第853話 報告。2(で。その後。)そして武雄の部下の雑談。
テイラー達が去って。
「ふむ・・・レイラの子が特別とな。」
「あの言い方では何かしらの能力が付与されている子が生まれてくるのでしょうね。」
「きゅ。」
「ニャ。」
チビッ子達も頷く。
「うむ。だが、ニオが言っておったじゃろう。
成長するまではわからぬと。
なら成長するまで公表は我らもする必要がないの。
それにこれは第3皇子一家の問題じゃ。
孫娘じゃが過度の世話を焼くものではないの。
経過だけ知っていれば良い。
と、さて・・・他に気になる事は・・・穀物も問題ないとの回答じゃの。
馬車は・・・タケオは気になる物はなかったのか・・・ん?・・・んー・・・フレデリック!ここの書き方なのじゃがの。」
「はい。タケオ様の馬車はうちと同じ仕様で頼むという所と戻ったら何か作るという所ですね。
タケオ様が王都で荷馬車を見て何か新構想が浮かんだのでしょう。
ですが、これはタケオ様が戻ってから話せば良い事で今から動く事ではありませんね。
そう言えば主、再来週には局長会議です。」
「そうだったの。皆の受け持ちは決まりそうかの。」
「やはりスライムの体液事業の打ち合わせが長引きそうです。
他は何とかなるでしょう。」
「だろうの。
新設の局もしくは部だからの。部にする場合は、どこの管轄にするかも問題じゃの。」
「はい。どの局の下に入っても問題が出るでしょう。」
「じゃが・・・それを乗り越えてなくては事業化は出来ん。
これは有益な事業となり得るじゃろうからの、しっかりと利害関係を洗い出しておかないといけないじゃろう。
もちろん管理体制もの。
新しい事業というのは期待と不安と失敗をする物じゃ。
その重圧に耐えられる者を据えないといけないの。」
「はい、その通りです。」
フレデリックが頷く。
「うむ。ではあとは・・・向こうにはないの。
夕霧の方はどうじゃ?」
「シグレのアサギリ達の街周辺の探索は2周目に突入。王都に向けた道路の建設は順調。
ハツユキのアサギリの方はもうすぐ東町に到着予定。
当初の通りの日数で終わる見込み。」
「うむ、どちらも順調そうじゃの。
シグレとハツユキがしっかりしていれば問題ないの。
無理はしてはならぬぞ。」
「ん、わかっている。
サイウン、情報の交換をします。」
夕霧が彩雲に近寄る。
「はっ!」
彩雲は少し緊張をするが、頭に手を置かれ、すんなりと情報の交換を始める。
「・・・」
「・・・」
1人+1体が静かにやり取りをしている。
「さてフレデリック、こっちからタケオに伝える用件はないの?」
「はい。これといってすぐにお伝えしないといけない事はないでしょう。
魔王国からの返答もありませんし。」
「では彩雲にはすぐにタケオの下に戻って貰おうかの。」
「彩雲殿用に食事をお持ちします。」
フレデリックが退出していくのだった。
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こっちは王都の第八兵舎。
今日は武雄に同行する各員はお休み。
明日は準備等で忙しいだろうからと前日休暇。
マイヤーとアンダーセンは明日が休暇予定。
部屋の隅でアニータとミルコは今日も座学をしており、アーキンとブルックが交互に教えている。
「はぁ・・・」
マイヤーがでっかいため息を付いていた。
「マイヤー殿、どうしたのですか?」
室内に居たアンダーセンが聞いて来る。
「ん・・・息子がな・・・」
「そう言えば前の飲み会の時にどもっていましたね。
どうなりましたか?学院ですか?魔法師専門学院ですか?」
「・・・あのバカ息子・・・どちらも成りたくないと言ってな・・・」
「まぁ、そういう事もあり得ますね。」
アンダーセンが首を傾げる。
「あぁ。俺も他人の息子や娘の話は聞いていたし、そういうのもあると知っていたが・・・
実際に言われるとかなりショックだ・・・」
マイヤーがガックリとする。
「で?どうなりましたか?」
「絶賛親子喧嘩中だ。
ついお互いに手が出てしまってな。
2日前の段階であいつは家を出たっ切り帰ってこない。」
「捜索はどうしますか?」
「・・・今日戻ってこなければ明日、警備局に相談する・・・予定だ。」
マイヤーが難しい顔をさせる。
「明日ですか・・・警備局のは聞きましたか?」
「あぁ。明日の予定なんだろ?
どうも事前に考えていたらしいが、前倒しだそうだな。」
「はい。
殿下方が懐妊されましたからね。
出立までにねぐらを掃討するそうですよ。」
「まぁそうだろうな。
『出立したら襲われました』なんて事になったら所長の時以上の惨事だからな。
普通に考えて警備局だけで足りそうなのか?」
「いえ、伝え聞いた所だと軍務局が警備局の後援に回っているそうです。
今回は警備局主体だそうです。」
「・・・ふーん。警備局がなぁ・・・
どうせ今回の指揮が上手かった者を取り立てる算段なんだろうな。」
「まぁそうでしょうね。
指揮官というのは中々育ちませんし、資質もありますからね。」
「・・・第二研究所は指揮官ばっかなんだよなぁ。」
「アーキンもブルックも後数年したら副官か班長だったらしいですよ?」
「第二情報分隊長がぼやいていましたよ。
『先に言っておくべきだった』と。」
「そうだな、所長は即決するからな。
貴族が・・・いやあの所長が陛下と総長経由で決めたと伝えた事を一隊長ではなかなか覆せないだろう。」
「ですね。
まぁ第二研究所としては優秀な指揮官が多ければ今後ともやりやすくはなりますね。」
「そうだな。少なくともあと2小隊出来る。
指揮が出来る者が多いにこしたことはないし、戦術面でも小隊の動きがわかっているから良い検討が出来るだろうな。
そう言えば所長が言っていた次期隊員の候補はどうする?」
「そうですね・・・実際の所、今回の魔法師専門学院の件であちらに第1騎士団は持って行かれた感はありますね。
そうなると次はまた王都守備隊でしょうかね。
でも2年後ですよね・・・んー・・・今は我々の知り合いが多いですが、エルヴィス領に行ってしまうと情報が取れませんね。
来年に現在の小隊の半数を入れて再来年にまた10名・・・毎年10名を入れるようにしましょうか。
そうすれば5年に渡り、情報が途切れないと思います。」
「その辺は今回のウィリプ連合国への旅の時に所長と相談だな。」
「そうですね。
あ、そうだ。ベッドの噂話を聞きましたか?」
「ベッド?普通に柔らかい物だろう?」
「いえ、所長がなにやらレイラ殿下達に『疲れが取れるベッドの選び方』を伝授したという話ですよ。」
「どこから出た話だ?所長もいろんな所に話をしているから尾ひれが付くだろう。」
「何でも皇子妃達付きのメイドらしいです。
私も又聞きですけどね。
今日の休みの各員の家族はその噂を頼りにベッドを見に行っているらしいですよ?」
「・・・一応聞いておこうか。」
マイヤーとアンダーセンが雑談に花を咲かせるのだった。
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