第866話 武雄の散策。3(家宅捜索。)
「ご協力感謝いたします!」
路地に来た警備局の者に武雄がした事を簡易的に説明し3人を引き渡していた。
捜査中の部下がたまたま昨日と同じ者達に絡まれたので様子を見ていた。
だが、事情を聞こうとしたら私の持っていたブランデーを割られてしまい、話し合おうとしたら向こうが刃物を取り出した為、対処したと説明していた。
「いえいえ。部下が巻き込まれたのでこちらで事情を確認していましたが、結果的に警備局の方々にお手数をおかけしてすみません。」
路地に来た警備局の兵士に武雄が頭を下げる。
「いえ!キタミザト卿!頭をお上げください!
部下の方が巻き込まれたのなら事情を確かめたいとする気持ちは理解しております。
本当はこのような事が無いようにしっかりとしないといけないのは重々承知しているのですが・・・」
「はい、そこはわかっています。
全ての悪事を取り締まれるわけではないでしょう。」
「申し訳ありません。
で、キタミザト卿はこの後は?」
「コロバル商会という所に行ってきます。
この者達の所属先との事で見てみたいと。」
「コロバル商会・・・今頃別班が家宅捜索をしているはずです。」
「お邪魔しても良いでしょうか。」
「キタミザト卿なら問題ないかと。
それに今回の事もあります。直に見たいというのもわかりますので、うちの兵士を付けます。」
「よろしくお願いします。
あ、向かう途中で武器屋に寄らせて頂いても?」
「はい、結構です。」
武雄達がその場を預けて次の目的地に向かうのだった。
・・
・
ここはコロバル商会。
十数人が建物内を調べていた。
「兵士さん、そうせかせかしても何もありませんよ。
まぁ調べられて困る事は一切何もありませんがね。」
コロバル商会の立派な髭の商会長が窓がない執務室の執務机にゆったりと座って目の前に立っている兵士に言う。
「その判断は私達がします。
ん?・・・そうか、お通しせよ。」
横に来た兵士に耳打ちされ、商会長に対峙している兵士が頷く。
と横に来た兵士が退出していく。
・・
・
「失礼します。」
しばらくすると貴族バッチを付けた武雄を先頭に一行が入って来る。
「お疲れ様です、卿。
私がここの捜査班の班長をしております!」
対峙していた警備局の兵士が武雄の名前を出さずに出迎える。
「はい、ありがとうございます。
・・・ふむ。
こちらがこの商会の経営者の方ですか?」
「ん?誰・・・どなたかな?警備の方でしょうか?」
「お取り込み中失礼します。
御宅の従業員にお世話になったので来ました。」
武雄が平然と言う。
「お世話とは?」
「昨日、今日とうちの部下と部下の家族が御宅の従業員に呼び止められましてね。」
「ほぉ・・・それは失礼し」
「さらに私が持っていたブランデーを割られました。
弁償もせずに刃物を取り出したので対処させて貰いました。」
「それで・・・どうしろと?」
「従業員の代わりに弁償をして欲しいですね。」
「ほぉ。いくらで?」
「金貨450枚ですね。」
武雄がさらりと言う。
回りのツレは顔には出さないものの「金額が跳ね上がったね」と呆れる。
「それは・・・法が」
「貴族が飲む物が安いと?
そのブランデーは上位の方と飲むはずだったんですよ。その予定は潰れましたけどね。
それが安いと?」
武雄が聞いてくる。
「そ・・・それはわかりませんが・・・
ですが、いくらなんでも金貨450枚は」
「ブランデー代に上位との会合を突如止めた事に寄る損失と上位達へのお詫びの品物代・・・そして踏み倒し料。
高額かも知れませんが、私が今後20年、30年お付き合い出来たかもしれない相手に不快な事をしたのですよ?
未来の損失を含むと高過ぎるかどうかは判断が分かれますね。
私的には最低限の請求額ですが?
それともあなたの業界では自身より上位の相手を待たせておいて、さらに集めた名目より低い内容の接待をしても笑顔が返されるのですか?」
「う・・・」
商会長が難しい顔をさせる。
「そこで失われる損失は金貨450枚で足りますか?」
「そ・・・それほど大事なブランデーなら厳重に輸送するべきだったのでは?」
「ええ。だから金貨450枚で手を打つと言ったのですが?
その金額があれば何とか私も上位の機嫌を取れそうですからね。
で?ご返答は?
あ、金貨でのお支払が嫌なら嫌でも構いませんから。」
武雄がにこやかに言う。
「・・・その際はどうするのですかな?」
商会長が訝しがりながら言う。
「ん~・・・」
武雄が室内に置かれている剣や壺を軽く目を止めて確認する。
「私が見て金貨450枚分の物品を強制徴収させて頂きます。
抵抗されても結構ですが?」
「そうですな・・・半分弱・・・金貨200枚と残りは現品でいかがでしょうか?」
商会長が腕を組んで目を閉じながら言ってくる。
「金貨200枚と現物で金貨250枚分と?」
武雄が表情を変化させずに答える。
「はい。
それが私が今お出し出来る金額ですな。
そちらで手打ちとして頂いてもよろしいかな?」
「そうですか。
私は構いませんが・・・金貨はこちらに?」
「・・・ふむ、お待ちを。」
商会長が引き出しから革袋を取り出し中の金貨を確める。
「こういった事は後腐れないように即日解決するのが望ましいですな。
こちらを。」
組長が革袋を武雄の方にズラす。
「頂きます。」
武雄が中身を見ずにしまう。
「・・・」
その様子を商会長は何も言わずに見ている。
「さて・・・現品で金貨250枚分ですが・・・その執務机を頂きます。」
武雄がにこやかに言うのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




