第849話 武雄達の昼食。とレイラ達の雑談。
王城内の小厨房、武雄達は一旦休憩して昼食を取っていた。
皆は塩釜焼きを体験中。
後は簡単な卵スープとパスタを茹でてペペロンチーノを作っていた。
ちなみに塩釜の醍醐味、それは割る事!
なのでクリナを筆頭に各々体験させていた。
何気に一番恐る恐るしていたのがリネットだった。
そして一番豪快に割ったのがクリナだった。
武雄的には割った時は性格が逆だろうと思ったが、得てしてこういう物なのかもしれないと今になると思う。
で、今の厨房の様子はというと。
「ほぉ、想像よりかは塩味が薄いんだな。」
「ちょっと無作法だけど、皮の部分は残すと塩分は平気ね。」
「意外とふわっふわです♪」
第2皇子一家は満面の笑みを見せている。
「美味しいですね。」
カリスが綺麗に食べている。
「という事はこの塩に卵白・・・卵の透明な方のみを混ぜるのですね。」
「はい。こねてから下に土台を作って魚や肉を乗せて塩で囲みます。
焼き時間は20分から30分と思っていますが・・・
今回は25分焼いてから余熱で10分です。
上手く行きましたが、実際はもう少し焼いても良かったかもしれないと思っています。」
「なるほど・・・
それと魚の方は皮を食べなければ平気ですが、肉の方は塩味がきついですね。
これだとリネット殿下には出し辛いかと思うので対処方法は何かありますか?」
「なら、濡らしタオルで表面を一旦包んで塩気を取るか周りを薄く切ってしまうのも手ですよね。」
「なるほど。
少ししてみましょう。」
武雄と料理人は食事の最中も話と実践をしていた。
「タケオ、このあとはどうするんだ?」
ニールが黒板を見ながら聞いてくる。
「えーっと、魚を捌いたので磨り潰したいのですが・・・絵に書いたようなすり鉢という器具がないので包丁で叩いて伸ばしてまた叩いてをして練り物を作ろうかと思います。
工程的には、3つ目の部分ですね。」
「そうか。そのすり鉢という物を作ると便利なんだな?」
「はい。包丁でするよりかは確実に早いですね。」
「木の棒でコネコネするんですよね?
木のカスが入りませんか?」
リネットが聞いてくる
「コネコネ・・・まぁ間違ってはいませんが、木の棒とすり鉢の間には摩られる物があります。
なので木の棒は削られませんね。」
「・・・あぁ、なるほど。」
リネットが想像しながら頷く。
「タケオ、すり鉢は花瓶や皿のような焼き物なんだな?
そして細かい溝を幾重にも付けると。」
「私が知るのはそうですね。
ニール殿下、本当に作るのですか?」
武雄が聞き返す。
「ああ!折角教えて貰うんだ、街で普及させても良いだろう。
それに我が国ではすり身は食さないからな。」
「何故ですか?」
「魚のすり身・・・つまりはペースト状だろう?
美味しいとは思えん。」
ニールが嫌そうな顔をする。
「・・・そういう物なのですか?
私の考えだと身も骨も一緒に食べられ栄養価も高く、おかずにもスープの具にも酒のツマミにもなる便利で美味しい食材なんですけどね。」
「タケオが言うと美味しそうに感じるのは何でだろうな?」
「さて?私は説明をしているだけですよ。
受け手側の事までは知りません。
と、さて説明の続きですね。
今から作る練りの作業は根幹です。
これを元に焼く、蒸す、茹でる、揚げる、この4つ調理法で出来上がった製品の呼び名が変わります。
今日は茹でると揚げるですが・・・多くの練り物を用意しないといけません。
皆さん、頑張りましょう。」
「「「はい。」」」
武雄達が作業を再開するのだった。
------------------------
こっちは第3皇子一家の執務室。
4人とも机で作業をしている。
「そう言えばさぁ。」
アルマが書類から目線を室内に移す。
「何ですか?アルマお姉様。」
「どうされましたか?アルマ殿下。」
「どうしたんだい?」
レイラとエリカとウィリアムが同時に返事をする。
「今日って第2皇子一家がタケオさんを貸し切っているんだよね?」
「そう言っていましたね。」
「例のレシピを作っているのでしたよね。」
「うん。
で、第3皇子一家付きの料理人が居ないという事に気が付いたから送り込めていないんだけど・・・
今日の料理、私達には出ないのよね?」
「・・・昼の時に聞きましたが、そもそも王城の料理人でさえ立ち入り禁止らしいですよ。
望みは薄いですね。」
「確かさつま揚げでしたか?
聞いたことがない食べ物です。」
アルマ、レイラ、エリカが話している。
ウィリアムが「レシピには海魚とあったけど川魚だと出来ないのだろうか?」と腕を組んで考えている。
「でね。
今回、タケオさんが教えるのは料理というより具材じゃないかと思うのよ。」
「ん~・・・レシピはここでしたかね?」
レイラとエリカが席を立ち小棚を見る。
「レイラ殿下、ありました。」
「はい、ありがとう。
えーっと・・・あ、アルマお姉様の言う通りかも。
塩が少ししか入ってないですね。
これはドレッシングか、もしくは他の具材と一緒に味付けが必要だと思いますね。」
「タケオさんは今回は具材を教えるという事で決定ね。」
「でもタケオさんと第2皇子一家は実食をします。
なら料理も教わるとなるのではないですか?」
アルマの分析にエリカが言う。
「そう!そこが問題よ!」
「・・・つまりアルマはその 料理のレシピが来ないかもしれないと考えているんだね。」
「まぁ!そんな感じなんだけど・・・」
ウィリアムの言葉にアルマが首を傾げながら頷く。
「アルマ、大丈夫だよ。
ニール兄上達が秘匿するとは思わないよ。」
「そこは心配してないけど・・・
私達の手元に来るレシピは完成品になると思うのよ。
今、向こうで料理人達が学んでいる新鮮さはレシピには反映されないわ。
目新しい具材を知った時の新鮮さ、感動、葛藤って最初だけでしょう?それをうちは手に入れられなかったのが勿体無かったなぁと思ってね。」
「それは僕達が料理人を決めていないからしょうがないだろう。
アルマはどうしたいんだい?」
「ん~・・・タケオさんから何か新しい料理のヒントを貰わないととは思うんだよね。
でもやみくもに『料理を教えて』と言っても漠然的過ぎてタケオさんも困るから、例えばどういう用途の料理を考えたいとか状況を想定して相談するべきだと思うのよ。」
アルマが机にゆっくりと突っ伏して行きながら言う。
「それはそうですけど・・・見返りはどうするんですか?」
エリカが聞き返す。
「・・・ウィリアムを自由にして良い権利を・・・」
アルマが机の上に腕を組んで顔を乗せながら言う。
「僕!?」
「タケオさんがウィリアムを?何か使える用途があるのかな?。
何の役にも立たないですよ。」
レイラが考えながら言う。
「いや、レイラ、僕も一応権力者側だよ。」
「タケオさんが何を求めているかに依るのでは?
それでウィリアム殿下に行きつけば差し出せば良いかと。割と安い取引ですね。」
「・・・執務室内の立場ってどんなんだろうね。」
「タケオさんが欲しい物?
・・・金?」
アルマが首を傾げる。
「それだとまたですよ。」
エリカがため息を付く。
「まぁ確かにタケオさんが欲しい物がわからないんだよね。
だから皆金貨で支払いをする事に行きついちゃうんだし。」
「レシピを渡そうにもそのレシピを入手する為の見返りだしね。」
「あ、卸売市場での割引はどうかな?」
レイラが閃く。
「ん?エルヴィス家に?」
「いいえ。タケオさんが買った物に対しての割引を約束するのです!
これならタケオさんが乗込んでくるから卸売市場が楽しい事になると思うんですよ♪」
「管理がすっごく大変そうですけどね。」
エリカが真顔で答える。
「え?そうかなぁ?
タケオさんには普通に売買をして貰って、購入金額の何割かをうちが持つという風にすれば良いんじゃない?
たぶん少し多めの金額を立て替える事になるかもしれないけど。
でもタケオさんがタダで乗込んでくるとは思えないわ。
何かしら商売か取引をすると思うのよ。
そうすれば卸売市場での取引自体が盛況になるんじゃない?
それの利益の方が私は魅力的よ。」
「なるほどね。
レイラの考えだとレシピを教えて貰って、さらにタケオさんに来て貰うのね。
タケオさんが買った物に対しての割引の方がレシピ料と参加費用より負担は軽いかもしれないわね。」
アルマが頷く。
「それで一度タケオさんに聞いてみようか。」
ウィリアムの言葉に皆が頷くのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。




