第873話 王家一同との夕飯。
貴族会議終了後に3皇子とアズパール王が皇子妃達が居る部屋に向かっていた。
「あぁ~・・・ウィリアム、終わり際に面白そうな話をするな。
話が長くなった。」
「いや、局長が食いつくとは思いませんでしたよ。」
ニールが愚痴を言うとウィリアムが苦笑する。
「まぁ言っている事はまともなんだがなぁ。
一長一短、何とも言えんなぁ。
だが、3都市間の王家間のみならしやすいのも確かだろう。」
アズパール王が顎をしゃくりながら言ってくる。
「ですが、父上。
最後の方に言っていた経費は同じでも輸送量が違うというのはどうなのでしょうか?
私的には多い時は経費がかさみ、少ない時は経費がかからないイメージなのですが。」
クリフが聞いて来る。
「いや、クリフが言うのは輸送量のみを見た時だ。
年末や税関係の資料はいつも決まった時期に送られる。
だから輸送量が多い時と少ない時と言っているのだ。
財政局長が言うのは幌馬車の数だ。
定期的に輸送がされることがわかっていれば税関係の資料も早めに送って来る事もあり得る。」
アズパール王が考えながら言う。
「軍務局と専売局はわかりますが・・・財政局が言ってきたのがわからないですね。」
ニールが言う。
「あ・・・そうか、兄上達は毎年のあれを見てないからか。」
「あぁそうだな。」
ウィリアムとアズパール王がクリフとニールを見る。
「「何がです?」」
「いえ、毎年税が収められた後に送られてくる各地の結果が同時期に重なるんですよ。
それで財政局は戦争状態、もう大変な事になるんです。
出来るだけ到着を分散、もしくは事前にわかっておきたいんです。
いつ到着するのがわかっていれば仕事の進め具合も段取りが出来るでしょうからね。
今はいつ到着するのかわからないから1日に4貴族とかという日もあるし、逆に待ち構えていたのに来なかったり・・・これが結構な負荷になっているようで財政局の文官達が嫌がるんですよね。」
ウィリアムが説明する。
「なるほどな。
だから財政局は乗り気なのか。」
ニールが頷く。
「と、もうすぐ部屋か。
あぁ・・・今日も疲れたな。」
アズパール王が背伸びをしながら歩くと皇子妃達がいる部屋に到着するのだった。
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「戻ったぞ。」
「「おかえりなさいませ。」」
その室内にいた全員が起立して出迎える。
「うむ。
ん?子供達とレイラが居ないな。
タケオとジーナが居ないのは何かしているのか。」
アズパール王が上座に座りながら言ってくる。
「ちょっと悪だくみをしています。」
ローナが楽しそうに言う。
「ほぉ、また何かするのか?」
クリフが座りながら聞いて来る。
「はは。子供達も居ないならレイラが手伝っているんだな。」
ニールも座って言ってくる。
「レイラは楽しい事には率先して動くからね。」
ウィリアムは楽しそうに言いながら座る。
4人が座るとカリテス達がお茶を出す。
「うむ、すまぬな。
・・・ふむ、やはり美味い。」
アズパール王がお茶を飲んで会議の疲れを癒す。
「はい。この1杯のお茶は良いですね。」
「さっきまでの面倒な会議の疲れを癒すのに十分です。」
「ですね~。
と、で、悪だくみとは何をしているんでしょうか?」
ウィリアムが皇子妃達に聞く。
「それはね、ジーナを着付けています。」
アルマが楽しそうに説明を始めるのだった。
・・
・
「うむ、そうだな。
確かにジーナはまだ人間種に換算すれば12、3歳だったな。
ヴィクターにはしてやれんが、ジーナになら何とでもなるだろう。
そうそう出来る物ではないだろうし、今後はこうやって王家とご飯を食べるというのも出来んだろう。
なら経験を積むという意味でもこれは大きい。
タケオの執事が終わってからのジーナの人生に大きな糧となると良いな。」
「陛下、我が娘に格別のご高配を賜り、心より御礼を申し上げます。」
「ヴィクター、構わぬ。お主も娘のジーナも頑張っておる。
お主のもたらした情報も役に立っておるからな。その恩返しだ。
それにしても12、3歳で働かないといけないというのは辛い現実だな。
成人年齢である15歳まではのんびりと過ごして貰いたい物だが、なかなか国民までその理想は浸透しない。
農村ではどうしても弱年齢からの労働という物が当たり前になっているからなぁ。」
「父上、そればかりは何とも言えません。
農村ではどうしても子供を労働力と見なしてしまいます。
これを覆すには何かしら強制力がないと出来ませんが、強制させる理由がないんです。」
クリフが言う。
「ん~・・・せめて重労働をさせないようにしたい物だな。」
「ええ、そこは領内でも言っているのですが・・・なかなか目が行き届きません。」
ニールも難しい顔をさせる。
と部屋の扉がノックされ、許可を出すと武雄と料理人達が入って来る。
「皆さん、夕飯ですよ。」
武雄が料理人達が各トレイを配膳しているのを見ながら皆に言う。
「お、今日はタケオが作ったのか。」
「一部ですけどね。
ジーナがプリンを食べたいと外に行っている時に言っていましたので作っていました。
あとは野菜炒めを作っていたら結果的に焼きパスタが出来ましたね。」
「意味がわからんな。」
アズパール王が首を傾げる。
「ええ。まぁ見た目は黒いですけど・・・料理人達は喜んで食べていましたよ。
あ、王家で食べないなら賄い食にすると豪語していましたね。」
「ほぉ、賄い食とな。それは随分と美味そうな単語だ。
で、今日は自分で取りに行けば良いのだな?席は・・・」
「あ、お義父さま。席は自由にしています。」
「ん?決まっていないのか?」
「はい。各々が自由に食べれば良いと思ったのです。
タケオさんが明日には出立ですので皆もいろいろ話したい事があるでしょうから。」
「ほぉ、面白い考えだな。うんうん、それは良い事だ。
と、まだ子供達が来ないな・・・んー・・・早く来ないかな。」
と部屋の扉がノックされ、許可を出すとレイラが入って来る。
「はい、お待たせしました。
夕飯に間に合った?」
「ええ、今配膳が終わったわ。」
アルマが答える。
「良かった。
じゃあ早速主賓を入れましょうか。
ジーナちゃん、エリカさん、入っといで。」
レイラが主賓達を呼ぶのだった。
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