第868話 武雄の散策。5(求める成果。)とアリス達の茶会。
「・・・ふむ。」
「・・・これは。」
武雄が清まし顔で警備局の班長が難しい顔をさせながら封書の中身とノートを見比べている。
「卿、ここの記述はさっき見たこの手紙の内容ですかね?」
警備局の班長が1つの手紙を広げる。
「そうみたいですね。
ただやはり具体的ではない指示みたいですね。
ん?金銭のやり取りも載せている?・・・これは当主との手紙の内容ですかね。
この内容の封書は無かったですよね?」
「見た中では無かったかと。」
「それにしても・・・今は無きハドリー家を今でも思っているなんて義理堅いのですね。」
「別に義理立ているわけではないですな。
処分し忘れただけです。」
商会長は顎をしゃくりながら言う。
武雄は「普通は物証は残しておかないと思いますがね」と思うが「わざと残していたのだろう」とも思う。
こういう業種との取引は大変そうだと思うのだった。
「さて、兵士さん方、私らはどうなるんでしょうかね?」
「・・・しっかりとした取り調べの実施と相応の刑罰を課せられるでしょうね。
卿はどう思われますか?」
警備局の班長が武雄に聞いてくる。
「・・・私は警備局の捜査方針を尊重します。
あとで報告書を見させて貰えれば結構です。
ですが・・・これは私の個人的な考え方ですが。」
武雄は言葉を止め、首を傾げて考える。
「卿?」
警備局の班長が聞いてくる。
「いや、止めましょう。
この場で言うのは適切ではないですね。
後で警備局に行って話をします。」
「わかりました。」
警備局の班長が頷く。
「さて、引き出しの中身は出し終わりましたか。」
「ええ、もうお好きになさってください。」
商会長が苦笑する。
「わかりました。
では我々はお暇しましょう。
執務机を持って移動しますよ?」
「「はい!」」
アーキン達が執務机を持ち上げて武雄を先頭に退出していくのだった。
「はぁ・・・何とも卿は・・・
さて、我々は続きをしよう。
お前達、折角開錠の魔法具があるんだ。
卿がやったように違和感のある場所は徹底的に調べるぞ!」
「はっ!」
警備局の捜査班も動く。
商会長は「とんでもない1日だ」と思うのだった。
・・
・
「所長~・・・住民の目線が痛いんですけど!」
ブルックが先頭を歩く武雄に声をかけて来る。
「・・・ん?別に何かしていませんけどね。」
武雄はとぼけて回答をしてくる。
「「いやいやいや。」」
執務机を持っている男性陣が不満を言ってくる。
「なんですか皆さん。
折角金貨250枚分の戦利品を邪魔物みたいに言って。」
「これどうするんですか?
どこに持って行くんですか?」
誰かが聞いて来る。
「ん~・・・第八兵舎にでも持って行こうかと思ったのですけど・・・
考えてみるとマイヤーさんもエルヴィス領に異動だからいらないと言うでしょうかね。」
「マイヤー殿にあげるつもりだったのですか?」
「ええ。私こんな机いりませんもん。」
武雄がさわやかな笑顔と共に言う。
「「「・・・」」」
皆がジト目で武雄を見る。
「まぁまぁ。
ジーナは要りますか?」
「私ですか?」
「ええ。寄宿舎に持って行きますか?」
「・・・こんなの要りませ・・・いや!貰います!」
ジーナは断ろうとして何か閃いたのか貰う事を決める。
「はい。なら穀物屋に寄ってから寄宿舎に行きましょう。
皆さん、頑張ってください。」
「「「は~い」」」
武雄達がのんびりと移動するのだった。
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ここは王都の皇子妃達のお茶会会場。
「ん~・・・」
ジェシーが腕を組んで悩み。
「はぁ・・・」
アリスがため息を付いている。
「「「・・・」」」
他の面々がそんな2人を見ている。
なんでこんな事になっているかというと。
レイラが「アリス、アリスとタケオさんの子が男の子ならうちのヒナをよろしく!」
と満面の笑みで言った事が発端になった。
各皇子一家には男子が生まれる。
なら嫁候補は多いに越した事はない。
で、ローナとセリーナの第1皇子一家、リネットの第2皇子一家、アルマの第3皇子一家が各々に「うちの息子もよろしく。」
と・・・まぁアリスの子が1番人気になっていた。
「はぁ・・・何だか前も同じ様な話をした気がしますが・・・」
アリスがお茶を伏せ目で見ながら飲む。
「したかしら?
別に何回しても良い物よね?」
セリーナがにこやかに言ってくる。
「う・・・ん~・・・」
アリスが再度長考に入る。
「セリーナお姉様もリネットお姉様もアルマお姉様も必死ですね。
無言の圧力があります。」
レイラが1人気楽に言ってくる。
「そりゃ、この中でアリス達に嫁げるのはレイラの子のヒナだけだから競争相手は居ないだろうし、どうせ男の子は出来るんだから気苦労もないだろうけどね。」
「はい♪私はアリス達を見守る立場です。」
レイラが楽しそうに言う。
「はぁ・・・結局は女の子が何人出来るかによるわね。
超が付くほどの優秀な両親を持つ子が嫁に来てくれた方が良いでしょう?」
アルマがため息交じりに言う。
「でも、ヒナがアリスの所に行くならうちは後回しですよ?」
「そうね~・・・まぁその時はその時よ。」
レイラの言葉にアルマが苦笑する。
「・・・」
リネットは言わないが「エイミー殿下が居るからうちも後回しかなぁ?」とボーっと考えている。
「どうアリス?」
ローナが聞いて来る。
「んん~・・・」
アリスは何も言えずに悩み続ける。
「でも、第1皇子一家の男の子だと王都や現状の周辺貴族が黙っていないのではないですか?」
ジェシーが聞いて来る。
「「うっ・・・」」
ローナとセリーナが「痛い所を突かれた」という顔をする。
「それは・・・第2皇子一家もそうではないですか?」
クラリッサがリネットを見る。
「そうなのでしょうか?
んー・・・まぁ地方貴族達が何と言うかでしょうね。
アルマお姉様と同じようにその時はその時です。
うちの場合はとりあえず手を挙げているだけですので、お気になさらずに。」
リネットが考えながら言う。
「わかりました。」
「じゃあ王家のような面倒なしがらみもないゴドウィン家は上位候補ね。」
ジェシーも参戦する。
皇子妃達は「この姉妹の結束は強そうだ」と思うのだった。
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