミアに話しかけている。
「ん??・・・ほぉ・・・なるほど。」
ミアがウンウン頷いている。
「・・・タケオ、喉が渇いたんですけど。」
パナはミアが居た反対側の胸ポケットから顔を出して休憩を所望しだす。
「いや・・・クゥの時はテトもわかっていましたからパナもビエラの言葉わかりますよね。」
「はい。でもミアがやっているので私は小耳に挟んでいる程度で問題ないでしょう。
タケオ、お茶が飲みたいです。」
「はいはい。
マイヤーさん、お茶あります?」
「今コップに入れますね。」
「すみません。
今日はこのままビエラを連れて先の街に行きましょう。」
「はい。」
「そこでビエラに旅支度をさせないといけないですね。
あと食事の用意もか。あまり良い物は食べてないようですし・・・
何か簡単な肉料理でも作りますか。
あ~調理の時間はかかっても楽そうなワイン煮込みにしますかね。
あとはパンを買ってくれば平気か。」
「冒険者組合があればヴィクター殿の時のように湯浴み場が借りれるかもしれませんね。」
「そうですね。
まずは宿を確保してから冒険者組合に行って見ましょうか。
ビエラを誰かの後ろに乗せなさい。」
武雄達がこの後の段取りを確認し出す。
「主、主、結構わかりました。」
ミアが武雄の肩に座り話しかけて来る。
「ミア、とりあえずビエラは暴れたりはしないですか?」
「はい、それは平気そうです。
話せないだけでまともですね。」
「わかりました。
ビエラ、詳細は街に行ってから聞きます。
とりあえず誰かの後ろに乗せますが、暴れたりしない事。
同乗する人の言う事は聞く事。わかりましたか?」
「ああ・・・あ・・ああ。」
ビエラが頷く。
「ミアとパナはビエラと話して詳細の確認をしてください。
後で説明をして貰います。
あとミア、私がミアに最初に言った注意事項は覚えていますか?」
「はい、主。勝手に物を食べない、勝手に戦闘をしない。
何かあったらまず逃げる!
何かしたい時は主に聞いてからです!」
「それをビエラに教えておいてください。」
「わかりました!」
ミアが頷く。
「では皆早急に準備を。
時間を食ってしまいました。
少し移動速度は上げます。」
「了解しました。
すぐに準備します!」
アンダーセンが武雄に礼をする。
武雄達が動き出すのだった。
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