第863話 88日目 第3皇子一家の相談。
第3皇子一家の執務室。
「ただいま~。」
レイラが入って来る。
室内にはウィリアム、アルマとエリカが居た。
「うん、おかえり。どうだった?」
アルマがレイラを労う。
「第二情報分隊の隊員も見てくれているはずなんだけど・・・特に何もなかったなぁ。」
「そっかぁ。」
アルマが複雑な顔をさせる。
「レイラ、お疲れ。
総長と第二情報から言われた各皇子妃が何者かに見られているという情報はつかめなかったんだね。」
「うん。
念の為にパイディアーとクリナちゃんのカリスにアリス達の部屋までは少し離れて見守って貰っていたんだけど・・・
この段階で第二情報分隊から何も報告がなかったのなら誰もいなかったんだろうね。」
「そうだね。
精霊達も言ってこないし、第二情報分隊からも何も報告がないという事は今日は成果はなさそうだね。
まぁ数日は続けようか。
懐妊したばかりでごめんね。」
「しょうがないわよ。私達第3皇子一家の仕事なんだもん。」
「ですね~。
早く見つけないとね。」
アルマとレイラが頷く。
「レイラ殿下、お疲れ様でした。
タケオさんと話されましたか?」
エリカがお茶を淹れてレイラに出す。
「うん、聞いて来た。
『3都市間の流通の国有化案』なんだけど・・・タケオさんの説明をここでするわね。」
レイラが先ほどの話をするのだった。
・・
・
「と言う訳で、やる事の増大と輸送の信用性の確保が難しいので時期尚早として却下してきました。」
「なるほどね・・・
ん~・・・確かにタケオさんの言う通り現状の輸送が無駄な部分はあるわよね。
そしてそれを一元管理すれば実入りが増えそうでもあるのは確かかぁ。」
アルマが腕を組んで考える。
「だが、レイラが判断したように集荷場から各店に持って行くというのが・・・今の段階では無理か。」
ウィリアムも悩んでいる。
「さらに言えば輸送中の盗賊等の襲撃で積み荷が破損、強奪された際の保障。
また現状の幌馬車ではその対策が出来ません。
レイラ殿下の言われる通り、現状ではタケオさんからの起案は却下でしょう。」
エリカも賛同する。
「で、皆、これでタケオさんはどう動くと思う?」
ウィリアムが皆に問う。
「ん~・・・現状でレイラが示した却下内容は知れた。
なら普通ならエルヴィス伯爵領でも推進はしないわよね。」
アルマが言う。
「でもタケオさんは元々スミスさんのライ麦の件で調べた王都の専売局と経済局からエルヴィス領に向かう幌馬車の情報を元に起案したという事ですよね。
なら王都とエルヴィス領では小規模ながら実施するのではないでしょうか。」
エリカが言う。
「問題はどうやって私が言った事を加味させて上手くさせるのか。
ん~・・・」
レイラが悩む。
「これはわからないなぁ。
当分はエルヴィス家の動向を確認するしかないね。」
ウィリアムが結論を言うのだった。
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ここは武雄達の部屋。
レイラが退出してからもジェシーとスミスが残っていた。
「主、戻りました。」
ミアが武雄の肩に乗って報告してくる。
「はい、おかえり。
どうでした?」
「ん~・・・特には?
各妊婦の世話をするのにどうしようかとかの確認でしたね。
あ、パイディアーとカリスが遅れて来ていましたけど何かあったのですか?」
「いえ?レイラさんが来ていましたよ?」
「パイディアーは?」
「いえ、廊下で会いましたがいませんでしたね。」
「?そうなのですか?
まぁ良いですかね。
あ、それと精霊達で確認していましたけど。
不穏な空気が王城内であるとの事で各精霊は対応出来るようにしておくそうです。」
ミアが人差し指を立てて言ってくる。
「「不穏な空気?」」
アリスとジェシーが食いつく。
「はい。
なんでもパイディアーやカリス、アル、アウクソーは気が付いているみたいなんですけど。
えーっと・・・パナ、どうぞ。」
「はい。皇子妃の傍にいる精霊達が廊下を歩いている時に視線を感じていると言っていました。」
「そぉ。私達は?」
ジェシーが聞いて来る。
「ジェシーもアリスもスミスも問題なく。
監視の目は来ていません。」
パンニューキスが答える。
「ん~・・・マリ、誰か見ていたとして、その大本はわからないのですか?」
「そうですね・・・視線だけでは何とも。
敵意であればもっとわかりやすいのですが・・・見られているだけだと・・・
この王城内では複数の人間が行き来しています。
特定は難しいのではないでしょうか。
たぶん3王家に居る精霊達は今後皇子妃の傍に控えて視線が来たら確認するのでしょうけども。」
「でね。
アリス、アリス達はいつ王城を出立するの?」
コノハが聞いて来る。
「そうですね・・・
明後日がタケオ様達の出立ですからその次の日にでもと思っていました。
コノハ、もう数日王城に居た方が良いかな?」
「ん~・・・確か第1皇子一家と第2皇子一家も3日後に帰るような事を言っているみたいだからその後に出立の方が良いかも。」
コノハが言う。
「タケオ様はどう思いますか?」
スミスが聞いて来る。
「いえ・・・不穏かと言われると判断が微妙です。
ただ見ているだけとも取れますが・・・王家だろうと貴族であろうと聴衆の面前等々では休みなく誰かに見られている物でしょう。
居室や寝室までその視線がないという事は私達に近しい者ではないという事ですし、精霊達が感知しないのであれば精霊でもなさそう。
魔物であれば精霊やミアが気が付きそうな物ですが・・・
保留ですね。
各々がとりあえず出歩く際は気を付けるしか言いようがないでしょう。」
武雄が締めくくる。
「そうですね。
パンニューキス、私が寝ていて何かあったらよろしくね。」
「もちろん。事前に対処出来る物はしますし、ダメなら指示を仰ぎます。」
「うん、お願い。」
「マリもね。」
「一刀両断です。」
「・・・借りてる部屋を汚すのは怒られるから捕まえましょうか。」
スミスが苦笑する。
「ヴィクターもジーナもパラスもわかりましたか?」
「「「はい。」」」
「じゃあこれでお開きですね。」
「「は~い。」」
ジェシーとスミスが席を立ち退出していくのだった。
・・
・
「ご主人様。」
「どうしましたか?あ、もうこんな時間ですね。
ヴィクター達も休んで良いですよ。」
「はい。
とその前に寄宿舎の件をご報告します。」
ジーナが寝る前に今日あった寄宿舎の報告をするのだった。
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